内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

LVEF軽度低下の心筋梗塞、β遮断薬の有用性は?/Lancet

 左室駆出率(LVEF)が低下した(<40%)心筋梗塞患者では、β遮断薬の有効性を強く支持するエビデンスがあるが、LVEFが低下していない(≧40%)心筋梗塞患者へのβ遮断薬療法に関しては、最近の4つの無作為化試験の結果は一致せず(有益性を認めたのは1試験のみ)、LVEFが軽度低下した(40~49%)サブグループにおける治療効果についてはどの試験も検出力不足であった。スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos III(CNIC)のXavier Rossello氏らは、LVEF軽度低下の心筋梗塞入院患者におけるβ遮断薬の有効性の評価を目的に行った個別の患者データを用いたメタ解析を実施。心不全の既往歴や臨床徴候がないLVEF軽度低下を伴う急性心筋梗塞患者において、β遮断薬療法は全死因死亡、新規心筋梗塞、心不全の複合エンドポイントの発生を減少させたことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年9月13日号で発表された。

食事の頻度とうつ病との関係

 これまでの研究において、1日の食事回数および夜間の絶食期間がうつ病と関連していることが示唆されているが、一定の限界や矛盾も示されていた。中国・ハルビン医科大学のYan Chen氏らは、1日の食事回数や夜間の絶食期間とうつ病との関連を検証するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2025年12月15日号の報告。  対象は、2005〜18年の米国国民健康栄養調査(NHANES)より抽出した2万9,035人。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)総スコア10以上とした。1日の食事回数で定量化し、夜間の絶食期間は1日の最後の食事と最初の食事を調査することで評価した。重み付けロジスティック回帰モデル、制限付き3次スプライン(RCS)、媒介分析を実施した。

20歳以降の体重10kg増加が脂肪肝リスクを2倍に/京都医療センター

 20歳以降に体重が10kg以上増えた人は、ベースライン時のBMIにかかわらず5年以内に脂肪肝を発症するリスクが約2倍に上昇し、体重変動を問う質問票は脂肪肝のリスクが高い人を即時に特定するための実用的かつ効果的なスクリーニング方法となり得る可能性があることを、京都医療センターの岩佐 真代氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年8月6日号掲載の報告。  脂肪性肝疾患は、心血管疾患や代謝性疾患、慢性腎臓病のリスク増大と関連しており、予防と管理のための効果的な戦略の開発が求められている。脂肪肝に関連する質問票項目を特定することで、脂肪性肝疾患の高リスク者の早期発見につながる可能性があることから、研究グループは一般集団の健康診断データベースから収集した生活習慣情報を縦断的に分析し、脂肪肝リスクの高い個人を特定する質問票の有用性を検討した。

ベルイシグアトは広範なHFrEF患者に有効~2つの第III相試験の統合解析/Lancet

 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬ベルイシグアトは、2021年、VICTORIA試験の結果に基づき、最近の心不全悪化を経験した左室駆出率(LVEF)の低下を伴う心不全(HFrEF)患者の治療薬として欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た。フランス・Universite de LorraineのFaiez Zannad氏らVICTORIA and VICTOR Study Groupsは、本薬のHFrEF患者全般における有効性と安全性の評価を目的に、VICTORIA試験と、最近の心不全の悪化を経験していないHFrEF患者を対象としたVICTOR試験の患者レベルのデータを用いた統合解析を行い、ベルイシグアトは、現行のガイドラインに基づく治療を受けている患者を含む幅広い臨床的重症度のHFrEF患者において、心不全による入院および心血管死のリスクを低減したことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年8月30日号に掲載された。

抗アレルギー点鼻薬がコロナ感染リスクを低減

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の曝露前予防には、ワクチン接種以外の医薬品の選択肢は限られている。今回、抗アレルギー薬であるヒスタミン受容体拮抗薬アゼラスチンの点鼻スプレーは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の発生率の有意な減少と関連し、SARS-CoV-2以外の呼吸器病原体の総感染リスク低減とも関連していたことを、ドイツ・ザールランド大学のThorsten Lehr氏らが明らかにした。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年9月2日号掲載の報告。

主要5クラスの降圧薬、単剤・併用の降圧効果を定量化/Lancet

 オーストラリア・University of New South WalesのNelson Wang氏らは、主要5クラスの降圧薬の降圧効果およびそれらの組み合わせによる降圧効果の定量化を目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析を行った。降圧薬のあらゆる組み合わせについて、期待される降圧効果の強固な推定値を提示し、その降圧効果の程度を低強度・中強度・高強度に分類可能であることを示した。著者は、「得られた知見は、世界中の高血圧治療を受ける人々の、不良な血圧コントロールを改善するための処方決定に役立つ情報となるだろう」と述べている。Lancet誌2025年8月30日号掲載の報告。

慢性冠動脈疾患の抗血小板薬はアスピリン、クロピドグレル?(解説:後藤信哉氏)

急性心筋梗塞ではアスピリンは死亡率低減効果を示した。慢性期の使用でも心血管死亡・心筋梗塞・脳梗塞発症予防効果が示され標準治療となっていた。クロピドグレルは冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患ではアスピリンに勝る優越性と安全性をCAPRIE試験で示した。冠動脈疾患のみに限局しても、アスピリンよりも有効で安全かもしれないとの仮説はあった。特許切れして特定メーカーの宣伝がなくなっても、クロピドグレルの使用は拡大した。臨床研究も多数施行されていた。本研究では、慢性冠動脈疾患にてアスピリンとクロピドグレルを比較した7つの試験のメタ解析をした。MACCEは0.86(95%信頼区間:0.77~0.96、p=0.0082)とクロピドグレル群で低く、死亡と重篤な出血では差がなかった。有効性が優れ、安全性に差がなく、価格も安いとなればクロピドグレルの使用が広がることに誰も困らない。

日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-I、症状はどの程度改善するか

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症状だけでなく抑うつ症状の改善にも大きな可能性を秘めている。しかし、その効果により健康者と同等レベルまで症状が改善するかは不明である。東京家政大学の岡島 義氏らは、日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-Iにより、不眠症状および抑うつ症状が健康者レベルまで改善するかを検証するため、本研究を実施した。BioPsychoSocial Medicine誌2025年7月21日号の報告。  対象は、日本人労働者752例。不眠症およびうつ病尺度のカットオフスコアを用いて、不眠症群、うつ病群、不眠症/うつ病併存群、健康群の4群に分類した。すべての群に対してデジタルCBT-Iを2週間実施し、治療後、1ヵ月後、3ヵ月後の追跡調査でスコア変化を比較した。

健康的な食事と運動は飲酒による肝臓のダメージを抑制して死亡を減らす

 ビール、ワイン、ウイスキーなどを楽しむなら、健康的な食事と運動を続けた方が良いかもしれない。飲酒は肝臓の障害による死亡リスクを高める一方、健康的な食事と運動によりそのリスクが低下することを示唆するデータが報告された。米インディアナ大学のNaga Chalasani氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Hepatology」に8月26日掲載された。  論文の上席著者である同氏は、「あらゆる飲酒パターンにおいて、質の高い食事や活発な身体活動の習慣が、肝臓関連死亡リスクの低下と関連していることが分かった」と述べている。なお、米国では成人の半数以上(53%)が習慣的に飲酒し、毎年約17万8,000人が大量飲酒により死亡しているという。