転移性トリプルネガティブ乳がんに対する化学療法とiniparibの併用の有効性と安全性

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/02/02

 



DNA修復機能に固有の障害を有する転移性トリプルネガティブ乳がん治療で、カルボプラチン(商品名:パラプラチンなど)+ゲムシタビン(同:ジェムザールなど)化学療法へのiniparibの追加併用は、臨床的ベネフィットおよび生存期間を改善することがオープンラベル第2相試験により示された。iniparibはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害活性を持つ抗がん薬として開発された。in vitroおよび臨床試験で、カルボプラチン+ゲムシタビンの抗腫瘍・細胞毒性作用を増強することが証明されたのを受け、米国Baylor Charles A. SammonsがんセンターのJoyce O’Shaughnessy氏らにより有効性と安全性を検討する第2相試験が行われた。NEJM誌2011年1月20日号(オンライン版2011年1月5日号)掲載より。

123例の被験者を対象にオープンラベル無作為化試験




試験は、転移性トリプルネガティブ乳がんにおいて、カルボプラチン+ゲムシタビン療法にiniparibを追加した場合としなかった場合との、有効性と安全性を比較検討することを目的に行われた。

123例の被験者は、1、8日目にゲムシタビン(1,000mg/m2体表面積)+カルボプラチン(血中濃度曲線下面積2線量当量で)を投与し、1、4、8、11日目にiniparib(5.6mg/kg体重量で)を投与する群としない群(いずれも21日サイクル)に無作為に割り付けられた。

主要エンドポイントは、臨床的ベネフィット[客観的奏効(完全あるいは部分寛解)+6ヵ月以上の病状安定を認める患者の割合]の割合と安全性とした。追加エンドポイントには、客観的奏功率、無増悪生存期間、全生存期間も含まれた。

臨床的ベネフィットは34%から56%に改善、有害事象の有意差は認められず




結果、iniparib追加群では、臨床的ベネフィットの割合が34%から56%へと改善が認められた(P=0.01)。

また全奏功率も32%から52%に改善された(P=0.02)。平均無増悪生存期間も3.6ヵ月から5.9ヵ月に延長した(増悪に対するハザード比:0.59、P=0.01)、平均全生存期間は7.7ヵ月から12.3ヵ月に延長していた(死亡に対するハザード比:0.57、P=0.01)。

両群で発生したグレード3、4の有害事象で発生が高頻度であったのは、好中球減少症、血小板減少症、貧血、疲労、無力症、白血球減少症、アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇などであった。しかしグレード3、4の有害事象の発生率は両群で有意差は認められなかった。

本結果に基づき、全生存期間と無増悪生存期間の評価に十分な検出力を有する第3相試験が実施中だという。

(武藤まき:医療ライター)