中国の認知症患者919万人、罹患率は1,000人・年当たり9.87/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/06/20

 

 オーストラリア・メルボルン大学のKit Yee Chan氏らGlobal Health Epidemiology Reference Group(GHERG)は、中国の認知症患者研究に関する直近20年間(1990~2010年)の発表論文をシステマティックレビュー解析した結果、同患者数は1990年時点では368万人であったが、2010年現在919万人と推定されることを発表した。WHOの2012認知症報告に収載されているのは1984~2004年のデータを踏まえたものであることから、研究グループは今回の結果を踏まえて「中国の認知症疾患負荷について過小評価されている可能性がある。認知症疾患負荷は、国際的な保健共同体が考えているより急速に増大しているようだ」と指摘。そのうえで「政府は速やかに効果的な低・中間所得層への認知症対策に取り組まなければならない」とメッセージを発している。Lancet誌2013年6月8日号掲載の報告より。

1990、2000、2010年の認知症有病率、罹患率、標準化死亡比についてレビュー解析
 GHERGには、オーストラリア、中国、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金提供をしており、本研究は、「中国では拡大する非伝染性疾患負荷の難題に徐々に取り組んでいるが、疾患負荷の疫学を最新のものとし、経時的傾向を解析して、急速に拡大する高齢者集団に適切な保健政策を知らせる」ことを目的に行ったとしている。背景には、低・中所得国で非伝染性疾患が急増しており、今後10年で、とくに中国、インド、ブラジル、南アフリカなどで拡大が懸念され、予防・コントロール対策が講じられないとこれらの国の経済発展が妨げられる可能性があることへの懸念があるとしている。

 レビューは、1990~2010年に発表された中国の認知症に関する中国語と英語論文を適格として行われた。検索ツールは、PubMedほか、中国のアカデミックなデータベースChina National Knowledge Infrastructure(CNKI)、また中国国営企業の科学データベースWanfangが用いられた。

 研究者2人が別々に、アルツハイマー型認知症(AD)とその他認知症の症例定義を行った。国際的な症例定義に見合わないものは除外され、また症例数を未推定のもの、中国以外で行われた研究は除外された。

 ポアソン回帰分析と国連人口統計学的データを用いて、1990、2000、2010年の認知症およびそのサブタイプの有病率(55~99歳の9つの年齢群別)、罹患率、標準化死亡比を推定算出した。

アルツハイマー型は569万人
 1万2,642件の論文のうち89件(有病率評価75件、罹患率評価13件、死亡率評価9件)が適格基準を満たした。全被験者数は34万247例で、うちAD症例の記録は6,357件、その他認知症患者は25万4,367例(うち3,543例が、血管性、前頭側頭型、レビー小体型)だった。

 1990年の有病率(全認知症)は65-69歳群1.8%、95-99歳群42.1%だったが、2010年にはそれぞれ2.6%、60.5%であった。

 認知症患者数は、1990年368万人(95%信頼区間[CI]:222~514万人)、2000年562万人(同:442~682万人)、2010年919万人(同:592~1,248万人)だった。

 同一期間のAD患者数はそれぞれ193万人(同:115~271万人)、371万人(同:284~458万人)、569万人(同:385~753万人)だった。

 認知症罹患率は、1,000人・年当たり9.87で、ADは同6.25、同じく血管性2.42、その他タイプ0.46だった。

 死亡率については、認知症患者1,032人と健常対照2万157人を3~7年追跡したデータの解析において、標準化死亡比中央値1.94対1(IQR:1.74~2.45)だった。

(武藤まき:医療ライター)

専門家はこう見る

コメンテーター : 粟田 主一( あわた しゅいち ) 氏

東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長

J-CLEAR評議員