脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

認知症発症リスク、亜鉛欠乏で30%増

 亜鉛欠乏が神経の炎症やシナプス機能障害をもたらすことで認知機能低下の可能性が指摘されているが、実際に亜鉛欠乏と認知症の発症を関連付ける疫学的エビデンスは限られている。今回、台湾・Chi Mei Medical CenterのSheng-Han Huang氏らが、亜鉛欠乏が新規発症認知症の独立した修正可能なリスク因子であり、明確な用量反応関係が認められることを明らかにした。Frontiers in Nutrition誌2025年11月4日号掲載の報告。

認知症に伴う食欲不振やアパシーに対する人参養栄湯の有用性

 現在、認知症に伴う食欲不振やアパシーに対する有効な薬物療法は明らかになっていない。筑波大学の田村 昌士氏らは、アルツハイマー型認知症(AD)およびレビー小体型認知症(DLB)における食欲不振やアパシーに対する人参養栄湯の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験を実施した。Psychogeriatrics誌2026年1月号の報告。  本研究には、日本の病院およびクリニック16施設が参加した。対象患者は、人参養栄湯群24例または対照群25例にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)のサブカテゴリー「摂食行動」における食欲不振スコアの12週間後の変化とした。副次的アウトカムは、食物摂取量、NPI-12スコア、Zarit介護負担尺度日本語版、意欲の指標(Vitality Index)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、前頭葉機能検査(FAB)、体重、赤血球数、ヘモグロビン、アルブミン、CONUTスコアの変化とした。

脳腫瘍内部に細菌シグナルの存在を発見

 脳は、細菌の存在しない無菌環境と考えられている。しかし新たな研究で、脳腫瘍の内部に細菌が存在することを示唆するシグナルが確認された。研究グループは、これらの細菌は、がんの成長や挙動に影響を与えている可能性があると考えている。これまでにも大腸がんなどの消化器がんにおいて細菌が発見されているが、他の部位の腫瘍における細菌の存在については議論があった。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター外科腫瘍学およびゲノム医学分野のJennifer Wargo氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に11月14日掲載された。

ベンゾジアゼピンの使用は認知症リスクにどの程度影響するのか?

 ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は、不眠症や不安症の治療に幅広く使用されている。しかし、BZDの長期使用は、認知機能低下を加速させる可能性がある。認知症の前駆症状がBZD使用のきっかけとなり、逆因果バイアスが生じている可能性もあるため、エビデンスに一貫性が認められていない。カナダ・Universite de SherbrookeのDiego Legrand氏らは、BZDの使用量、投与期間、消失半減期が認知症発症と独立して関連しているかどうかを検証し、前駆期による交絡因子について検討を行った。Journal of the Neurological Sciences誌2025年12月15日号の報告。

日本の精神科外来における頭痛患者の特徴とそのマネジメントの現状

 頭痛は、精神科診療において最も頻繁に訴えられる身体的愁訴の1つであり、しばしば根底にある精神疾患に起因するものと考えられている。1次性頭痛、とくに片頭痛と緊張型頭痛は、精神疾患と併存することが少なくない。しかし、精神科外来診療におけるこれらのエビデンスは依然として限られていた。兵庫県・加古川中央市民病院の大谷 恭平氏らは、日本の総合病院の精神科外来患者における頭痛の特徴とそのマネジメントの現状を明らかにするため、レトロスペクティブに解析を行った。PCN Reports誌2025年10月30日号の報告。  2023年4月〜2024年3月に、600床の地域総合病院を受診したすべての精神科外来患者を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。全対象患者2,525例のうち、頭痛関連の保険診断を受けた360例(14.3%)を特定し、頭痛のラベル、治療科、処方薬に関するデータを抽出した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたモノクローナル抗体について、追加の処方を含む探索的症例集積を行うため、観察期間を2025年3月まで延長した。

日本におけるアルツハイマー病診断の時間短縮フロー〜東京大学

 アルツハイマー病の診断において、血液バイオマーカーによる検査が注目されており、日本でも保険適用が待ち望まれている。東京大学の五十嵐 中氏らは、日本でのレカネマブ治療について、異なるワークフローにおける現在の診断検査の状況を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10月7日号の報告。  ダイナミックシミュレーションを用いて、4つのシナリオ(現在の診断ワークフロー、トリアージツールとしての血液バイオマーカー[BBM]検査、確認診断のためのBBM検査およびこれらの併用)に関して、待ち時間と治療対象患者数を推定した。検査の需要を推定するため、オンライン調査により支払意思額(WTP)と無形費用を評価した。

個別化プレハビリテーションで手術アウトカムが改善

 大きな手術を控えている場合、手術そのものや術後のリハビリテーション(以下、リハビリ)に備えてエネルギーを温存する必要があると考える人は少なくないだろう。こうした考えは十分理解できるものだが、実際には、術前から開始するリハビリであるプレハビリテーションに参加した方が良い状態につながることが、米スタンフォード大学麻酔科学・周術期医学・疼痛医学教授のBrice Gaudilliere氏らが実施した臨床試験で明らかにされた。同試験では、マンツーマンでのプレハビリテーションが最も効果的であることが示されたという。詳細は、「JAMA Surgery」に11月12日掲載された。

気象関連疼痛に期待される食事性フラボノイドの有用性

 悪天候や気象変動は健康に悪影響を及ぼし、気象関連疼痛と呼ばれる症状を引き起こす可能性がある。症状の緩和には、鎮痛薬などによる薬物療法が一般的に用いられているが、副作用を引き起こす可能性がある。そのため、非薬物療法や食事療法への関心が高まっている。大塚製薬の池田 泰隆氏らは、気象関連疼痛に対する食事性フラボノイドであるケンフェロールの有効性を評価するため、オープンラベルパイロット研究を実施した。International Journal of Biometeorology誌2025年10月号の報告。

注射で脳まで届く微小チップが脳障害治療の新たな希望に

 手術で頭蓋骨を開くことなく、腕に注射するだけで埋め込むことができる脳インプラントを想像してみてほしい。血流に乗って移動し、標的とする脳の特定領域に自ら到達してそのまま埋め込まれるワイヤレス電子チップの開発に取り組んでいる米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループが、マウスを使った実験で、厚さ0.2μm、直径5〜20μmというサブセルラーサイズのチップが、人の手を介さずに脳の特定領域を認識し、そこに移動できることを確認したとする研究成果を報告した。詳細は、「Nature Biotechnology」に11月5日掲載された。

ココアやベリー類は座位行動による血管への悪影響を抑える?

 熱いココアや紅茶、リンゴ、ボウルいっぱいのベリー類は、ソファでゴロゴロしている生活やデスクワークをする人の心臓の健康を守るのに役立つかもしれない。これらの食品や飲み物にはフラバノールと呼ばれる物質が豊富に含まれており、長時間の座位行動に起因する上肢・下肢の血管の問題を予防する可能性のあることが示された。英バーミンガム大学栄養科学分野のCatarina Rendeiro氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Physiology」に10月29日掲載された。Rendeiro氏は、「座っている間にフラバノールを多く含む食べ物や飲み物を摂取することは、活動不足が血管系に及ぼす影響を軽減する良い方法である」と述べている。