食人習慣で蔓延したクールー病、生き残った患者で獲得されていたプリオン病耐性因子

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食人習慣で蔓延したクールー病、生き残った患者で獲得されていたプリオン病耐性因子のイメージ



南太平洋の島国パプアニューギニアの高地の、極めて限定された地域で見られる致死的流行性のプリオン病としてクールー病(現地語で「震える」の意味)がある。いわゆる狂牛病と同じく病因は伝染性タンパク質で、石器時代から続く同部族内の死者の脳を食べる風習が感染ルートであることが解明されている。事実、その出現率は食人習慣の中断以来、着実に低下した。なお、食人習慣は儀礼的な意味があり女性と子どもにのみ課せられてきたもので、疾病発症もほとんどが成人女性と男女の子どもで見られていた。本論は、英国ロンドン大学校のSimon Mead氏らの研究グループによる、過去の食人葬参加者を含む3,000例以上を対象とした、プリオン遺伝子および臨床評価と系統学的評価の報告。NEJM誌2009年11月19日号より。

コドン127Vは後天性のプリオン病耐性因子か?




この調査で、過去に食人葬に参加したことのある人は709例いた。そのうち152例はその後、クールー病で死亡していた。一方、クールーに曝露されながらも、流行期を生き延びた人々の多くは、プリオン蛋白遺伝子(PRNP)のコドン129と呼ばれる既知の耐性因子のヘテロ接合を有していた。

研究グループは今回、G127Vと呼ばれる新しいPRNP異型について報告している。この異型はPRNPコドン129のホモ接合体で、クールーが流行していた地域で生活していた人々の間で特異的に見つかり、最も曝露されていた地域で生活し本来ならクールーに感受性があるはずの女性の半数で確認された。

この対立遺伝子はクールーの出現率が最も高い地域では一般的だが、クールー患者や、世界的にもクールーに曝露されていない人口群では見つかっていない。系統的な解析によって、クールーに対し保護的な対立遺伝子を保有している血統は、地理的に適合する対照家系よりクールー出現率は有意に低かった。

これらから研究グループは、127V遺伝子多型は、クールーの流行を誘発した病原性の突然変異の結果というよりも、クールーの流行期に選択的に獲得された後天性のプリオン病耐性因子であると分析した。PRNPのコドン127と129の異型は、プリオン病の流行に対する集団における遺伝的反応を示すもので、ヒトにおいて新しく見られた力強い選択のエピソードを意味していると述べている。

(医療ライター:朝田哲明)

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