がん検査、不利益に関する情報は十分でない/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/16

 

 がんのスクリーニングに関する臨床試験では、当該検査法の不利益について定量的な分析はほとんど行われておらず、十分な情報に基づく意思決定に支障が生じている実態が、デンマーク・コペンハーゲン大学のBruno Heleno氏らの検討で明らかとなった。健常人を対象とするため、がんのスクリーニングでは不利益に関する詳細な検討が求められる。しかし、臨床試験が不利益について定量的な評価をルーチンに行っているかは知られていなかった。BMJ誌オンライン版2013年9月16日号掲載の報告。

7項目の不利益の報告状況を定量的に評価
 研究グループは、がん検査による不利益を定量的に評価するために、関連文献の系統的なレビューを行った。対象は、発がん、がんによる死亡、全死因死亡の抑制を目的とするがん検査に関する無作為化試験[検査群と対照群(非検査またはほかの検査法)を比較]とした。

 データの収集には4つの医療データベース(Cochrane Systematic Reviews、CENTRAL、Medline、Embase)を用いた。2名のレビュワーが別個に論文の適格性を評価し、がん検査の不利益に関するデータを抽出した。検査による不利益のアウトカムは、偽陽性、過剰診断、心理社会的な悪影響、身体的な合併症、侵襲的処置、全死因死亡、有害事象による中止の7項目とした。

不利益の記述は「結果」の12%
 7臓器(乳房、結腸、肝、肺、口腔、卵巣、前立腺)の腫瘍の10種の検査法に関する57試験について報告した198編の論文が解析の対象となった。このほか、当該試験に関連して検査群のみの報告を行った論文が44編あった。全体の参加者は341万9,036人だった。

 57試験のうち、がん検査の偽陽性について報告しているのは2件(4%)のみであった。過剰診断は4件(7%)、心理社会的な悪影響は5件(9%)、身体的な合併症は11件(19%)、侵襲的処置は27件(47%)、全死因死亡は34件(60%)、有害事象による中止は1件(2%)だった。

 検査群のみの報告を行った44論文を含めると、偽陽性の評価を行った試験は18件(32%)に増えたが、過剰診断については4件(7%)のままだった。

 論文の「結果(results)」に占める不利益に関する記述の割合(中央値)は、12%(四分位範囲:2~19%)であった。

 著者は、「がん検査に関する試験は、その不利益について定量的な分析をほとんど行っていない。がん検査の不利益として最も重要とされる過剰診断と偽陽性でさえ、それぞれ7%、4%に過ぎなかった」とまとめ、「十分な情報を得たうえでの意思決定には、非検査群を含め、不利益に関する適切なデータの報告が必要である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)