乳癌のリスク評価は十分に大きな家系構造の分析と遺伝子検査で

提供元:ケアネット

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公開日:2007/07/03

 

シティ・オブ・ホープのJeffrey N. Weitzel氏らは、家族性ではないと診断された早発型乳癌患者の家系構造とBRCA遺伝子異常の有無について調査を行った結果、これまで用いられてきた遺伝性乳癌のリスク評価モデル(Couch、Myriad、BRCAPRO)では、女性親族の少ない乳癌患者における再発や卵巣癌のリスクを正確に予測することはできないとし、50歳以下で散発性と思われた乳癌女性患者に対して遺伝子検査をすすめるべきだと報告した。JAMA誌6月20日号に掲載。

早発型乳癌のリスク予測に異議


遺伝性乳癌の常染色体優性遺伝のパターンは、親族が少なかったり、父親から受け継ぐことでマスキングされている可能性がある。米カリフォルニア州の臨床癌遺伝学研究・治療施設シティ・オブ・ホープのWeitzel氏らは、それならば早発型乳癌では、現行のリスク評価モデルよりも家系構造を把握することが、リスク予測に有用だとする仮説を立てて検証した。

研究は1997年4月から2007年2月にかけて、ハイリスク患者の遺伝発癌リスク評価とBRCA遺伝子テストを行う全米のクリニックで、前向きレジストリ研究に参加した女性乳癌患者1543例。その中から発症が50歳前で、第1度および第2度近親に乳癌または卵巣癌に罹患した親族がいない306例を選んで行われた。

主要評価項目は、BRCA遺伝子の変異状態の予測が大規模家系(第3度近親以上)による評価かどうかとした。

その際、母方・父方それぞれの第1度および第2度近親者に45歳以上の存命中の女性親族が2人以下の場合は「女性親族の少ない家系」の例と定義。3つのリスク評価モデル(Couch、Myriad、BRCAPRO)を使って家系構造の影響と突然変異確率を、段階的な重回帰分析によって評価し、感度と特異度を測定し、描かれたROC曲線を評価した。

家系構造がBRCA遺伝子の変異リスクを予測


半数の153例(50%)は女性親族の少ない家系群で、そのうち、BRCA遺伝子の変異は13.7%で検出された。一方、女性親族が多い家系群のBRCA遺伝子変異は5.2%で、家系構造が変異リスクの重要な予測因子であることが明らかとなった(オッズ比2.8、95%信頼区間1.19-6.73、P=0.02)。

3つのリスク評価モデルとも顕著な特徴を示さなかったが、ROC曲線から、BRCAPROモデルからの補正が、最も正確な予測因子であることを示していた(曲線下面積0.72、95%信頼区間0.63-0.81、P=0.001)。

(朝田哲明:医療ライター)