経口マルチキナーゼ阻害薬レゴラフェニブ、難治性GISTの予後を改善:GRID試験/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/02/07

 

 標準治療で病勢が進行した切除不能または転移性消化管間質腫瘍(GIST)の治療において、レゴラフェニブ(承認申請中)はプラセボに比し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、米国ダナファーバーがん研究所のGeorge D Demetri氏らの検討で示された。これまでに、GISTに対する有効性が証明された薬剤としてイマチニブとスニチニブがあるが、転移性GISTのほとんどは最終的にこれらの薬剤に抵抗性となり、致死的な病勢の進行をきたす。レゴラフェニブは新規の経口マルチキナーゼ阻害薬で、腫瘍の血管新生(VEGFR1-3、TEK)、発がん(KIT、RET、RAF1、BRAF、BRAFV600E)、腫瘍の微小環境(PDGFR、FGFR)の調整に関与するプロテインキナーゼの活性を遮断するという。Lancet誌2013年1月26日号(オンライン版2012年11月22日号)掲載の報告。

標準治療抵抗性例に対する有用性をプラセボ対照無作為化試験で検討
 GRID(GIST—regorafenib in progressive disease)試験は、イマチニブとスニチニブを含む治療後に病勢が進行した切除不能または転移性のGIST患者におけるレゴラフェニブの有効性と安全性を評価する国際的な多施設共同プラセボ対照無作為化第III相試験。

 日本を含む17ヵ国57施設から、組織学的にGISTが確証され、イマチニブとスニチニブを含む治療後に病勢が進行した切除不能または転移性の病変を有し、PS(ECOG)0~1の症例が登録された。これらの患者が、レゴラフェニブ160mg/日(経口投与)と最善の対症療法(BSC)を施行する群またはプラセボとBSCを行う群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は、3週投与1週休薬の4週を1コースとして、病勢進行、許容できない毒性、患者の希望による中止となるまで継続することとした。

 主要評価項目はPFSであった。治療割り付け情報は、試験資金出資者、患者、担当医にはマスクされたが、プラセボ群の患者が病勢進行した場合は、非盲検下にレゴラフェニブにクロスオーバーすることとした。

PFSが有意に73%改善
 2011年1月4日~8月18日までに199例が登録され、レゴラフェニブ群に133例(年齢中央値:60歳、男性:64%、PS0:55%、3ライン以上の全身治療歴:44%、18ヵ月以上のイマチニブ治療歴:67%)が、プラセボ群には66例(同:61歳、64%、56%、41%、83%)が割り付けられた。

 データのカットオフは2012年1月26日。プラセボ群の56例(85%)が病勢進行によりレゴラフェニブ群にクロスオーバーされた。

 独立中央審査委員会判定によるPFS中央値は、レゴラフェニブ群が4.8ヵ月と、プラセボ群の0.9ヵ月に比べ有意に改善した[ハザード比(HR):0.27、95%信頼区間(CI):0.19~0.39、p<0.0001]。担当医判定によるPFS中央値もレゴラフェニブ群7.4ヵ月、プラセボ群1.7ヵ月(HR:0.22、95%CI:0.14~0.35、p<0.0001)と有意差を認め、プラセボからレゴラフェニブにクロスオーバーされた56例のPFS中央値は5.0ヵ月だった。

 全生存期間(OS)中央値は両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.77、95%CI:0.42~1.41、p=0.199)。

 治療関連有害事象は、レゴラフェニブ群の98%(130/132例)、プラセボ群の68%(45/66例)に認められた。最も高頻度にみられたGrade 3以上のレゴラフェニブ関連有害事象は、高血圧23%(31/132例)、手足症候群20%(26/132例)、下痢5%(7/132例)であった。

 著者は、「標準治療で病勢が進行した転移性GIST患者の治療において、レゴラフェニブの経口投与はプラセボに比べPFSを有意に改善した」とまとめ、「われわれの知る限り、本試験は高度に難治性のGIST患者の治療においてキナーゼ阻害薬のベネフィットを確認した初めての臨床試験である」と報告している。

(菅野守:医学ライター)