5α還元酵素阻害薬、前立腺がん発症を予防、生存は改善せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/22

 

 フィナステリド(Proscar、国内未承認)の予防投与は、前立腺がんの発症率を長期的に抑制するが、生存率は改善しないことが、米国テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのIan M Thompson氏らが実施した「前立腺がん予防試験(PCPT)」の長期追跡の結果により示され、NEJM誌2013年8月15日号で報告された。フィナステリドは、テストステロンをジヒドロテストステロンに変換する2型5α還元酵素を阻害することで前立腺がんの発症を抑制すると考えられている。すでにPCPTでは、本薬により前立腺がんのリスクが24.8%低下するが、高悪性度病変のリスクは26.9%上昇することが確認され、2003年、同誌で報告されている。

追跡期間最長18年の長期解析
 PCPTは、フィナステリドの前立腺がん予防効果を検証するプラセボ対照無作為化試験。研究グループは、今回、2003年の最初の報告以降のデータを加えた最長18年に及ぶ追跡期間(2011年10月31日まで)のアップデート解析を行った。

 本試験では、年齢55歳以上、直腸指診所見が正常で、前立腺特異抗原(PSA)≦3.0ng/mLの男性が、フィナステリド(5mg/日)またはプラセボを7年間投与する群に無作為に割り付けられた。

 毎年1回、直腸指診およびPSA検査が行われ、7年目の検査時にPSA>4.0ng/mLまたは直腸指診で異常が認められた被験者には生検が推奨された。病変の悪性度は、Gleasonスコアが7~10の場合に高悪性度、2~6の場合に低悪性度と定義した。

発症率:10.5 vs 14.9%、15年生存率:78.0 vs 78.2%
 1994年1月~1997年5月に1万8,880例が登録され、フィナステリド群に9,423例、プラセボ群には9,457例が割り付けられた。

 前立腺がん発症率は、フィナステリド群が10.5%(989/9,423例)と、プラセボ群の14.9%(1,412/9,457例)に比べ有意に低かった(相対リスク[RR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.65~0.76、p<0.001)。

 高悪性度前立腺がんの発症率は、フィナステリド群が3.5%(333/9,423例)、プラセボ群は3.0%(286/9,457例)であった(RR:1.17、95%CI:1.00~1.37、p=0.05)。低悪性度病変の発症率はフィナステリド群で43%抑制された(RR:0.57、95%CI:0.52~0.63、p<0.001)。

 追跡期間中にフィナステリド群の2,538例、プラセボ群の2,496例が死亡した。15年生存率はフィナステリド群が78.0%、プラセボ群は78.2%であり、未調整ハザード比は1.02(95%CI:0.97~1.08、p=0.46)であった。

 悪性度別の10年生存率は、低悪性度前立腺がんがフィナステリド群83.0%、プラセボ群80.9%であり、高悪性度前立腺がんはそれぞれ73.0%、73.6%であった。

 著者は、「フィナステリドは前立腺がんのリスクを約3分の1抑制した。これは主に低悪性度病変の抑制効果によるもので、高悪性度病変はむしろフィナステリド群で多く、全生存率およびがん診断後の生存率に差はみられなかった」とまとめ、「PSA検査は前立腺がんを早期に発見し、死亡率の改善に寄与している可能性はあるが、低悪性度病変の過剰検出という副産物が問題となる可能性もある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)