小細胞肺癌では予防的全脳照射を標準治療とすべき

提供元:ケアネット

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公開日:2007/08/29

 

小細胞肺癌は肺癌全体の13%を占める予後不良の疾患で、化学療法による長期生存は期待できない(2年生存率:1977年1.5%→2000年4.6%)。また共通して脳転移がみられるのが特徴で、診断時に少なくとも18%に脳転移があり2年間で80%近くに達する。

 脳転移は予後不良を示す。維持化学療法では転移を防げず、発症後の全脳照射治療も有効ではない。しかし予防的全脳照射の有効性は多数のメタアナリシスによって示されている。そこで欧州癌研究治療機関(EORTC)の肺癌グループは、本治療を実行に移すため無作為化試験を行った。NEJM誌8月16日号の報告から。

照射群と対照群に無作為割り付け脳転移までの時間を検証


試験対象は、化学療法に反応を示した18~75歳の進展型小細胞肺癌の患者286例。予防的全脳照射治療群と追加治療を行わない対照群にランダムに割り付け、症候性脳転移までの時間をエンドポイントとした。あらかじめ定義した脳転移を示唆する症状が現れた場合はCTもしくはMRIで検査を実施した。

脳転移のリスク低下、生存期間延長を確認


試験の結果、予防的全脳照射は症候性脳転移の発生率を低下させ、無疾患生存期間および全生存期間を延長することが確認された。

照射群の症候性脳転移のリスクは低く(ハザード比0.27、P<0.001)、1年以内の脳転移の累積リスクは、対照群40.4%に対して照射群は 14.6%。無疾患生存期間は12.0週から14.7週へ、全生存期間は5.4ヵ月から6.7ヵ月へ延び、1年生存率は対照群13.3%に対して照射群 27.1%だった。

副作用もあったが、全体的な健康状態に対し影響を及ぼすほどのものではなかった。

研究グループは、「予防的全脳照射は初期化学療法に反応を示した小細胞肺癌患者全員に標準的なケアとすべきだ。さらなる研究を行い標準治療の一部としなければならない」と述べている。

(武藤まき:医療ライター)