ゲノム解析で判明、C. difficile感染の伝播経路は複数存在/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/10

 

 主として医療施設内で伝播すると考えられていたクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染について、ゲノム解析(配列決定)の結果、多様な遺伝子が特定され、感染源はさまざまであることが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、3年間のオックスフォードシャーでの発生症例を解析した結果、45%は、既往症例とは遺伝的に異なることが判明したという。NEJM誌2013年9月26日号掲載の報告より。

一地域内の病院、地域の有症者から分離株を集めゲノム解析
 C. difficile感染は主に医療施設内で伝播すると考えられてきたが、地域への蔓延により、正確な感染源の特定、および症状を発現した人に集中していた従来の介入の効果が阻害されるようになってきた。

 そこで研究グループは、有症者が伝播において果たした役割を特定し、その伝播経路が時間とともにどのように変化したかを調べるため、一定地域内の全有症者から分離株を入手し、ゲノム解析を行った。

 解析は、2007年9月~2011年3月に、英国・オックスフォードシャーの医療施設または地域で感染が特定されたすべての有症者から採取された分離株を入手して行われた。評価は、C. difficileの進化速度を指標とし、分離株間の一塩基多様体(single-nucleotide variant:SNV)を比較するというもので、予測した進化速度は、採取期間124日未満でSNVは0~2個、124~364日未満で0~3個であった。また、SNVの比較後に、入院施設および地域ごとに入手した遺伝的に関連した症例間との疫学的関連の同定を行った。

遺伝的関連が認められたのは35%
 評価された1,250例のC. difficile症例のうち、1,223例(98%)がゲノム解析に成功した。

 2008年4月~2011年3月に採取された検体957例について、それ以前の2007年9月~2008年3月に採取された検体と比較した結果、少なくとも1つの初期検体と遺伝的関連があることを示すSNVが2個以下を示した分離株は333例(35%)だった。一方で428例(45%)は、SNVが10個以上であった。

 2つの期間群における症例の発症は、時間とともに同程度に減少した。このことは、曝露から感染への移行をターゲットとした介入の効果を示唆するものであった。

 SNVが2個以下だった333例(伝播整合群)のうち、126例(38%)は病院で他の患者との接触が確認されたが、一方で120例(36%)は、病院または地域における他の患者との接触は認められなかった。また試験を通じて、異なるサブタイプの感染症が継続的に認められた。このことから、C. difficile保有者が相当数存在することが示唆された。

 以上を踏まえて著者は、「3年間のオックスフォードシャーにおけるC. difficile症例のうち、45%は過去の症例と遺伝的に異なっていた。有症者に加えて、遺伝的に多様な感染源もC. difficile伝播の重要な役割を担っている」とまとめた。また、今回用いたゲノム解析について「新たな伝播ルートの解明のために、疫学的に関連のない遺伝的関連症例に集中した研究を可能とするもので、不可解とされているC. difficile感染源の解明の光明となりそうだ」と評価している。