前立腺がんに対する術後放射線療法の長期結果:EORTC trial 22911/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2012/12/20

 

 前立腺がんに対する根治的前立腺全摘術後の放射線療法により、10年後の生化学的無増悪生存が経過観察よりも改善したが、有害事象の発現率が高く、70歳以上では死亡率が有意に上昇したことが、フランス・A Michallon大学病院のMichel Bolla氏らが実施したEORTC trial 22911の長期追跡の結果から明らかとなった。前立腺がんは前立腺被膜を超えて進展したり、精嚢浸潤がみられる場合(pT3)は局所再発リスクが10~50%と報告されている。本試験の5年の追跡結果では、術後放射線療法により生化学的および臨床的な無増悪生存がいずれも有意に改善することが示されている。Lancet誌2012年12月8日号(オンライン版2012年10月19日号)掲載の報告。

無作為化第III相試験の長期追跡結果
 EORTC trial 22911は、未治療の前立腺がんに対する術後放射線療法の有用性を、経過観察(wait-and-see)との比較において検討した無作為化対照比較第III相試験。研究グループは、今回、5年追跡時の成果が10年後も維持されているかについて解析を行った。

 対象は、75歳以下、cT0~3、全身状態(PS)0~1の前治療歴のない前立腺がん患者で、術後放射線療法を施行する群と経過観察群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 放射線療法は根治的前立腺全摘術後16週以内に開始し、腫瘍床に5週間で総線量50Gyを25回分割照射した後、ブースト照射として1週間で10Gyを5回分割照射した。経過観察は、生化学的な病勢進行[2週間以上の間隔を空けた2回の検査で前立腺特異抗原(PSA)値が0.2μg/L以上上昇]が確認されるまで継続することとした。

 主要評価項目は生化学的な無増悪生存のイベント発生率とした。臨床的無増悪生存は臨床検査および画像検査で評価した。

70歳以上ではむしろ有害な可能性も
 1992年11月~2001年12月までに欧州の37施設から1,005例が登録され、術後放射線治療群に502例(年齢中央値65歳、PS0 93.8%、短期的術前ホルモン療法10.0%、術前PSA中央値12.3μg/L)が、経過観察群には503例(同:65歳、94.0%、10.1%、12.5μg/L)が割り付けられた。追跡期間中央値は10.6年(2ヵ月~16.6年)だった。

 術後放射線治療群の生化学的無増悪生存関連のイベント発生率は39.4%(198/502例)と、経過観察群の61.8%(311/503例)に比べ有意に良好であった[ハザード比(HR):0.49、95%信頼区間(CI):0.41~0.59、p<0.0001]。

 晩発性の有害事象(全Grade)の10年累積発現率は、術後放射線治療群が70.8%(95%CI:66.6~75.0)と、経過観察群の59.7%(同:55.3~64.1)に比し有意に高かった(p=0.001)。

 著者は、「中央値10.6年の追跡結果により、標準的な術後放射線療法は経過観察に比べ生化学的無増悪生存や局所コントロールを有意に改善し、5年追跡時の成果が10年後も維持されていたが、臨床的無増悪生存の改善効果は持続していなかった」と結論し、「探索的解析では、術後放射線療法により70歳未満および切除断端陽性例で臨床的無増悪生存が改善されたが、70歳以上の患者では死亡率が経過観察よりも有意に高く(p<0.0001)、むしろ有害な可能性が示唆された」と考察している。

(菅野守:医学ライター)