耳鼻咽喉科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

難聴高齢者の補聴器、認知機能低下を予防できる集団は?/Lancet

 認知機能が正常で難聴を有する高齢者において、補聴器を用いた聴覚介入は、認知機能低下のリスクが高い集団では3年後の認知機能の低下を抑制したが、低リスクの集団ではこのような効果はない可能性があることが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のFrank R. Lin氏らが実施した「ACHIEVE(Aging and Cognitive Health Evaluation in Elders)試験」で示唆された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号で報告された。  ACHIEVE試験は、米国の4つの地域の研究施設で実施された非盲検無作為化対照比較試験であり、2017年11月~2019年10月に参加者のスクリーニングが行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

COVID-19関連の嗅覚・味覚障害はパンデミック初期の6%に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期には、嗅覚や味覚の障害が罹患時の特徴的な症状の一つとして位置付けられていた。しかし、もはやそうではないことが明らかになった。現在ではCOVID-19罹患者に嗅覚・味覚障害を生ずる割合は、パンデミック初期のわずか約6~7%だという。米バージニア・コモンウェルス大学のEvan Reiter氏らの研究によるもので、詳細は「Otolaryngology—Head and Neck Surgery」に5月26日掲載された。

COVID-19罹患後症状の追跡調査(解説:小金丸博氏)

COVID-19に罹患した一部の患者にさまざまな罹患後症状(いわゆる後遺症)を認めることがわかってきたが、その原因やメカニズムはまだ解明されておらず、効果的な介入方法も確立していない。罹患後症状はpost COVID-19 condition、long COVID、post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection(PASC)などと呼ばれ、WHOは「新型コロナウイルスに感染した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明できないもの」と定義している。罹患後症状の種類や有病率、長期経過の把握は、治療方法や介入方法を検討するための臨床試験の設計につながる有益な情報となる。

近年の流行性耳下腺炎のアウトブレイクは免疫減弱が原因

 免疫減弱モデルが、流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)ワクチン接種率が高い国で近年観察されたアウトブレイク再燃と強く合致しているとの研究結果が、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」1月9日号に掲載された。  米ジョージア大学Odum School of EcologyのDeven V. Gokhale氏らは、流行性耳下腺炎ワクチン接種率の高い複数の国での同疾患のアウトブレイク再燃を踏まえ、この傾向の促進因子として、2つのワクチン効果不全のメカニズムを提示した。それらは、(1)免疫の段階的な減弱、(2)ワクチン免疫を回避する新規ウイルス遺伝子型の登場、である。米国の、年齢構造化した疫学、人口統計学的属性、およびワクチン接種に関する時系列データを基に、伝播メカニズムモデルを用いて尤度に基づく仮説検定を実施した。

補聴器の使用が認知機能低下リスクの低減に関連

 難聴患者では、補聴器の使用が長期的な認知機能低下のリスク低減に関連することが、「JAMA Neurology」に12月5日報告された。  シンガポール国立大学(シンガポール)のBrian Sheng Yep Yeo氏らは、補聴器・人工内耳と認知機能低下や認知症との関連について、システマティックレビューとメタアナリシスを実施。対象は31件の研究(13万7,484人)で、このうち19件を定量分析の対象とした。  難聴と認知機能低下との長期的な関連を調べた8件の研究(対象者12万6,903人、追跡期間2~25年)のメタアナリシスにおいて、補聴器を使用している患者では未矯正の患者に比べて、認知機能低下のリスクが有意に低いことが判明(ハザード比0.81)。聴力回復と短期的な認知テストスコアの変化を調べた11件の研究(対象者568人)のメタアナリシスでは、補聴器使用後にスコアの改善が見られた(平均値比1.03)。

認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。  セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。 

末梢性めまいで“最も頻度の高い”良性発作性頭位めまい症、診療ガイドライン改訂

 『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン』の初版が2009年に発刊されて以来、15年ぶりとなる改訂が行わた。今回、本ガイドライン(GL)の作成委員長を務めた今井 貴夫氏(ベルランド総合病院)に専門医が押さえておくべきClinical Question(CQ)やGLでは触れられていない一般内科医が良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo、以下BPPV)を疑う際に役立つ方法などについて話を聞いた。  BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患である。治療法は確立しており予後は良好であるが、日常動作によって強いめまいが発現したり、症状が週単位で持続したりする点で患者を不安に追い込むことがある。また、BPPVはCa代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現することから、加齢(50代~)、骨粗鬆症のようなCa代謝異常が生じる疾患への罹患、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、脳卒中、片頭痛などの既往により好発するため、さまざまな診療科の医師による理解が必要になる。

コロナ感染2年後、18%に罹患後症状/BMJ

 感染前にワクチン未接種であった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の約18%に、感染後2年まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状が認められ、未感染者と比較して感染者には症状の過剰リスクがあることが、スイス・チューリッヒ大学のTala Ballouz氏らが実施した「Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究」のデータ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月31日号で報告された。

再発急性扁桃炎の咽頭痛への有効性、摘出術vs.保存的治療/Lancet

 成人の再発性急性扁桃炎に対する扁桃腺摘出術は、保存的治療と比較して臨床的に有効であり、費用対効果も優れることが、英国・ニューカッスル大学のJanet A. Wilson氏らが同国の国民保健サービス(NHS)国立健康研究所(NIHR)からの委託を受け、英国内27施設で実施した実用的多施設共同無作為化非盲検比較試験「NATTINA試験」の結果で示された。扁桃腺摘出術は、成人の急性扁桃炎患者に一般的に行われているが(英国では年間約1万6,000件)、エビデンスは十分でない。また、扁桃腺摘出術は減少しているが、半面で急性扁桃腺炎の合併症による成人の入院が増加している現状があった。Lancet誌オンライン版2023年5月17日号掲載の報告。

喘息診断で注目、タイプ2炎症バイオマーカーの手引き発刊/日本呼吸器学会

 タイプ2炎症は、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症である。気道・肺疾患と密接な関係にあり、診断や治療に直結する。とくに、生物学的製剤の治療選択や効果予測に重要な役割を果たすことから、近年注目を集めている。そのような背景から、「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」が2023年4月3日に発刊された。第63回日本呼吸器学会学術講演会において、本書の編集委員長を務めた松永 和人氏(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座 教授)が「タイプ2炎症バイオマーカーが切り拓く未来」と題し、主に「喘息の診断と管理効率の向上」「疾患修飾による喘息寛解の展望」について、解説した。