早期乳がんの術後化学療法、どのレジメンが最も有効か?:約10万例のメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/16

 



早期乳がんの術後化学療法では、アントラサイクリン系薬剤+タキサン系薬剤ベースのレジメンおよび高用量アントラサイクリン系薬剤ベースレジメンによって乳がん死が約3分の1低下することが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。乳がんの術後化学療法の効果には差があり、治療法の選択に影響を及ぼす可能性があるという。EBCTCGは、すでに1995年までに開始された試験のメタ解析の結果を報告しているが、用量は考慮されず、タキサン系薬剤は含まれていなかった。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月6日号)掲載の報告。

1973~2003年に開始された123件、約10万例のメタ解析




研究グループは、早期乳がんに対する個々の化学療法レジメンの有用性を比較するために、無作為化試験の患者データを用いたメタ解析を実施した。1973~2003年に開始された全無作為化試験123件の2005~2010年の個々の患者データ(約10万例)を収集した。

試験の内訳は、1)タキサン系薬剤(TAX)ベースレジメンと非TAX系薬剤ベースレジメンを比較した33試験(1994~2003年に開始)、2)アントラサイクリン系薬剤(Anth)ベースレジメンとCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)を比較した20試験(1978~1997年に開始)、3)高用量と低用量のAnthベースレジメンを比較した6試験(1985~1994年に開始)、4)多剤併用化学療法と非化学療法を比較した64試験(1973~1996年に開始、種々のAnthベースレジメンに関する22試験およびCMFに関する12試験を含む)。
年齢や腫瘍の性状などの背景因子は影響しない




用量を固定したAnthベースの対照群に比べ、これにTAXを4コース追加して治療期間を延長した群では、乳がん死が有意に低下した(率比[RR]:0.86、両側検定:2p=0.0005)。同様にTAX 4コースを追加し、対照群も他の薬剤をほぼ2倍の用量を追加してバランスを調整した試験では、有意な差は認めなかった(RR:0.94、2p=0.33)。

CMFを対照とした試験では、標準4AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド、3週ごと、4コース)と標準CMF(4週ごと、6コース)の乳がん死抑制効果はほぼ同等(RR:0.98、2p=0.67)だったが、標準4ACよりも高用量である3剤併用Anthベースレジメン(CAF[シクロホスファミド+ドキソルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース]、CEF[シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース])は、標準CMFに比べ高い効果を示した(RR:0.78、2p=0.0004)。

非化学療法群との比較試験では、CAF(RR:0.64、2p<0.0001)、標準4AC(RR:0.78、2p=0.01)、標準CMF(RR:0.76、2p<0.0001)のいずれのレジメンも、有意に乳がん死抑制効果を改善したが、標準4ACや標準CMFに比べCAFの有効性が優れることが示唆された。

すべてのTAXベースまたはAnthベースレジメンに関するメタ解析では、年齢、リンパ節転移の有無、腫瘍径、腫瘍分化度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェンの使用歴による有効性の差はほとんどみられなかった。それゆえ、年齢や腫瘍の性状とは無関係に、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメン(CAF、CEF)は乳がん死を平均で約3分の1低下させることが確認された。

著者は、「非化学療法群と比べても、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメンは10年間で乳がん死亡率を約3分の1低下させた。エストロゲン受容体陽性例に適切なホルモン療法を行ってもリスクは変わらなかった」と結論している。

(菅野守:医学ライター)