薬剤溶出ステント:ステントによる差はあるか?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/11/20

 

 第三世代の薬剤溶出ステントである、ゾタロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントについて検討した非劣性試験の結果、両ステントの有効性および安全性は同程度であることが明らかにされた。オランダ・Medisch Spectrum TwenteのClemens von Birgelen氏らによる無作為化単盲検多施設共同非劣性試験「DUTCH PEERS」の結果、示されたもので、著者は「いずれも優れた臨床アウトカムをもたらすものである」と結論している。Lancet誌オンライン版2013年10月31日号掲載の報告より。

オランダ4施設で被験者を募り非劣性試験を実施
 第三世代の新しい永久ポリマーの薬剤溶出ステントは、前世代ステントよりも柔軟である点が複雑冠動脈病変への薬剤溶出を容易とする可能性があるが、耐久性について懸念されていた。

 DUTCH PEERSは、臨床で使用される頻度が高い2つの第三世代ステントの留置を受けた全患者を対象に、安全性と有効性を評価することを目的とした試験であった。検討の対象となったステントはこれまでに比較検討されたことがなく、無作為化試験での評価が行われていなかった。

 試験は、薬剤溶出ステント留置を有する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を必要とした18歳以上の患者で、オランダ国内4施設で被験者を募り行われた。

 試験に用いられたステントは、コバルトクロム製のゾタロリムス溶出ステント(米国メドトロニック社製「リゾリュートインテグリティ」)と、プラチナクロム製のエベロリムス溶出ステント(米国ボストン・サイエンティフィック社製「プロマス・エレメント」)であった。

 被験者は無作為に1対1の割合でいずれかのステント留置を受けるよう割り付けられた。その際、患者と試験結果の分析者は割り付け情報をマスキングされたが、治療の担当医には割り付け情報が知らされていた。

 主要エンドポイントは、標的血管障害の12ヵ月時点の安全性(心臓死または標的血管関連の心筋梗塞)と有効性(標的血管再血行術)の複合とした。解析は、intention-to-treatにて行い、非劣性マージンは3.6%だった。

ステントの長期変形はエベロリムス群のみで発生
 2010年11月25日~2012年5月24日の間に、適格患者1,811例・標的病変2,371個が試験に登録された。試験期間中に、ST上昇型心筋梗塞を呈した患者は370例(20%)、非ST上昇型心筋梗塞例は447例(25%)であった。

 ゾタロリムス群(906例)、エベロリムス群(905例)いずれの患者も、割り付けられた試験薬以外の治療が必要となった患者が非常に少なく(ゾタロリムス群6例[1%]vs. エベロリムス群5例[1%]、p=0.22)、ステントデリバリーが良好であることが示された。

 12ヵ月のフォローアップのデータは、ゾタロリムス群で割り付け治療の同意を翻した1例分を除く1.810例から入手できた。

 主要エンドポイントを呈したのは、ゾタロリムス群55/905例(6%)、エベロリムス群47/905例(5%)で、ゾタロリムス溶出ステントはエベロリムス溶出ステントに非劣性であることが示された(絶対リスク差:0.88%、95%信頼区間:-1.24~3.01%、95%CIの一方の上限値:2.69%、非劣性のp=0.006)。

 主要エンドポイントの各要素について、両群間で有意差はみられなかった。また、確認されたステント血栓症は、ゾタロリムス群3例(0.3%)、エベロリムス群6例(0.7%)で有意差はなかった(p=0.34)。

 ステントの長期変形は、エベロリムス群でのみ認められ、9/905例(1.0%)、これに対しゾタロリムス群は0/906例で有意差がみられた(p=0.002)。埋込件数でみるとエベロリムス群の発生は9/1,591例(0.6%)だった。ただし、関連するいかなる有害事象も認められなかった。

 以上の結果から著者は、「とりわけ急性心筋梗塞の患者数の多さを鑑みると、両ステントは同程度に有効で安全であり、優れた臨床アウトカムをもたらすものであった」と結論している。

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コメンテーター : 上田 恭敬( うえだ やすのり ) 氏

大阪警察病院 心臓センター(循環器内科)部長

J-CLEAR評議員