総合診療科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

尿酸値の低さが腎機能の急速な低下リスクと関連――日本人の健診データの解析

 尿酸値が基準範囲内であっても低値の場合は、腎機能が急速に低下するリスクが高いという関連を示すデータが報告された。ただし、高齢者ではこの関連が見られないという。帝京大学ちば総合医療センター腎臓内科の寺脇博之氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に2月11日掲載された。  尿酸値が高すぎる状態「高尿酸血症」は、痛風だけでなく腎機能低下のリスクとなる。しかし、それとは反対に尿酸値が低いことの腎機能への影響はよく分かっていない。尿酸には強力な抗酸化作用があるため、理論的には、尿酸値が低いことも腎機能低下リスクとなる可能性も考えられるが、そのような視点での研究報告は少ない。そこで寺脇氏らは、健診受診者のビッグデータを用いてこの点に関する検討を行った。

尿酸値が上がりにくいアルコールは?~日本人8万人のデータ

 飲酒は高尿酸血症の重要なリスク因子だが、アルコール飲料の違いによる血清尿酸値への影響の詳細はわかっていない。今回、聖路加国際病院の福井 翔氏らが、日本人7万8,153人の健康診断データを用いて横断研究を実施した結果、飲酒量をエタノール含有量で統一した場合、ビールでの血清尿酸値上昇は大きく、ワインでは中程度の上昇、日本酒での上昇はわずかで有意ではなかったことが示された。JAMA Network Open誌2023年3月17日号に掲載。

スコットランド、P4P廃止でプライマリケアの質が低下/BMJ

 Quality and Outcomes Framework(QOF)は、英国の国民保健サービス(NHS)におけるプライマリケア向けの「pay-for-performance(P4P)」制度であり、2004年に英国の4つのカントリー(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)のすべてに導入されたが、2016年にスコットランドはこれを廃止した。英国・ダンディー大学のDaniel R. Morales氏らは、この経済的インセンティブを継続したイングランドと比較して、スコットランドではQOF廃止後に多くのパフォーマンス指標に関してケアの質の低下が認められたと報告した。研究の詳細は、BMJ誌2023年3月22日号に掲載された。  研究グループは、2016年のスコットランドにおけるQOFの廃止がケアの質に及ぼした影響を、QOFを継続したイングランドとの比較において評価する分割時系列対照比較試験を実施した(筆頭著者は、英国・Wellcome Trust Clinical Research Career Development Fellowshipの助成を受けた)。

重症高血圧では1日2杯以上のコーヒーで心臓死のリスク増?

 血圧が160/100mmHg以上の重症高血圧の人は、1日に飲むコーヒーの量に気を付けた方が良いようだ。1日に2杯以上コーヒーを飲む重症高血圧の人では、心血管疾患(CVD)による死亡リスクがコーヒーを飲まない人の2倍以上である可能性が、新たな観察研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)疫学・生物統計学部の寺本将行氏らによる研究で、「Journal of the American Heart Association」に12月21日掲載された。  この研究では、日本人のがんリスクに関する大規模な多施設共同コホート研究であるJapan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC)のデータを用いて、重症の高血圧を持つ人でのコーヒーまたは緑茶の摂取とCVDによる死亡リスクとの関連が検討された。対象とされた1万8,609人(男性6,574人、女性1万2,035人)は、1988〜1990年の間にJACCに登録され(年齢は40〜79歳)、2009年まで追跡されていた。対象者は、正常血圧群(130/85mmHg未満)、正常高値血圧群(130〜139/85〜89mmHg)、Ⅰ度高血圧群(140〜159/90〜99mmHg)、Ⅱ度高血圧群(160〜179/100〜109mmHg)とⅢ度高血圧群(180/110mmHg以上)を合わせたもの(重症高血圧群)の4群に分類された。

アムロジピンとニフェジピンが妊婦にも処方可能に/使用上の注意改訂

 厚生労働省は12月5日、血管拡張薬のアムロジピンベシル酸塩とニフェジピンの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  これまで上記2剤は「妊婦(ニフェジピンは妊娠20週未満)又は妊娠している可能性のある婦人」が禁忌とされてきたが、今回の改訂によりこの内容が削除され、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には投与可能とされた。

新型コロナ抗体保有率が高い/低い都道府県は?/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で鈴木 基氏(国立感染症研究所感染症疫学センター長)らのチームが、「献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査」について結果を報告した。 本調査は、わが国における今夏の感染拡大を踏まえた市中での感染状況の把握を目的に、2022年11月6日~13日にかけて行われた。対象は、全国の日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた献血者8,260人で、献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体の有無が調べられた。日本全体および都道府県・男女・年齢群別の抗体保有率が解析されている。

非専門医が使える「糖尿病治療のエッセンス」2022年版/日本糖尿病対策推進会議

 わが国の糖尿病患者数は、糖尿病が強く疑われる予備群を含め約2,000万人いるとされているが、糖尿病の未治療者や治療中断者が少なくない。  そこで、糖尿病診療のさらなる普及を目指し、日本糖尿病学会をはじめとする日本糖尿病対策推進会議は、糖尿病治療のポイントをとりまとめて作成した『糖尿病治療のエッセンス(2022年版)』を制作し、日本医師会のホ-ムページより公開した。今回の改訂で5回目となる。

コロナ治療薬モルヌピラビル、早期投与で回復までの期間短縮に期待/MSD

 MSDは10月19日、一般流通を9月16日に開始した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)について、承認後の最新情報として特定使用成績調査の中間報告などをメディアセミナーにて発表した。調査の結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかったことや、外来患者に使用した際の転帰として死亡はなく、人工呼吸器の使用も低く抑えることができたとして、本剤の有効性が提示された。  同社代表取締役社長のKyle Tattle氏によると、本剤は国内にて2021年12月24日に特例承認を取得し、これまでに60万人以上に使用されたという。本剤は、承認当初は供給量が限られていたため、厚生労働省が所有したうえで、重症化リスクのある患者に、決められた流通網を通して医療機関や薬局に配分が行われていたが、供給量が増加したことで、2022年8月18日に薬価基準収載となり、9月16日には一般流通を開始した。

サル痘患者に遭遇する前に…押さえておきたい鑑別方法とワクチン接種の注意点

 国内でも症例がじわじわと増えているサル痘。皮膚病変だけではなく、扁桃炎や口腔病変が報告され、ペットからの感染リスクも出てきているというから、医療者はいつ自分が感染者対応に追われるかわからない。そんな時のためにもサル痘やそのワクチンの知識を蓄えておく必要がありそうだ。8月2日にはKMバイオロジク社の天然痘(痘そう)ワクチンLC16「KMB」にサル痘の効能追加が承認され、順次、感染リスクの高い医療者への接種が見込まれる。しかしこのワクチン、添付文書の用法・用量を見てみると“二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種”となかなか特徴的である。

地域一般住民におけるフレイルな高齢者に対する多因子介入が運動機能障害を予防する(解説:石川讓治氏)

日本老年医学会から提唱されたステートメントでは、Frailtyとは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念であるとされている。わが国においてはフレイルと表現され、要介護状態や寝たきりになる前段階であるだけでなく、健康な状態に戻る可逆性を含んだ状態であると考えられている。フレイルの原因は多面的であり、運動、栄養改善、社会的なサポート、患者教育、ポリファーマシー対策といった多因子介入が必要であるとされているが、加齢という最大のフレイルのリスク要因が進行性であるため、フレイルの要介護状態への進行の抑制は困難を要する場合も多い。