エビデンスに基づく鎌状ヘモグロビン保有新生児の推定数が明らかに

提供元:ケアネット

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公開日:2013/01/25

 

 2010年の世界の鎌状ヘモグロビン(HbS)保有患児数は、ヘテロ接合型(AS)が約547万6,000人、ホモ接合型(SS)は約31万2,000人と推算されることが、英国オックスフォード大学のFrederic B Piel氏らの検討で示された。保健医療資源の効率的な割り当てを行うには信頼性の高い罹患数の予測値を要する。鎌状赤血球症の原因であるHbSは、最も高頻度にみられるヘモグロビンの病的な遺伝子変異であり、臨床的に重要な構造的ヘモグロビン異常だが、罹患数予測値は明らかではなく、AS型およびSS型の新生児の正確な数も不明だったという。Lancet誌2013年1月12日号(オンライン版2012年10月25日号)掲載の報告。

エビデンスに基づく罹患数予測値を算定
 研究グループは、新生児におけるHbSの保有頻度の予測値をエビデンスに基づいて確定するために、HbSの対立遺伝子頻度に関する分布マップを作成した。

 データの収集にはHbS調査データベースを使用し、解析にはベイジアンモデルを用いた。得られた分布マップと人口統計データを組み合わせて、年間のAS型およびSS型HbS保有新生児数を全世界、地域別、国別に算出した。データが豊富な地域では当該国内の地方別の解析も行った。

他の遺伝性疾患にも応用可能な方法
 作成されたマップにより、サハラ砂漠以南のアフリカ、中東およびインドのほとんどの地域で高い対立遺伝子頻度が示され、西欧およびアメリカ大陸東海岸にも遺伝子流動が及んでいた。

 2010年の世界のHbS患児数はAS型が約547万6,000人、SS型は31万2,000人と推算された。これらの値は以前の控えめな推定値に比べて高いものだった。国別の差が大きく、その原因を探索する必要がある。

 著者は、「HbSは保健医療システムに大きな影響を及ぼすと考えられ、今回の知見は患児数の低減に向けて正確な診断と遺伝子カウンセリングを要する国々にとって有用な可能性がある」とまとめ、「同様のマップ作成やモデル化の方法論は他の遺伝性疾患にも応用可能と考えられる」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)