CLEAR!ジャーナル四天王|page:75

末期腎不全の臨床転帰の世界的メタ解析(解説:浦 信行 氏)-327

 わが国では末期腎不全の結果、透析導入に至る例が毎年3.8万例あり、昨年末の時点で約32万例が維持透析を受けている。この数はわが国ではここ数年頭打ち傾向となっているが、世界的に見れば大きく増加している。透析と腎移植を合わせたRRT(renal replacement therapy)を、123ヵ国+台湾と香港で検討し、世界人口の93%を包括したメタ解析の結果がLancetに報告された。

生データによるメタアナリシスの診療ガイドラインへの引用割合(解説:折笠 秀樹 氏)-325

 診療ガイドライン策定に当たり、系統的レビューやメタアナリシスがよく引用されるのは周知のとおりである。メタアナリシスとは複数の研究結果を統合する解析法のことであるが、通常は研究論文中に掲載されている数値を基にして結果を併合する。一方、生データを取り寄せ、それらに基づき統合するメタアナリシスも存在する。この方法をIPDメタアナリシス(今後、IPD-MAと略す)と呼んでいる。ちなみに、IPDはIndividual Participant Dataの頭文字を取った。本論文では、診療ガイドラインにIPD-MAがどれくらい引用されているかを調査した。

ドイツでは国家機関が新薬に関する評価を公表している(解説:折笠 秀樹 氏)-324

 2011年、ドイツでは新薬を上市する際に特別の書類(dossier)を提出するための法律を制定した。その法律はAMNOG(Act on the reform of the market for medicinal products)と呼ばれ、新薬に関する情報提供を促す法律である。また、その提出書類はIQWiG(ヘルスケアの質と効率に関する研究所)の協力の下に評価され、Federal Joint Committeeという国家機関が評価書類として公表している。なお、IQWiGという組織は2004年頃からあったようである。ちなみに、提出書類は平均446ページに及ぶ膨大な資料のようであり、また、評価書類のほうは平均83ページとみられる。ホームページでいろいろ調べたが、提出書類および評価書類の実物を見ることはできなかった。なお、書類はほとんどドイツ語で書かれているようである。

過剰診断についての情報を含むリーフレットを使うことは乳がん検診のインフォームド・チョイスの支援となるか(解説:山本 精一郎 氏)-323

 この論文は、過去2年間、乳がん検診を受けなかった者をランダムに2群に分け、片方にはリーフレットによって検診による死亡率減少効果と偽陽性についての情報を与え、もう片方にはそれに加えて過剰診断についての情報を、やはりリーフレットによって与えることによって、乳がん検診による知識が高まるか、検診を受けるかどうかのインフォームド・チョイスをする割合が高まるかを調べた研究である。結果、知識も上昇し、インフォームド・チョイスも上昇した。知識が上がった部分は、主に過剰診断に関する項目のおかげであり、インフォームド・チョイスによって検診を受けるという意図を持った者は、少し減少したという結果であった。

ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322

 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。

FINGER試験:もしあなたが、本当に認知症を予防したいなら・・・(解説:岡村 毅 氏)-321

 認知症リスクを持つ1,260人の高齢者を、食事療法・運動療法・認知トレーニング・血管リスクのモニタリングという、多領域にわたる介入群と対照群に無作為に振り分けたところ、介入群では認知機能低下を予防したというフィンランドからの報告である。実に当たり前の結果であるが、一流の論文とは当たり前のことをきちんと示すものだと認識しているので、まさに一流の論文だと思う。

成人の季節性インフルエンザに対するオセルタミビルの効果:ランダム化比較試験のメタ解析(解説:吉田 敦 氏)-319

 ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは、現在世界で最も使用されている抗インフルエンザ薬であり、パンデミックに対する備えとしてもその位置付けは大きい。その効果についてはこれまで多くの臨床試験と経験が蓄積されてきたが、今回あらためてランダム化比較試験のメタ解析が行われ、成人例におけるオセルタミビルの効果と副作用が検証された。Lancet誌オンライン版2015年1月30日号の発表。

FAST-MAG試験:脳保護作用を有する硫酸マグネシウムの病院到着前投与は無効(解説:中川原 譲二 氏)-315

 脳卒中が疑われる患者に対し、病院到着前に神経保護療法として硫酸マグネシウムの投与を行っても、予後は改善されないことが、米国南カリフォルニア大学のJeffrey L Saver氏らが行ったFAST-MAG試験で示された(NEJM誌2015年2月5日号掲載)。硫酸マグネシウムは、脳卒中の前臨床モデルで神経保護作用を有し、ヒトでは発症早期の投与において有効性の徴候および許容可能な安全性プロファイルが確認されている。

治療抵抗性高血圧の切り札は、これか?~ROX Couplerの挑戦!(解説:石上 友章 氏)-313

 治療抵抗性高血圧に対する切り札的治療は、ひと昔前は「腎動脈交感神経アブレーション」だった。循環器、高血圧関連の学会のセミナーには必ずと言っていいほど、「腎動脈交感神経アブレーション」のセッションがあり、関係者の期待の高さをうかがわせていた。しかし、治療群に加え、腎動脈内にカテーテルを挿入するものの高周波治療を行わないシャムオペレーション群をおいた、初めての無作為化比較試験であるSymplicity HTN-3の結果が発表された(87施設、患者数535例)1)。その結果は、手技の安全性には問題はなかったが、試験実施前に設定された降圧効果を得ることができず、Medtronic社は、本邦で予定されていたHTN-Japanを含むすべての治験を中止し、現時点では治験再開の情報は得られていない。

安易な処方は禁物、リスク・ベネフィットを十分に評価すべき~分化型甲状腺がんに対するLenvatinib~(解説:勝俣 範之 氏)-312

 乳頭腺がん、濾胞腺がんは、甲状腺がんの80~90%を占め、分化型甲状腺がんと呼ばれる。一般に分化型甲状腺がんは、転移があっても緩徐な進行を示し、予後が良好とされる。一方、遠隔転移のある分化型甲状腺がんで、高齢者、ヨード治療に抵抗性になった場合には、予後不良となる。その場合、これまではこれといった有効な治療法はなかった。発育がきわめて緩徐であるため、化学療法剤にはほとんど反応せず、化学療法の適応になることはなかった疾患である。

市中肺炎患者に対するステロイド投与は症状が安定するまでの期間を短くすることができるか?(解説:小金丸 博 氏)-311

 市中肺炎では過剰な炎症性サイトカインによって肺が障害され、肺機能が低下すると考えられている。そのため、理論的には抗炎症効果を有するステロイドを併用することが有効と考えられ、肺炎の治療に有益かどうか1950年代から議論されてきた。しかしながら、最近報告された2つのランダム化比較試験においても相反する結果が得られており、いまだにステロイド併用の有益性について結論が出ていない)。

ESORT研究:疾病負担度に応じた研究投資が必要な時代(解説:折笠 秀樹 氏)-310

 本研究では疾病負担度(Disease burden)と研究投資の関係について、疾病別および国別に調査しています。疾病負担度という聞き慣れない概念が出てきますが、ある疾病で負担になっている程度を示します。それを障害調整生存年数(DALY)で測定しています。 それは生存年数、つまり寿命のことなのですが、障害を持って生存していることを考慮している指標です。たとえば、寿命は80年でも、最後の10年間は障害があったとします。仮に障害を半分で調整すれば5年となり、障害調整生存年数は75年になります。

DENERHTN研究は腎交感神経焼灼術の降圧効果の有効性をどこまで明らかにしたか(解説:冨山 博史 氏)-309

 今回、Lancetに難治性高血圧に対する腎交感神経焼灼術の効果を評価した、多施設前向き研究(DENERHTN試験)の結果が報告された。腎交感神経焼灼術は高血圧、心不全、腎機能障害、不整脈などに対する有用な治療法である可能性が注目されている。とくに高血圧に関しては、メタ解析にてその有効性が報告されている。