麻酔科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

手術前はオゼンピックやウゴービの使用を控えるべし

 米国麻酔科学会(ASA)が6月29日、話題の肥満症治療薬であるオゼンピックやウゴービ(いずれも一般名はセマグルチド)の使用者で、全身麻酔を伴う手術を受ける予定のある人は、手術前日、または手術当日にこれらの薬剤の使用を控えるべきだとする指針を提示した。  糖尿病治療薬として知られるオゼンピックやウゴービを含むGLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促すとともに食欲抑制効果を有することから、肥満症治療薬としても注目を浴びている。GLP-1受容体作動薬には、胃の消化運動を抑制して摂取した食べ物をより長く胃の中にとどめておく作用がある。そのため、この薬剤を使用すると、食べる量が減り、それが減量につながる。

手術中のオピオイド投与削減は患者転帰に悪影響を及ぼす

 オピオイド乱用の問題が深刻化している米国では、多くの医師が、たとえ手術中であってもオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)の投与を控えている。こうした中、このアプローチに疑問を投げかける研究結果が報告された。手術中のオピオイド投与量が多いほど、術後は短期的にも長期的にも疼痛が軽く、オピオイドの累積投与量も少なくて済むことが明らかになったのだ。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のLaura Santa Cruz Mercado氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に6月14日掲載された。

産後7日以内のオピオイド処方は乳児の短期予後に悪影響なし(解説:前田裕斗氏)

産後の疼痛に対するオピオイド利用は、母乳に移行することで乳児に鎮静や呼吸抑制などの有害事象を及ぼす可能性があり、これまでにいくつかの報告がなされていた。一方、母乳に移行する量はごく少量であることがわかっており、本当に母体のオピオイド利用が乳児に対して有害事象をもたらすのか、短期的影響について確かめたのが本論文である。出産後7日以内のオピオイド処方と、乳児の30日以内の有害事象の関係が検討された。結果として、主要アウトカムである再入院率に差は認められず、オピオイド処方群で救急受診は有意に高かったものの、乳児への有害事象はいずれについても両群で差を認めなかったことから、母体へのオピオイド処方は乳児に明らかな有害事象をもたらさないと結論付けられた。

坐骨神経痛の手術の効果のほどは?

 坐骨神経痛による痛みや障害に対する治療として、手術は最良の選択肢とは言えないのではないかとする論文が、「The BMJ」に4月19日掲載された。シドニー大学(オーストラリア)のChristine Lin氏らの研究によるもの。  Lin氏は坐骨神経痛を、「腰椎椎間板ヘルニアなどによって脊髄の神経が圧迫されるために生じる下肢の痛みであり、腰の痛みや筋力の衰え、下肢の異常感覚として現れることもある」と解説する。治療法としては、「侵襲性の低い手段が優先されるが、その効果が不十分な場合には手術が推奨されることが多い」という。

FDAがオピオイド過剰摂取に対するOTC医薬品を初承認

 米食品医薬品局(FDA)は3月29日、スプレー式の点鼻薬ナロキソン塩酸塩(商品名Narcan)を、処方箋不要のOTC医薬品として初めて承認した。オピオイド過剰摂取の影響を速やかに抑える作用を持つNarcanは、オピオイド過剰摂取の標準治療法とされている。  米国では、薬物の過剰摂取が公衆衛生上の大きな問題となっている。2022年10月までの12カ月間に報告された、違法なフェンタニルなどの合成オピオイドを中心とする薬物の過剰摂取による死亡の発生件数は、10万1,750件以上に上るという。

出産後の母親へのオピオイド処方、乳児の短期有害アウトカムに関連なし/BMJ

 カナダ・サニーブルック保健科学センターのJonathan S. Zipursky氏らは、出産後の母親へのオピオイド処方が、児の有害アウトカムの短期的リスクを増加させるかどうかを検討する住民ベースコホート研究を行い、両者間に関連はないことを明らかにした。北米では、ほとんどの母親が出産後に母乳で育児を開始する。乳児の呼吸器系または中枢神経系の抑制を引き起こすと予想されない量ではあるが、すべてのオピオイドは母乳へ移行する。母乳で育てられた乳児のオピオイド毒性に関する報告が散見されているが、母乳中のオピオイドを大量摂取したためと考えられていた。BMJ誌2023年3月15日号掲載の報告。

疼痛に有効な抗うつ薬は?/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らは、成人の疼痛において抗うつ薬とプラセボを比較した試験に関する26件の系統的レビューのデータの統合解析を行った。抗うつ薬の有効性を示す確実性が「高」のエビデンスは得られなかったが、4種の疼痛において、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性を示す確実性が「中」のエビデンスが確認された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号に掲載された。  研究グループは、病態別の疼痛に対する抗うつ薬の有効性、安全性、忍容性に関して、包括的な概要を提示する目的で、系統的レビューのデータを統合して要約した(特定の研究助成は受けていない)。

気管挿管時の誤嚥回避に、レミフェンタニルは有効か/JAMA

 手術室での迅速導入気管挿管時に、誤嚥のリスクがある成人患者において、即効性オピオイドであるレミフェンタニルは神経筋遮断薬と比較して、重度合併症を伴わない初回挿管の成功に関して非劣性を達成できず、むしろ統計学的に有意に劣ることが、フランス・ナント大学のNicolas Grillot氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月3日号に掲載された。  本研究は、フランスの15施設が参加した非盲検無作為化非劣性試験であり、2019年10月~2021年4月の期間に、患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。

首・腰痛、姿勢療法は医療費増大/JAMA

 急性または亜急性の頸部痛/腰痛を有する患者において、集学的な生物心理社会的介入または個別化姿勢療法は、いずれも経過観察と比較して3ヵ月後の疼痛関連障害スコアをわずかではあるが統計学的に有意に改善した。ただし、個別化姿勢療法では1年間の脊椎関連医療費が経過観察より有意に増加した。米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のNiteesh K. Choudhry氏らが、米国の33施設で実施した3群の実用的非盲検クラスター無作為化試験「SPINE CARE試験」の結果を報告した。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。  SPINE CARE試験の対象は、持続期間が3ヵ月以内の頸部痛または腰痛を主訴に来院した18歳以上の患者であった。過去3ヵ月間に、連続して7日以上麻薬を服用、あるいは6回以上の理学療法・カイロプラクティック治療・鍼治療・姿勢療法などを受けたことがある患者、過去6ヵ月以内に脊椎の手術・注射または神経根切断術を受けたことがある患者などは除外した。

術中の超生理的酸素投与、臓器損傷リスクを増大/BMJ

 手術中の超生理的な酸素投与の増量は、急性腎障害(AKI)、心筋傷害および肺損傷の発生増大と関連することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのDavid R. McIlroy氏らによる検討で明らかにされた。全身麻酔下で手術を受けるほとんどの患者は、十分な動脈血酸素飽和度維持のために必要量以上の酸素を投与される。超生理的酸素投与の有害な影響は分子レベルで確認されているが、手術中のこれらの影響の臨床的関連は明らかになっていなかった。なお今回の結果について著者は、「示された臓器損傷の発生増大との関連について残余交絡を排除することはできない」として、「手術中の酸素投与に関する指針を示すために、些少でも臨床的に重要な影響が検出できる大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。BMJ誌2022年11月30日号掲載の報告。  研究グループは、手術中の超生理的酸素投与が術後の腎臓・心筋・肺損傷の発生減少または増加と関連するかどうかを観察コホート試験で調べた。  米国内42の医療センターが参加するMulticenter Perioperative Outcomes Groupデータレジストリを用いた。参加者は、2016年1月~2018年11月に、全身麻酔と気管内挿管による120分以上の手術を受けた入院成人患者であった。  超生理的酸素投与は、SpO2 >92%の間(分当たり)のFIO2 >21%の曲線下面積で定義(AUCFIO2)した。