コーヒーが急性腎障害のリスクを下げる可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/26

 

 コーヒー好きの人は、いくつかの健康上のメリットを得ている可能性のあることが既に知られているが、また新たなコーヒー摂取の良い影響を示唆するデータが報告された。コーヒーが、急性腎障害のリスクを下げるかもしれないという。米ジョンズ・ホプキンス大学のChirag Parikh氏らの研究によるもので、詳細は「Kidney International Reports」に5月5日掲載された。

 Parikh氏は、「習慣的にコーヒーを摂取している人は、2型糖尿病や心血管疾患、肝疾患などのリスクが低いという事実は、現在では広く知られるようになった。われわれの研究に基づけば、コーヒー摂取がリスク抑制というメリットになり得るそのような疾患のリストに、急性腎障害の追加が可能だ」と、同大学発のリリースで述べている。

 Parikh氏らは、アテローム性動脈硬化症の原因追究のための大規模臨床試験「ARIC(Atherosclerosis Risk In Communities)研究」のデータを用いて、コーヒー摂取と急性腎障害(acute kidney injury;AKI)との関連を検討した。AKIは、何らかの原因により腎機能が急速に低下した状態であり、救急治療が必要になることが多く、急性期から回復後に慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)へ移行することも少なくない。

 解析対象は、45~64歳の成人1万4,207人。コーヒー摂取量はアンケートによって把握した。中央値24年の追跡で、1,694件のAKIイベントが発生した。解析の結果、コーヒー摂取量が多い人ほど、AKI発症リスクが低いことが分かった(傾向性P=0.003)。

 より具体的には、コーヒーを全く飲まない人を基準として、1日8オンス(約237mL)のコーヒーを2~3杯以上飲む人はAKI発症リスクが有意に低かった〔2~3杯/日でハザード比(HR)0.83(95%信頼区間0.72~0.95)、3杯以上/日でHR0.83(同0.71~0.96)〕。コーヒー摂取量が1日に1杯以下の人のAKI発症リスクは、コーヒーを全く飲まない人と有意差がなかった。

 AKI発症リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、eGFR、収縮期血圧、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、食事の質(DASHスコア)、教育歴など〕を調整後も、コーヒーを全く飲まない人に比べ、コーヒー摂取の習慣のある人はその摂取量にかかわらず、AKI発症リスクが11%有意に低かった〔HR0.89(95%信頼区間0.80~0.99)、P=0.03〕。

 Parikh氏は、コーヒーがAKIリスクに影響を与えるメカニズムについて、「カフェイン自体が腎臓内の血流を改善し酸素供給が安定することと、カフェイン以外の生理活性物質の作用の関与が考えられる。ただし、正確な理解にはさらなる研究が必要だ」と述べている。また、研究者らは、「コーヒーをブラックで飲む習慣と、ミルクやクリーム、砂糖を加えて飲む習慣とで、AKIリスクに及ぼす影響が異なるのかどうかを確認する必要がある」としている。

 なお、今年5月に「Annals of Internal Medicine」に論文掲載された研究では、コーヒーをブラックではなく、少量の砂糖を加えて飲むという習慣も、全死亡(あらゆる原因による死亡)やがん死、心血管死のリスクの低さと有意に関連することが示されている。

[2022年6月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら