HER2陽性乳がんのトラスツズマブ至適投与期間は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/07/29

 

 HER2陽性乳がんの術後補助療法において、HER2阻害薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の投与期間を標準的な1年投与から2年投与に延長しても有効性は改善されないことが、欧州腫瘍学研究所(イタリア、ミラノ市)のAron Goldhirsch氏らが行ったHERA試験で示された。乳がんの約15~20%にHER2遺伝子の過剰発現や増幅がみられる。トラスツズマブは、これらHER2陽性早期乳がんに対する有効性が確立され、術後補助療法として広く用いられている。現在の標準的な投与期間は1年とされるが、至適な投与期間は確立されていない。Lancet誌オンライン版2013年7月18日号掲載の報告。

投与期間延長の有効性を無作為化試験で評価
 HERA試験は、HER2陽性乳がんに対するトラスツズマブの至適投与期間の決定を目的とする無作為化第III相試験。対象は、標準的な術前または術後補助化学療法、あるいはその両方を受けたHER2陽性の浸潤性早期乳がんであった。

 患者は、標準的な1年投与を行う群、1年延長して2年間投与する群、または非投与の観察群のいずれかに無作為に割り付けられた。初回投与量は8mg/kgとし、その後は6mg/kgを3週ごとに静脈内投与した。

 主要評価項目は無病生存期間(DFS)とし、フォローアップ期間中央値8年における1年投与群と2年投与群のランドマーク解析および1年投与群と観察群のintention-to-treat解析を行った。

DFSに差なく、有害事象は長期投与で多い
 2001年12月7日~2005年6月20日までに5,102例が登録され、1年投与群に1,703例、2年投与群に1,701例、観察群には1,698例が割り付けられた。

 ランドマーク解析の対象となったのは3,105例(1年投与群1,552例、2年投与群1,553例)であった。このうち1,588例(51.1%)がホルモン受容体陽性で、1,471例(92.6%)が術後ホルモン療法を受けた。2,772例(89.3%)は術後補助化学療法のみを受け、術前補助化学療法は受けていなかった。

 DFSイベントは1年投与群の367例、2年投与群の367例に認められ、両群間に差はなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.85~1.14、p=0.86)。

 Grade 3~4の有害事象は1年投与群が16.3%、2年投与群は20.4%、左室駆出率低下はそれぞれ4.1%、7.2%であり、いずれも2年投与群で頻度が高かった。

 初回解析結果の報告後に観察群の52%(884例)がトラスツズマブ投与群へクロスオーバーされたにもかかわらず、観察群に対する1年投与群のHRは、DFSが0.76(95%CI:0.67~0.86、p<0.0001)、全生存(OS)も0.76(0.65~0.88、p=0.0005)であり、1年投与群が有意に良好であった。

 著者は、「1年よりも短い投与期間と1年投与との同等性はまだ確かめられていないことから、現時点でのトラスツズマブの投与期間は、従来の1年が事実上の標準である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 勝俣 範之( かつまた のりゆき ) 氏

日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 部長

J-CLEAR評議員