放射線科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:6

放射線ファーマシスト、健康・食品への不安に寄り添う/日本薬剤師会学術大会

 福島県薬剤師会副会長の松下 敦氏は第55回日本薬剤師会学術大会の分科会「災害時の薬剤師の役割」で、同県薬剤師会が2013年から開始した「放射線ファーマシスト」の活動を紹介。過去6年間の相談実績では、放射線ファーマシストの説明内容への市民の納得度は90%超に上ると報告した。  2011年の東日本大震災では福島県双葉郡双葉町と同郡大熊町にまたがる東京電力・福島第一原子力発電所で電源喪失に伴う過酷事故が発生。同原発から半径20km圏内は災害対策基本法に基づく「警戒区域」に定められたほか、その圏外で放射線量が高い地域を原子力災害対策特別措置法に基づく「計画的避難区域」や「緊急時避難準備区域」とし、これら地域で約14~15万人が避難を強いられた。避難区域はその後再編され、避難指示が解除された地域もあるものの、現時点でも原則住民が帰宅できない「帰還困難区域」は、名古屋市の面積とほぼ同じで同県面積の約2.4%を占めている。なお、福島第一原発に関しては現在も廃炉作業は継続中である。

転移乳がんへの局所療法はescalationなのか?/日本癌治療学会

 転移乳がんに対する積極的な局所療法の追加は、がんが治癒しなくても薬剤使用量を減らすことができればescalationではなくde-escalationかもしれない。第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)において、岡山大学の枝園 忠彦氏は「転移乳がんに対する局所療法はescalationかde-escalationか?」と題した講演で、3つのクリニカルクエスチョンについて前向き試験の結果を検証し、転移乳がんにおける局所療法の意義について考察した。  転移乳がんにおいて治癒は難しいが、ある特定の患者ではきわめて長期生存する可能性があり、近年そのような症例が増えてきているという。枝園氏はその背景として、PETなどの画像検査の進歩により術後早期に微小転移の描出が可能となったこと、薬物療法が目まぐるしく進歩していること、麻酔や手術が低侵襲で安全になってきていること、SBRT(体幹部定位放射線治療)が保険適用され根治照射が可能になったことを挙げた。この状況の下、3つのクリニカルクエスチョンについて考察した。

侵襲的冠動脈造影とCT、MACEリスクに性差はあるか/BMJ

 侵襲的冠動脈造影(ICA)のために紹介された、安定胸痛を有する閉塞性冠動脈疾患(CAD)の検査前確率が中程度の患者において、初期画像診断に用いるCTはICAと比較して、有害心血管イベントのリスクは同等であることがすでに報告されているが、その有効性に男性と女性で差はないことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のKlaus F. Kofoed氏ら「DISCHARGE試験」グループが報告した。CTは、CADの検査前確率が低~中程度の患者において、閉塞性CADを除外することが可能であるが、男性より女性で精度が低くなる可能性があり、CADの診断および臨床管理において、CTとICAの臨床転帰に関する有効性の男女差はこれまで不明であった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。

センチネルリンパ節転移乳がん、ALNDとRNIの必要性についての検討/日本癌治療学会

 センチネルリンパ節転移陽性乳がんにおいて、腋窩リンパ節郭清(ALND)や領域リンパ節照射(RNI)がどのような症例で必要となるのかについては議論がある。Sentinel Node Navigation Surgery研究会では、センチネルリンパ節転移陽性例において、センチネルリンパ節生検(SNB)単独群とSNB後の腋窩リンパ節郭清(ALND)群を比較する多施設共同前向きコホート研究を実施。井本 滋氏(杏林大学)が、第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)で結果を報告した。  本研究では、cT1-3N0-1M0の女性乳がん患者を対象とし、組織学的または分子生物学的診断で1~3個のセンチネルリンパ節微小転移またはマクロ転移陽性が確認された場合に、医師の裁量でSNB単独またはALNDの追加を決定した。SNB前後の化学療法は可とし、両側および遊離腫瘍細胞(ITC)の症例は除外された。

がん治療による放射線関連心疾患、弁膜症を来しやすい患者の特徴/日本腫瘍循環器学会

 9月17、18日に開催された第5回日本腫瘍循環器学会にて、塩山 渉氏(滋賀医科大学循環器内科)が「放射線治療による冠動脈疾患、弁膜症」と題し、放射線治療後に生じる特異的な弁膜症とその治療での推奨事項について講演した(本シンポジウムは日本放射線腫瘍学会との共催企画)。  がんの放射線治療による放射線関連心疾患(RIHD:radiation-induced heart disease)の頻度は医学の進歩により減少傾向にあるが、それでもなお、食道がんや肺がん、縦隔腫瘍でのRIHD発症には注意を要する。2013年にNEJM誌に掲載された論文1)によると、照射から20年以上経過してもなお、主要心血管イベントリスクが8.2%(95%信頼区間:0.4~26.6)も残っていたという衝撃的な報告がなされた。それ以来、RIHDは注目されるようになり、その1つに弁膜症が存在する。

血管腫・血管奇形ガイドラインが5年ぶりに改訂

 第18回日本血管腫血管奇形学会学術集会(2022年9月16~17日)において、「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン改訂について」(科研製薬共催)と題したセミナーが開催され、秋田班ガイドライン改訂統括委員長を務める新潟大学大学院小児外科学分野の木下 義晶氏が解説した。  今回のガイドラインは、第1版である「血管腫・血管奇形診療ガイドライン2013」、第2版である「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017」に次いだ第3版となり、名称は「血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022」となる見込みという。本ガイドラインの作成は2020年から開始され、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017に則して作成されている。

皮膚に貼る「超音波パッチ」の開発が前進

 将来、超音波検査は皮膚に貼り付けたシール型の「超音波パッチ」で行えるようになるかもしれない。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、高解像度のライブ像を得ることのできる切手サイズの超音波デバイスの開発が前進したことを、「Science」に7月28日発表した。この小さなパッチが、従来の大型超音波検査装置の代替になる可能性を秘めているという。MITの機械工学部および土木・環境工学部教授のXuanhe Zhao氏は、「われわれはウェアラブルデバイスを用いた画像検査の新時代を切り開いた。体にいくつかパッチを貼るだけで、48時間にわたって持続的に内臓の超音波画像を取得できた」と説明する。  従来の専門的な超音波検査装置は、ジェルを塗布した上でプローブによって超音波を体内へ送る。体内に送られた超音波は、大きな血管や心臓、肺、胃などの臓器で跳ね返り、それを基に高解像度の画像を得ることができるという仕組みだ。ただ、こうした装置は大型であり、病院や診療所でしか使えない。一部の病院では既に長時間の画像を取得できるロボットアームに取り付けられたプローブも使用されているが、時間の経過とともに超音波検査用ジェルが乾いてしまうという欠点がある。

非低リスクの非浸潤性乳管がん、ブースト照射が再発抑制/Lancet

 乳房温存手術を受けた非低リスクの非浸潤性乳管がん(DCIS)患者において、全乳房照射(WBI)後の腫瘍床へのブースト照射(追加照射)は、Grade2以上の有害事象が増加したものの局所再発が有意に低下することが示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBoon H. Chua氏らが、多施設共同無作為化非盲検第III相試験「BIG 3-07/TROG 07.01試験」の結果を報告した。DCISに対する乳房温存手術後のWBIは局所再発を減少させるとの強く一貫したエビデンスが、無作為化試験により示されている。一方で、ブースト照射および分割照射の有効性について前向きに検討する必要性が示唆されていた。Lancet誌2022年8月6日号掲載の報告。

「乳癌診療ガイドライン」4年ぶり全面改訂、ポイントは?/日本乳癌学会

 4年ぶりに乳癌診療ガイドラインが全面改訂され、第30回日本乳癌学会学術総会で「乳癌診療ガイドライン2022年版 改定のポイント」と題したプログラムが開催された。本稿では、治療編(薬物療法、外科療法、放射線療法)の主な改訂点について紹介する。治療編全体における改訂点として、今版では冒頭に「総説」を追加。病気/サブタイプ別の治療方針のシェーマや各CQ/BQ/FRQの治療における位置付けを解説し、治療全体の流れを理解できる構成となっている。

がんの緩和ケア、放射線・神経ブロック治療普及のセミナー開催

 働くがん患者を企業と一緒に支援する厚生労働省の取り組み「がん対策推進 企業アクション」は、6月28日、「がん治療における緩和ケア」をテーマとしたメディア向けセミナーを開催した。これは、6月9日に厚生労働省が厚生労働省が医療者への啓蒙と一般患者への説明用として、がんにおける緩和ケアを説明する資料を作成し、都道府県衛生主管部(局)、がん診療連携拠点病院等の病院長、日本医師会を通じて広報をはじめたことを受けたもの。資料は、心理的・精神的ケアを含めて診断時から緩和ケアが受けられること、痛みへの対応としてオピオイド等の使用だけでなく放射線治療や神経ブロック等の活用を促すこと、が主な内容となっている。