妊婦の禁煙支援に報奨が有効/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2015/02/10

 

 妊婦の禁煙支援として、通常ケアに加え金銭的な報奨の付与が有効であることが、英国・グラスゴー大学のDavid Tappin氏らが行ったCPIT試験で示された。米国では妊婦の禁煙支援に金銭的な報奨を導入した小規模な臨床試験がいくつか行われており、英国立医療技術評価機構(NICE)はその費用対効果を検証する研究の実施を呼びかけている。英国の世論調査のデータを使用した離散選択実験(discrete choice experiment)では、報奨は月額20~80ポンドであれば許容されることが示唆されていた。BMJ誌オンライン版2015年1月27日号掲載の報告。

報奨の有無別の禁煙達成を評価する無作為化第II相試験
 CPIT試験は、妊婦の禁煙支援における通常ケアと、これに報奨(商品券)を加えた場合の有効性を比較する探索的な無作為化第II相試験。対象は、自己申告による妊娠中の喫煙者で、年齢16歳以上、妊娠24週未満、呼気一酸化炭素濃度7ppm以上を満たす女性とした。

 対照群への通常ケアでは、NHSの禁煙サービスの専門家が、禁煙相談に参加して禁煙日を設定した妊婦に10週間のニコチン代替療法を行い、週1回の電話による禁煙支援を4週にわたり実施した。

 介入群には、通常ケアに加え、最高で400ポンドの商品券が付与された。禁煙日設定の面談時に50ポンド、禁煙日から4週後に呼気一酸化炭素濃度測定検査で禁煙が確認された場合に50ポンド、12週後の同検査で禁煙の継続が確認された場合はさらに100ポンド、妊娠34~38週に実施された最後の検査でも禁煙を継続していた場合には200ポンドの商品券が贈られた。

 主要評価項目は、妊娠34~38週におけるニコチン代謝産物であるコチニンの唾液中濃度<14.2ng/mLまたは尿中濃度<44.7ng/mLとした。副次評価項目には、禁煙相談への参加、4週後の禁煙、産後6ヵ月時の禁煙、出生児体重、死産、流産、早産などが含まれた。

妊娠後期禁煙率:22.5 vs. 8.6%、NNT:7.2人
 2011年12月~2013年2月にグラスゴー市に居住する妊婦612例が登録され、介入群に306例、対照群にも306例が割り付けられた。割り付け後に同意を取り消した対照群の3例を除く609例が解析の対象となった。フォローアップは2013年9月まで行われた。

 出産予定日の年齢は、介入群が28.27歳、対照群は27.66歳、登録時の妊娠週数はそれぞれ12.27週、12.62週であった。背景因子は、対照群でニコチン依存度がわずかに高かったこと(Fagerstromスコア:4.85 vs. 5.32、≧5でニコチン依存と判定)を除き、両群でバランスが取れていた。

 妊娠34~38週時の禁煙率は、介入群が22.5%(69例)であり、対照群の8.6%(26例)に比べ有意に良好であった(相対リスク:2.63、95%信頼区間[CI]:1.73~4.01、p<0.001)。絶対リスクの差は14.0%(95%CI:8.2~19.7)であり、治療必要数(NNT、1人の妊婦で妊娠後期に禁煙を達成するのに要する報奨拠出の人数)は7.2人(95%CI:5.1~12.2)であった。

 4週後の禁煙(43 vs. 21%、p<0.001)および産後6ヵ月時の禁煙(15 vs. 4%、p<0.001)は、介入群で有意に優れていた。禁煙相談への参加(p=0.37)、出生児体重(p=0.67)、死産/流産(p=0.29)、早産(p=0.09)には差はみられなかった。また、報奨による弊害はなく、賭け事的感覚での参加もほとんどなかった。

 著者は、「妊婦の禁煙促進における報奨の有効性に関する実質的なエビデンスが得られた」と結論し、「本試験は単施設での試験であるため、報奨については個々の妊婦禁煙サービスの形態や地域で検討すべきである。今後、一般化可能性や費用対効果の評価を行う多施設共同研究を進めるための方法論が確立された」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)