クローン病の術後再発予防に最適な治療戦略は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/01/13

 

 クローン病術後患者には、従来薬物療法のみの治療よりも、6ヵ月時点で内視鏡検査を行い、再発がみられれば症状に応じた免疫抑制療法を行うほうが、再手術のリスクが有意に低くなることが示された。オーストラリア・メルボルン大学のPeter De Cruz氏らが無作為化試験を行った結果、報告した。クローン病患者の多くは腸切除術を必要とし、術後も大多数の患者が疾患を再発し、再手術が必要になる。研究グループは、術後の疾患再発を予防する最適な治療戦略を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2014年12月23日号掲載の報告より。

6ヵ月時点で内視鏡+治療拡大vs.内視鏡なしの標準治療で18ヵ月後の再発を評価
 試験は、オーストラリアとニュージーランドの17医療施設で、肉眼で確認できるクローン病病変部の腸切除を受けた連続患者を対象に行われた。患者は吻合部へのアクセスが内視鏡により可能であり、メトロニダゾール(商品名:フラジールほか)による治療を3ヵ月間受けた。また、再発リスクが高い患者については、チオプリン系薬もしくは同薬に忍容性がない場合はアダリムマブ(商品名:ヒュミラ)の投与を行った。

 研究グループは患者を6ヵ月時点で内視鏡検査を受ける(積極的治療)群または内視鏡検査を受けない(標準治療)群に、施設単位で2対1の割合で無作為に割り付けた。

 6ヵ月時点で、内視鏡下に再発が認められた場合(Rutgeertsスコアi2以上)は治療を拡大し、チオプリン系薬の投与、2週に1回のアダリムマブ+チオプリン系薬の投与、または週1回のアダリムマブ投与を行った。

 主要エンドポイントは、18ヵ月時点の内視鏡下に認められた再発とした。分析には、試験薬を1つ以上受けた全患者を含んだ。

モニタリングを行い治療を変化することで再発を有意に予防
 2009年10月13日~2011年9月28日の間に、174例が登録され1つ以上の試験薬の投与を受けた。高リスク患者は、積極的治療群122例中101例、標準治療群は52例中44例であった(両群合わせて83%)。

 積極的治療群で治療拡大となったのは、47例(39%)であった。

 18ヵ月時点の再発例は、積極的治療群60例(49%)であったのに対し、標準治療群は35例(67%)で有意な差がみられた(p=0.03)。一方、粘膜正常であったのは、積極的治療群は27例(22%)、標準治療群4例(8%)で有意な差がみられた(p=0.03)。

 積極的治療群において、6ヵ月時点で治療拡大となった被験者47例のうち、18例(38%)は12ヵ月後に寛解に至った。一方、6ヵ月時点では寛解とみなされ治療を変更しなかった患者75例のうち、12ヵ月後に再発がみられた人は31例(41%)であった。

 再発リスクの増大は、喫煙(オッズ比[OR]:2.4、95%信頼区間[CI]:1.2~4.8、p=0.02)、喫煙を含む2つ以上の臨床的リスク因子を有している(同:2.8、1.01~7.7、p=0.05)であった。

 有害事象および重度有害事象の発生およびタイプは、いずれも両群間で有意差はなかった(有害事象p=0.51、重度有害事象p=0.36)。

 これらの結果を踏まえて著者は、「クローン病術後患者には、早期の積極的治療を伴う再発リスクに応じた治療が、再発予防につながる。免疫抑制薬は、ルーチン使用よりも、早期再発に応じた使用が疾患コントロールに結び付く。臨床的なリスク因子は再発の予測因子であるが、そのリスクが低い患者についてもモニタリングは必要であり、早期寛解が認められた患者でもモニタリングを継続すべきである」とまとめている。

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員