乳がん温存術後の寡分割全乳房照射施行が増加/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2014/12/22

 

 乳房温存手術後の放射線照射について、分割照射回数を少なくし1回照射線量を大きくする寡分割全乳房照射(WBI)の施行が増えていることが、米国・ペンシルベニア大学のJustin E. Bekelman氏らによる調査の結果、明らかにされた。2008~2013年の14の民間ヘルスケアプランに加入する女性患者の動向を調べた結果、診療ガイドラインに適合しタスクフォースが同照射を支持する患者群では10.6%から34.5%に施行が増え、適合基準に達していなかったが同照射を認可された患者群でも8.1%から21.2%に増えていた。またコストも従来照射法に比べて有意に低く抑えられていたという。JAMA誌2014年12月17日号掲載の報告より。

米国女性を対象に2008年から2013年の施行動向を分析
 2011年に米国放射線腫瘍学会では、無作為化試験のエビデンスに基づき、早期乳がんの乳房温存手術後の放射線療法について、寡分割WBIを行うことを支持し診療ガイドラインに明記した。施行を推奨する基準は、50歳以上、温存術後の病理学的ステージT1またはT2N0、全身化学療法未施行、中心軸平面での線量均一性が±7%以内の4つであった。しかし、基準に達していなくても推奨を支持するとして、とくに50歳未満でも行えることが示されていた。

 研究グループは、後ろ向き観察コホート研究にて、2013年の米国成人女性の7.4%をカバーする14の民間ヘルスケアプラン加入者のデータを入手し、診療支払データから、早期ステージ乳がん患者で乳腺腫瘤摘出を受け、WBIを施行した患者について分析した。

 患者は2コホートに層別化して検討した。(1)寡分割支持コホート(8,924例):50歳以上、化学療法未施行または腋窩リンパ節転移なし、(2)寡分割認可コホート(6,719例):50歳未満または化学療法施行または腋窩リンパ節転移あり。

 寡分割WBIの治療期間は3~5週間、従来WBIは5~7週間であった。

 主要評価項目は、寡分割WBIと従来WBIの総医療コスト、放射線関連コスト、患者の持ち出しコスト。患者および臨床的特性(治療年、年齢、併存疾患、化学療法歴、腋窩リンパ節転移、強化放射線治療、臨床設定、その他変数)も調べた。

寡分割支持コホートで10.6%から34.5%に、コストは有意に低下
 寡分割WBIの施行は、寡分割支持コホートにおいて、2008年の10.6%(95%信頼区間[CI]:8.8~12.5%)から2013年は34.5%(同:32.2~36.8%)に増えた。寡分割認可コホートでは、8.1%(同6.0~10.2%)から21.2%(同:18.9~23.6%)へ増えた。

 補正後平均総医療コストは、診断後1年間で、寡分割支持コホートでは、寡分割WBI群は2万8,747ドル、従来WBI群は3万1,641ドルで、有意な差が認められた(両群差:2,894ドル、95%CI:1,610~4,234ドル、p<0.001)。寡分割認可コホートでは、WBI群は6万4,273ドル、従来WBI群は7万2,860ドルで、有意な差が認められた(両群差:8,587ドル、95%CI:5,316~1万2,017ドル、p<0.001)。

 1年間の患者持ち出しコストの補正後平均額については、いずれのコホートにおいても両群間で有意な差はなかった。

 今回の結果について著者は、「寡分割WBIは、早期乳がんの女性患者において施行が増えていたが、2013年時点では施行が支持される群でも34.5%、認可される群では21.2%であった」とまとめている。