タミフルと小児の自殺リスク、関連認められず

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HealthDay News

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 1~18歳の小児がインフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名タミフル)を使用しても自殺リスクは上昇しないことが、米イリノイ大学シカゴ校(UIC)のJames Antoon氏らの研究から明らかになった。この研究結果は「Annals of Family Medicine」3/4月号に発表された。

 米国ではタミフルは1999年に承認され、その後小児診療でも広く使用されている。2005~2011年のタミフル処方例の約4割を16歳以下の小児への処方例が占めていたとの報告もある。

 しかし、2000年代に入るとタミフルを使用した小児患者で異常行動や精神病性症状、自殺といった事象がみられたとする症例報告が相次いだ。その一方で、ランダム化比較試験(RCT)や観察研究の中にはタミフル使用とこれらの事象のリスクに関連はないことを示したものもあり、一貫した結果は得られていなかったが、2006年にこれらのリスクに関する警告文がタミフルの添付文書に追記されることになった。

 Antoon氏らは今回、米国の診療報酬請求データベースを用いて、2009~2013年のインフルエンザシーズン(計5シーズン)の間に自殺を図った1~18歳の小児2万1,047人を特定した。このうちタミフルを使用していたのは251人(平均年齢15歳、61%が女児)だった。

 解析の結果、タミフル使用と自殺との間に有意な関連は認められなかった。また、インフルエンザと診断されたがタミフルは使用しなかった場合についても、自殺リスクの有意な上昇は認められなかった。

 Antoon氏によると、自殺行動にはさまざまな要因が影響する可能性があるため、タミフルの使用によって自殺リスクが高まるのかどうかを明らかにするのは困難だと考えられていた。そこで今回の研究では、タミフルを使用し、自殺を図った個々の小児について、タミフルを使用していた時と使用していなかった時における行動を比較するケース・クロスオーバー・デザインの解析を実施したという。具体的には、タミフルを使用していた251人の個々の小児について、自殺を図る直前の10日間を曝露期間、同じインフルエンザシーズンだがそれよりも前の4つの時点における10日間を対照期間として比較した。「この方法によって抑うつや精神的な健康上の問題、心的外傷、虐待などのほか人種や民族といった要因による影響を取り除いて解析することができた」とAntoon氏は説明している。

 ただし、Antoon氏は「この研究結果によって、小児にタミフルを使用することに関する懸念が全て打ち消されたわけではない。これまでに報告されている異常行動や意識障害、幻覚、せん妄といった自殺以外の神経精神症状の副作用については、今回の研究では否定されていない」としている。

 また、同氏は「タミフルには嘔吐や下痢、頭痛などの副作用がみられることもあるが、一部の患者にとっては命を救う薬になることも確かだ」とした上で、「健康な小児のインフルエンザ発症例に対しては、必ずしもタミフルが必要ではない。常にベネフィットとリスクのバランスを考慮しながら処方を決定すべきだ」と強調している。

 専門家の一人で米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz 氏もこれに同意し、「どのような医療行為でも、害を与えないことを最優先するという誓いの下で意思決定が行われる」と説明。その上で「この研究結果はタミフルと小児の自殺リスクとの関連を否定する説得力のある結果だ」と強調し、「タミフルの恩恵を受けられる可能性がある重症のインフルエンザの小児患者までもが同薬を使用できなくなるような事態を回避するために、FDAはこの問題について適切に検証し、タミフルの警告表示を改定すべきだ」と主張している。

[2018年3月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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