脳腫瘍の放射線治療が小児の記憶に及ぼす影響は?

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 髄芽腫と呼ばれる小児の脳腫瘍に対する放射線治療は記憶に影響する可能性があり、その仕組みの一端を解明したと、米ベイラー大学心理学・神経科学のMelanie Sekeres氏らが「JNeurosci」8月20日オンライン版に発表した。脳腫瘍への放射線治療を受けた7~18歳の小児や若者では、そうでない者に比べて過去1カ月以内に経験した出来事の時間や場所などを思い出せないことが多いことが分かった。一方、放射線治療を受ける前の出来事に関する記憶には影響はみられなかったという。

 髄芽腫は小児で最もよくみられる脳腫瘍で、米国では年間250~500人が髄芽腫と診断されている。治療には外科手術と抗がん剤による化学療法、放射線治療を組み合わせて行うが、このうち放射線治療は生存率を向上させるものの小児の脳の発達に影響を及ぼすことが指摘されている。

 米ベイラー大学心理学・神経科学のMelanie Sekeres氏らは今回、7~18歳の髄芽腫患者12人および同じく脳腫瘍である上衣腫の患者1人の計13人の患者と対照とした同年代の健康な9人を対象に、最近および過去に自分が経験した出来事の記憶力を比べる研究を実施した。なお、患者はいずれも外科手術後に放射線治療と化学療法を受けていた。

 研究では、対象者に過去1カ月以内に経験した出来事と覚えている限り最も古い出来事について、それぞれの詳細を思い出してもらった。その結果、脳腫瘍の放射線治療を受けた場合には、健康で治療を受けていない場合に比べて最近の出来事の時間や場所を思い出せないことが多かった。しかし、過去(放射線治療を受ける前)に経験した古い出来事に関する記憶については、放射線治療の有無で差はみられなかったという。

 Sekeres氏は「頭部への放射線治療により短期的な記憶喪失や学業不振など認知面に影響が出ることは知られていたが、自伝的記憶(autobiographical memory)が保持されるかどうかについては、あまり注目されてこなかった」と話す。しかし、放射線治療の実施前に形成されていた記憶が、治療後にも保持されていたことは予想外だったと、同氏は付け加えている。

 今回の結果が得られた背景について、Sekeres氏は、頭部への放射線治療を行うと記憶を司る海馬の神経細胞の成長が阻害されることが考えられるが、それ以外にも、治療によってもたらされた脳全体の変化が記憶障害に関与しているのではとの見方を示している。

 専門家の一人で米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのMatthew Ladra氏は、今回の結果は記憶の仕組みの解明に新たな展開をもたらすものだと賞賛する。その上で、「次の段階では、記憶力を改善するのにどのようなリハビリテーションが有用なのかを検討することが必要になるだろう」と述べている。

[2018年8月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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