救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

救急科の安全性、医療従事者と患者への調査

 医療従事者と患者の双方が救急科(ED)の安全性を疑問視している実態が、欧州救急医学会(EUSEM)が実施した国際調査により明らかになった。医療従事者に対する調査の結果はEnte Ospedaliero Cantonale(スイス)のRoberta Petrino氏らにより「European Journal of Emergency Medicine」に5月24日発表され、また、EUSEM会長のJames Connolly氏が執筆した付随論評が同誌に5月26日掲載された。  医療従事者に対する調査では、世界101カ国のED医療従事者1,256人(医師1,045人、看護師199人、救急医療隊員や薬剤師など12人)から寄せられた回答が分析された。その結果、「患者数は、安全な医療を提供できるEDのキャパシティーを超えている」に対し、「時々当てはまる」と「常に/たいてい当てはまる」と答えた者の割合がそれぞれ32.02%と59.92%と合わせて90%を超えており、EDの抱える問題として過密さが浮き彫りになった。EDの過密さは、損害や死亡の実質的なリスク増加を伴うことが、過去の研究で報告されている。また、調査からは、繁忙時のEDスタッフの数が十分だと感じている調査参加者の割合は、医師で22.4%、看護師で20.7%にとどまり、人手不足も大きな問題であることが示された。

院外心停止後のPaCO2目標値、軽度高値vs.正常/NEJM

 院外心停止後に蘇生された昏睡患者において、目標PaCO2値を軽度高値とする治療(targeted mild hypercapnia)が正常値とする治療(targeted normocapnia)と比較して、6ヵ月後の良好な神経学的アウトカムに結びつかなかったことが示された。オーストラリア・Austin HospitalのGlenn Eastwood氏らが、17ヵ国63施設のICUが参加した医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験「Targeted Therapeutic Mild Hypercapnia after Resuscitated Cardiac Arrest trial:TAME試験」の結果を報告した。ガイドラインでは、院外心停止後に蘇生した昏睡状態の成人患者に対して、正常PaCO2値を治療目標とすることが推奨されているが、軽度高値とするほうが脳血流を増加させ神経学的アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。

ヒドロコルチゾン単体では敗血症性ショックによる死亡リスクは低下せず

 敗血症性ショックの患者に副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)のヒドロコルチゾンを単独投与しても死亡リスクを低下させることはできないが、他のステロイドと併用することで生存率が向上し、昇圧薬を使用せずに済む可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の麻酔科教授であるRomain Pirracchio氏らが実施したこの研究結果は、「NEJM Evidence」に5月22日掲載された。  敗血症とは、感染に対して全身が極端な反応を示し、心臓や肺などの体の重要な臓器に障害が生じる病態をいう。毎年、世界中で約5500万人が敗血症を発症し、1100万人が死亡している。敗血症では早期に気付くことが重要であり、治療としては、感染源のコントロール、抗菌薬の投与、輸液、昇圧薬(血圧を上昇させる働きを持つ薬剤)の投与などが行われる。敗血症のうち、輸液負荷を行っても血圧が危険なレベルに低下した状態が続き、血中乳酸値が高いままの病態を敗血症性ショックと呼ぶ。

慢性硬膜下血腫、デキサメタゾンvs.手術/NEJM

 慢性硬膜下血腫患者において、デキサメタゾンによる治療は穿頭ドレナージと比較し機能的アウトカムに関して非劣性は示されず、合併症の発現頻度や追加手術を要する患者の割合が高かった。オランダ・Amphia HospitalのIshita P. Miah氏らが、医師主導、評価者盲検の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療において、外科的除去を伴わないグルココルチコイドの役割は不明であった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

tirofiban、知っている?(解説:後藤信哉氏)

動脈血栓の主成分はフィブリンと血小板である。閉塞血栓形成における血小板の機能は血小板凝集と同等と考えられた時期があった。tirofibanは血小板のGP IIb/IIIaに結合して血小板凝集を完全に阻害する。tirofiban、abciximab、eptifibatideの3種のGP IIb/IIIa阻害薬が心筋梗塞などを対象として有効性を示した。血小板凝集を阻害するので出血合併症も多い。日本ではabciximabの治験を行ったが、結局GP IIb/IIIa阻害薬は1つも承認されなかった。血栓形成プロセスはダイナミックである。

外傷性急性硬膜下血腫、開頭術vs.減圧開頭術/NEJM

 外傷性急性硬膜下血腫の手術において、骨弁を還納する開頭術と還納しない減圧開頭術では、1年時点の障害およびQOLのアウトカムは同等だった。一方で、2週間以内の追加手術の発生率は開頭術群で高く、創部合併症の発生率は減圧開頭術群が高かった。英国・Addenbrooke's HospitalのPeter J. Hutchinson氏らが、11ヵ国40施設で行った無作為化比較試験の結果を報告した。外傷性急性硬膜下血腫の手術の選択肢である減圧開頭術は、頭蓋内圧亢進症を予防する可能性が示唆されているが、より良好なアウトカムと関連するかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

急性心筋梗塞患者の予後は、所得に関連するのか? (解説:三浦伸一郎氏)

急性心筋梗塞(AMI)は、急性期の早期治療として冠動脈に対する血行再建術の有効性のエビデンスが確立し、わが国においても広く普及してきた。2020年のわが国における死因の第1位は悪性新生物、第2位が心疾患であり、その41%が心不全、33%が虚血性心疾患(その15%がAMI)となっている。AMIによる死亡率は年々低下してきているが、その後、心不全へ移行する患者もいるため、今なお、重要な心疾患である。最近、「脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画」が発表され、心血管疾患に対する多くの計画が進行中である。

コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。  病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。

急性期脳梗塞へのtirofiban、アスピリンより優れた改善/NEJM

 大・中脳血管の閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者の治療において、糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanは低用量アスピリンと比較して、非常に優れたアウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア0または1)が達成される可能性が高く、安全性には大きな差はないことが、中国・陸軍軍医大学のWenjie Zi氏らが実施した「RESCUE BT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年6月1日号に掲載された。  RESCUE BT2試験は、中国の117施設で実施された二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2020年10月~2022年6月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(中国国家自然科学基金の助成を受けた)。

血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。  INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。