循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:135

腎機能低下糖尿病患者にメトホルミンは使用可能か/JAMA

 腎機能が低下した2型糖尿病患者の薬物療法では、メトホルミンはSU薬に比べ、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが低いことが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristianne L. Roumie氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。従来、安全性に関する懸念から、腎臓病を有する糖尿病患者ではメトホルミンの使用が制限されていたが、2016年4月、米国食品医薬品局(FDA)は軽症~中等症の腎臓病患者におけるメトホルミンの安全性のエビデンスに基づいてガイダンスを変更し、軽度腎機能障害(eGFR:45~60mL/分/1.73m2)および中等度腎機能障害の一部(30~45mL/分/1.73m2)では安全に使用可能としている。一方、腎機能が低下した糖尿病患者の臨床転帰に及ぼすメトホルミンの効果は明らかにされていないという。

高リスク2型糖尿病の心血管リスク、リナグリプチンvs.グリメピリド/JAMA

 心血管リスクが高い比較的早期の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬リナグリプチンはSU薬グリメピリドに対し、心血管死、非致死的な心筋梗塞・脳卒中の複合のリスクが非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCAROLINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年9月24日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクを増加させる。リナグリプチンの心血管安全性を評価したプラセボ対照比較試験では非劣性が示されているが、実対照薬との比較試験は実施されていなかった。

新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会

 新薬の登場やエビデンスの蓄積を受けて、約10年ぶりに「夜間頻尿診療ガイドライン」が改訂される。40代で約4割、80歳以上では9割以上でみられる夜間頻尿について、専門医だけでなく一般医に対する診療アルゴリズムを新たに作成し、クリニカルクエスチョン(CQ)を充実させる見通し。第26回日本排尿機能学会(9月12~14日、東京)で、「新・夜間頻尿診療ガイドライン:改定に向けての注目点」と題したセミナーが開催され、作成委員長を務める国立長寿医療研究センター泌尿器科の吉田 正貴氏らが解説した。

EF低下心不全へのダパグリフロジン、心不全増悪・心血管死リスク大幅減/NEJM

 駆出率(EF)が低下した心不全患者に対し、標準治療に加えたSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの投与は、糖尿病の有無にかかわらず、心不全増悪および心血管死のリスクを有意に低下することが示された。英国・グラスゴー大学のJohn J. V. McMurray氏らが、 4,744例の患者を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化試験で明らかにした。2型糖尿病(DM)患者では、SGLT2阻害薬が心不全の初発入院リスクを低下することが示されている。その機序はグルコースとは独立していると考えられており、研究グループは、2型DMの有無を問わず、EF低下心不全患者におけるSGLT2阻害薬の作用に関するデータを集めるため本試験を行った。NEJM誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。

CKD治療抵抗性高血圧症、patiromer併用でスピロノラクトン服薬率上昇/Lancet

 治療抵抗性高血圧症の慢性腎臓病(CKD)患者に対し、カリウム吸着薬patiromerを用いることで、より多くの患者が高カリウム血症を呈することなくスピロノラクトンによる治療が継続可能なことが示された。米国・インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らが、10ヵ国62外来医療センターを通じて行った第II相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。スピロノラクトンは、治療抵抗性高血圧症で血圧コントロール不良の患者において、降圧効果があることが示されている。しかし、CKDが併存する患者では高カリウム血症を呈することからスピロノラクトンの使用は制限される場合があることが課題となっていた。Lancet誌オンライン版2019年9月15日号掲載の報告。

福井大、臨床実習を「見える化」するシステムを開発・販売

 2019年9月、福井大学はICTを使った臨床実習の管理システムを開発、発売すると発表した。医学部の5、6年生が病院に出向いて行う臨床実習は、いまだに紙で管理されているケースが多い。結果として、電子カルテとの連携が限られる、管理や評価が煩雑、双方向コミュニケーションに限界がある、など多くの問題点が生じていた。  今回発表した「F.CESS(エフ・セス)」は福井大学が学内ベンチャーと共同で開発。実習スケジュール管理、実習用カルテの記載、評価、学生と教員のコミュニケーション、他科連携など、従来さまざまな手段で行われてきた臨床実習周りの機能を一元的に管理できるようにした。

周期性再分極動態、高値であるほどICDが有益/Lacnet

 周期性再分極動態(periodic repolarisation dynamics)は、虚血性/非虚血性心筋症患者において、予防的な植え込み型除細動器(ICD)の植え込み術に関連する死亡の予測に有用であることが、ドイツ・ミュンヘン大学病院のAxel Bauer氏らが行ったEU-CERT-ICD試験のサブスタディーで示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。1次予防としてICDの植え込み術を受けた心筋症患者では、患者管理や技術の進歩に伴い悪性不整脈の発現は減少しているが、非虚血性心筋症では全死因死亡は改善されないとの報告があり、ICDの価値は一部のサブグループに限定される可能性が示唆されていた。また、約4人に1人が10年以内にデバイス感染症や不適切なショック(inappropriate shock)などの深刻な合併症を経験するという。周期性再分極動態は、心臓の再分極不安定性の交感神経活動に関連する低周波変動を定量化する新たな電気生理学的マーカーである。

コメディカルによる地域包括ケア、心血管イベント抑制に効果/Lancet

 地域の状況を熟知したプライマリケア医と患者家族、地域住民の支援の下で、医師以外の医療従事者(NPHW)が行う包括的なケアは、血圧コントロールと心血管疾患リスクを実質的に改善することが、カナダ・マックマスター大学のJon-David Schwalm氏らが行ったHOPE 4試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。高血圧は、世界的に心血管疾患の主要な原因である。高血圧のコントロールは、その有益性が証明されているにもかかわらず、十分に実施されていないという。Schwalm氏らは、コントロール不良および新規に診断された高血圧患者では、降圧治療とともに、地域の状況を詳細に分析して得られた他のリスク因子を改善する包括的なアプローチが、通常ケアに比べ有効性が高いとの仮説を立て、検証を行った。

PPCI前の遠隔虚血プレコンディショニング、STEMI予後に有意義か/Lancet

 プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、PPCI前に遠隔虚血コンディショニング(remote ischaemic conditioning:RIC)を行っても心臓死/心不全による入院は減少しないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDerek J. Hausenloy氏らが行ったCONDI-2/ERIC-PPCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月6日号に掲載された。RICは、上腕に装着したカフの膨張と解除を繰り返すことで、一時的に虚血と再灌流を引き起こす。これにより、PPCIを受けるSTEMI患者の心筋梗塞の大きさが20~30%縮小し、臨床アウトカムが改善すると報告されていたが、十分な検出力を持つ大規模な前向き研究は行われていなかった。

蛇足の教え(解説:今中和人氏)-1116

SYNTAX試験は冠動脈3枝病変ないし主幹部病変症例に対する、バイパス手術と薬剤溶出ステントを比較した、まさにランドマークとなる多施設ランダム化試験で、予定観察期間の5年成績が公表されたのは2014年。死亡のほかに心筋梗塞、脳卒中、再血行再建などが解析され、ある程度の複雑病変(3区分でintermediateとなるSYNTAXスコア23以上)の症例にはバイパス手術が適切であると明瞭に示す、キレイな結果であった。循環器領域だけでも「この議論、いつまでやるんですか?」という案件はさまざまあれど、冠動脈疾患に対する治療法選択はその横綱格。SYNTAX試験の最終結果を見て、私などは「やっとこれで結論が出た」と半ば安堵する思いだったのだが、寡聞に過ぎた。あれから5年経ち、生命予後をさらに5年追跡したSYNTAX extended survival、すなわちSYNTAXES試験がこの論文である。