妊婦の禁煙にニコチンパッチは有効か?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/03/27

 

 ヘビースモーカーの妊婦に対するニコチンパッチを用いた禁煙補助療法は、禁煙率の達成および出生児の体重増のいずれにも寄与しなかったことが報告された。フランス・パリ第6大学(ピエール・エ・マリー・キュリー)のIvan Berlin氏らが402例を対象に行った多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、判明した。ガイドラインでは、ニコチン置換療法(NTR)の一般集団に対する優れた安全性と有効性を踏まえて、妊婦の喫煙者への禁煙介入にNTRを追加することを提案している。しかし、そのエビデンスとして確定的なものは示されていなかった。BMJ誌オンライン版2014年3月11日号掲載の報告より。

妊婦の喫煙者402例を対象に無作為化プラセボ対照試験
 研究グループは、妊婦の喫煙者に対する16時間のニコチンパッチ療法の有効性を調べるため、2007年10月~2013年1月にかけてフランス国内23の産科施設において、Study of Nicotine Patch in Pregnancy(SNIPP)試験を行った。ニコチンパッチ投与量は、各自の唾液コチニン量(潜在的範囲:10~30mg/日)でニコチン置換率100%となるよう調整して投与した。

 試験には18歳以上で妊娠12~20週の喫煙妊婦(5本以上/日)476例がスクリーニングを受け、適格基準を満たした402例を無作為に2群に割り付け、一方にはニコチンパッチを(203例)、もう一方にはプラセボパッチを投与した(199例)。各群とも、禁煙開始日から出産まで介入が続けられた。

 被験者は、月1回評価を受け、禁煙行動に関するサポートを受けた。主要アウトカムは、禁煙開始日から出産までの完全禁煙(自己申告の呼気CO濃度8ppm以下)、および出生児体重だった。副次アウトカムには、各評価時点の禁煙率、禁煙脱落(2、3回ふかす程度の喫煙)または再喫煙までの期間、分娩および出生児の特徴などを含んだ。

禁煙達成率、出生児体重に有意差みられず
 出生児に関するデータは、各群192例で得られた。全データの解析は、intention to treatにて行われた。

 結果、完全禁煙の達成率は、ニコチンパッチ群5.5%(11例)、プラセボパッチ群で5.1%(10例)で有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.08、95%信頼区間[CI]:0.45~2.60)。

 禁煙開始日以降、再喫煙日までの中央値は、両群とも15日(四分位範囲:ニコチンパッチ群13~18日、プラセボ群13~20日)だった。

 追跡期間中の各評価時点の喫煙達成率は、ニコチンパッチ群は8~12.5%、プラセボ群は8~9.5%で統計的有意差は認められなかった。

 パッチ貼付の自己申告のコンプライアンス率(1,016例の受診時評価)は、ニコチンパッチ群85%(四分位範囲:56~99%)、プラセボ群83%(同:56~95%)であった(p=0.39)。

 平均出生児体重は、ニコチンパッチ群3,065g(SE 44g)、プラセボ群3,015g(同44g)で有意差はみられなかった(p=0.41)。

 拡張期血圧がニコチンパッチ群のほうがプラセボ群よりも有意に高いことが認められた(p=0.01)。ニコチンパッチ群では、0.02mmHg/日(SE 0.009mmHg)の上昇がみられたが、プラセボ群では上昇はみられず、最後の評価時点の分娩前測定値は、ニコチンパッチ群70mmHg(四分位範囲:60~80mmHg)、プラセボパッチ群62mmHg(同:60~70mmHg)だった(p=0.02)。

 重大有害イベントの発生頻度は、両群で同程度だったが、主に皮膚に関連した非重大有害反応の頻度がニコチンパッチ群で多かった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)