日本発エビデンス|page:5

うつ病高齢者に対する日本で使用可能な抗うつ薬~系統的レビューとメタ解析

 日本うつ病学会のうつ病治療ガイドラインの改定を行うために、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、うつ病の高齢者を対象とした日本で使用可能な抗うつ薬の、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のシステマティックレビュー、およびペアワイズメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年2月6日号の報告。  主要アウトカムは、治療反応率とした。副次的アウトカムに、抑うつ症状評価尺度のスコア改善、寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象を含めた。ランダムエフェクトモデルを用いて、リスク比(RR)、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を算出した。

心筋を微小組織にして移植、iPS細胞による新たな心不全治療とは/日本循環器学会

 再生医療において、ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞 (hiPSC-CM)を用いた心臓修復の臨床応用は、心筋細胞(CM)の生着不良や移植後の不整脈に苛まれ難航してきた。だが今回、第88回日本循環器学会学術集会『iPS由来再生心筋細胞移植治験の初期成績から見た虚血性重症心不全治療へのインパクト』において、福田 恵一氏(Heartseed社/慶應義塾大学 名誉教授)らは、他家iPS細胞由来の純化精製心筋細胞微小組織(hiPSC-CS)を開発し、心筋層に直接注入することで、梗塞部位周辺の心筋の再生に成功したことを報告した。なお、本発表は非臨床試験および現在進行中の第I/II相LAPiS試験の中間報告である。

女子小中学生ではスマホを含むスクリーンタイムの長さと肥満が関連

 日本人の小学5年生から中学2年生の女子では、スマホを含む電子機器の画面を見るスクリーンタイムが長いほど肥満リスクが有意に高まるという研究結果を、新潟大学血液・内分泌・代謝内科学研究室の池田和泉研究員、藤原和哉特任准教授、曽根博仁教授らの研究グループが「Endocrine Journal」に1月11日発表した。1日のスクリーンタイムの総計が4時間以上、スマホは2時間以上と一定の長さを超えるグループにおいても、身体活動や睡眠時間を十分にとることで肥満リスクを低減できる可能性も示された。一方で、男子ではスクリーンタイムと肥満の関連は認められなかった。

D2B time短縮で心原性ショック伴うSTEMIの院内死亡率が減少(J-PCIレジストリ)/日本循環器学会

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心原性ショックを伴うST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者における、Door-to-Balloon(D2B)timeと院内死亡率との関連について、国内の大規模なレジストリである日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の「J-PCIレジストリ」を用いた解析が行われた。その結果、D2B timeの10分の延長につき、院内死亡率が7%ずつ増加することが示され、D2B timeを短縮することは院内死亡率の減少につながる可能性が示唆された。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1セッションにて、千葉大学医学部附属病院循環器内科の齋藤 佑一氏が発表した。  STEMIの治療成績・予後の決定因子として、発症から冠動脈再灌流までの時間が重要であるものの、その発症時間を正確に同定することが難しいことから、指標として用いられる機会は少ない。そのため、入院から再灌流までの時間であるD2B timeが、治療の迅速性を表す実用的な指標として用いられている。これまでに、心原性ショックを合併したSTEMIにおけるD2B timeに関して検証した報告は乏しい。

低リスク高血圧患者、「血圧の下げすぎ」による心血管リスクは

 高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。  本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全入院、末梢動脈疾患の複合であった。

漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連

 漢方薬は日本で1500年以上にわたり伝統的に用いられているが、使用することにより「偽アルドステロン症」などの副作用が生じることがある。今回、日本のデータベースを用いて漢方薬の使用と副作用報告に関する調査が行われ、偽アルドステロン症と高血圧や認知症との関連が明らかとなった。また、女性、70歳以上などとの関連も見られたという。福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座の畝田一司氏らによる研究であり、詳細は「PLOS ONE」に1月2日掲載された。  偽アルドステロン症は、血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにもかかわらず、高血圧、むくみ、低カリウムなどの症状が現れる状態。「甘草(カンゾウ)」という生薬には抗炎症作用や肝機能に対する有益な作用があるが、その主成分であるグリチルリチンが、偽アルドステロン症の原因と考えられている。現在、保険が適用される漢方薬は148種類あり、そのうちの70%以上に甘草が含まれている。

閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、日本人での有効性・安全性明らかに(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症におけるfirst-in-classの選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは、2022年に米国において、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の症候性閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の運動耐容能および症状改善の適応で承認されている。今回、北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2において、日本人の症候性肥大型心筋症(HCM)患者を対象にmavacamtenの有効性、安全性などを調査した第III相非盲検単群試験HORIZON-HCM(NCT05414175)の結果を報告した。

日本人NASH患者の臨床的特徴~5年間のRWDを用いた症例対照研究

 得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する患者の臨床的特徴を調べるため、国民健康保険ならびに後期高齢者レセプトデータベースといったReal World Data(RWD)を用いて症例対照研究を行った。その結果、NASHの診断定義を満たした患者では非NASH患者に比べてBMIが有意に高いことが示唆された。また、女性、脂質異常症、高血圧症、胃食道逆流症(GERD)、2型糖尿病の罹患割合はNASH群で高く、NASHは肝硬変や肝がんのリスク上昇と関連していたことも示唆された。BMJ Open誌2023年8月22日号掲載の報告。

日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。  日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。

初発統合失調症のミエリン形成不全と認知機能低下との関係

 統合失調症患者の皮質領域におけるミエリン形成不全は、これまでの死後脳研究により明らかとなっており、異常な脳の成熟過程を反映している可能性がある。しかし、この異常なミエリン形成が統合失調症の初期段階からすでに存在しているのか、疾患の経過中に進行するのか、両方であるのかは現時点でよくわかっていない。富山大学の小林 春子氏らは、初発統合失調症患者の皮質内ミエリン形成の潜在的マーカーとして灰白質/白質コントラスト(GWC)を調査し、GWCの所見と臨床および認知機能との関連について検討を行った。Cerebral Cortex誌2024年1月31日号の報告。  初発統合失調症患者63例および健康対照者77例を対象に、GWCの調査を目的としたMRI研究を実施した。初発統合失調症患者におけるGWCの所見と臨床/認知的変数との関連も調査した。

医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。  心房細動患者の症状・機能や生活の質を最適化することが、外来における主な治療目標であるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。

日本人の睡眠時間やその変化が認知症リスクに及ぼす影響

 睡眠時間およびその変化が長期的な認知症リスクに及ぼす影響について、これまでの研究結果は一貫していない。長崎大学の宮田 潤氏らは、日本人の中年期における睡眠時間およびその変化と認知症リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、長時間睡眠および睡眠時間の増加が認知症リスクと関連することが示唆された。Preventive Medicine誌オンライン版2024年2月2日号の報告。  研究チームは、40~71歳の日本人4万1,731人を募集し、ベースライン時(1990~94年)の習慣的な睡眠時間および5年間のフォローアップ調査について記録した。睡眠時間の変化はベースライン時と5年間の測定結果の差として算出し、認知症の発症は介護保険制度の利用(2007~16年)で特定した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、エリア層別Coxモデルを用いた。

進行固形がんのリキッドバイオプシーにおける偽陽性/日本臨床腫瘍学会

 血漿検体を用いて遺伝子のシークエンス解析を行うリキッドバイオプシーはがん治療で広く用いられている。血漿中にはがん由来のDNAと共に血液由来のDNAも存在するが、通常は結果に影響しない。しかし、加齢などにより、遺伝子異常を持った血液細胞が増殖するクローン性造血(CH)が起こり、これらをがん由来の遺伝子異常と判断することで起こる偽陽性が懸念されている。

局所進行直腸がん術前治療におけるctDNA活用に期待/日本臨床腫瘍学会

 局所進行直腸がんの術前治療の決定において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の有用性が示唆された。  局所進行直腸がんでは手術後の再発が問題だったが、直腸間膜全切除(TME)手術や術前化学放射線療法 (CRT)によって局所再発のコントロールが実現した。近年では術前化学療法 (NAC)や、CRTに化学療法を追加するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、遠隔再発の抑制が報告されている。一方、すべての患者にTNTを行うべきか明確な基準はなく、一部の患者では過剰治療も懸念されている。  そのような中、術後再発予想因子としてctDNAの役割が期待されている。大阪大学の浜部 敦史氏らは、術前治療後ctDNAの状況が局所進行直腸がんの再発に影響するかを検討したCIRCULATE-Japan GALAXY trialの結果を、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。

日本人のうつ病に対するブレクスピプラゾールvs.アリピプラゾール

 抗うつ薬治療に対し効果不十分な日本人のうつ病患者における、ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性、受容性、忍容性、安全性プロファイルの違いを検討するため、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、全体としてブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、同程度の有効性が認められ、良好なリスクベネフィットバランスを有していることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年1月14日号の報告。  変量効果モデルを用いたシステマティックレビュー、および頻度主義ネットワークメタ解析を行った。主要アウトカムは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアとした。その他のアウトカムには、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア、社会機能評価尺度(SFS)、非治療反応率、非寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象発現、重篤な有害事象、アカシジア、振戦、体重増加を含めた。

白内障手術で軽度認知障害患者の認知機能が改善か

 高齢の軽度認知障害(MCI)患者は、白内障手術を受けると認知機能が改善する可能性のあることが、順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の吉田悠人氏らの研究グループが実施した前向きコホート研究から明らかになった。一方で、認知症患者では白内障手術前後で認知機能テストのスコアに有意な変化は見られなかったことから、研究グループは「認知機能の改善を期待するには、認知症の前段階で白内障手術を行うことが望ましい可能性がある」と述べている。研究の詳細は「Acta Ophthalmologica」に12月25日掲載された。

転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル追加データ(JCOG1611、GENERATE)/日本臨床腫瘍学会

 膵がん1次治療の最適レジメンを検討する国内第II/III相JCOG1611試験。2023年10月に欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析結果が発表されたが、2024年2月22~24日に開催された第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、本試験の追加データについてがん研有明病院 肝胆膵内科の尾阪 将人氏が発表した。 <JCOG1611試験の概要> ・対象:切除不能転移膵がん、PS0~1 ・試験群: 【GnP群】nab-パクリタキセル+ゲムシタビン

PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。