CLEAR!ジャーナル四天王|page:69

SPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖 氏)-446

これまで、フラミンガム研究あるいはわが国の久山町研究、HOMED-BP研究などの観察研究では、収縮期血圧120mmHg以上から心血管合併症が増えてくることが明らかにされており、120mmHgが至適血圧値とされてきた。しかし、降圧薬治療でこのレベルまで下げることの是非については、多くの議論があった。とくに、高齢者では降圧目標値は高めにすべき、という意見は少なくなかった。しかし、本研究は、高齢者や冠動脈疾患の高リスク症例ほど収縮期血圧120mmHgという厳格な降圧が、140mmHgというこれまでの標準値とされたレベルまでの降圧治療よりも、心不全発症を含む心血管合併症の発症予防効果が大きく、生命予後を改善することを示し、J曲線の存在を否定した点で意義がある。

腫瘍の病期が与える影響をどう解釈するか(解説:矢形 寛 氏)-445

非常に精力的な研究であり、かつ読み応えのある論文である。治療の発達した現代においても、腫瘍径やリンパ節転移で示される病期が死亡率と関連するというデータはリーズナブルであり、それゆえ病期を正確に把握することは重要である。著者らは、そのことをもって早期発見が重要であるという結論に結び付けている。

外傷性脳損傷後の頭蓋内圧亢進に対する低体温療法には有益性なし(解説:中川原 譲二 氏)-444

これまで、外傷性脳損傷後の頭蓋内圧亢進に対する低体温療法は有効と考えられてきたが、英国・ウェスタン総合病院のPeter J.D. Andrews氏らが、400例弱を対象に行った無作為化比較対照試験の結果によると、低体温療法は機能的アウトカムをむしろ悪化させる可能性があることが報告された(NEJM誌オンライン版2015年10月7日号掲載の報告)。

足場の足場固めをしたABSORB III試験(解説:中川 義久 氏)-443

開発が成熟期に入った金属製薬物溶出性ステントとは異なり、今後の進歩が期待されるのが、生体吸収性スキャフォールドである。従来のステントは、金属製の構造物が永久に血管内に残ることになる。薬物溶出性ステントに塗布された薬剤の溶出は3ヵ月程度で完了するので、いったん再狭窄なく安定すれば理論的には金属は無用のものとなる。

脳出血再発予防における積極的降圧の可能性(解説:有馬 久富 氏)-442

脳出血再発予防における血圧コントロールの重要性を示す報告が、JAMA誌に掲載された。本研究は、脳出血生存者を対象とした前向きコホート研究である。1994~2013年にマサチューセッツ総合病院へ入院した脳出血患者のうち、90日以上生存した1,145例を平均約3年間追跡し、血圧コントロール状況および到達血圧と脳出血再発との関連を検討している。その結果、治療中の血圧が140/90mmHg以上(非糖尿病)あるいは130/80mmHg以上(糖尿病)であったコントロール不良例では、脳出血再発のリスクが3.5~4.2倍上昇していた。到達血圧と脳出血再発の検討では、再発の最も少ない至適血圧レベルは120/80mmHg未満であった。

撤回論文はもともと粗雑に書かれていた(解説:折笠 秀樹 氏)-441

臨床研究の不正により、一連の論文が撤回(retract)されたのを覚えているだろう。ここでは、撤回論文50編と同じ雑誌から非撤回論文50編を選んで、どちらが粗雑であったかを調査した。事実の食い違い(本文と抄録で数値が合っていない)、計算ミス(合計が合わない)、p値の誤り(数値は違っているのに非有意とある)など、基本的なミスが粗雑(あるいは矛盾点)の例である。

CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博 氏)-440

カテーテル関連血流感染症(CRBSI)はありふれた医療関連感染であり、死亡率も高いことが知られている。カテーテル挿入時の皮膚消毒は感染予防に重要であり、今までも適切な皮膚消毒薬について議論されてきた。米国疾病予防管理センター(CDC)は、カテーテル挿入時の皮膚消毒に、0.5%を超えるクロルヘキシジンを含むクロルヘキシジン・アルコールを推奨しているが、クロルヘキシジン・アルコールとポビドンヨード・アルコールをhead-to-headで比較した大規模試験は存在しなかった。

青年期の運動能力と筋力は血管疾患や不整脈イベントと関連するか(解説:三浦 伸一郎 氏)-439

Dr. Anderson氏らは、青年期の運動能力と筋力が高い群では、共に低い群に比較して、将来の血管疾患イベントが有意に減少していたという興味深い結果を報告した。従来、中高年者の中で運動能力が高い人では、心血管疾患の罹患率や死亡率がそうでない人と比べて有意に低下していることはよく知られていた。しかし、今回の報告のように、青年期の運動能力と筋力が予後に関与するかについての報告はなかったため、このことがBMJ誌に掲載された1つの理由であろう。しかし、今回の結果は、いくつかの点を熟慮しなければならない。

EMPA-REG OUTCOME試験:糖尿病治療薬久々の朗報~治療学的位置付けは今後の課題~(解説:景山 茂 氏)-438

慢性疾患の治療において、短期間の薬効を示す指標(surrogate endpoint)と長期間の治療による予後を示す指標(true endpoint)が乖離することが最初に示されたのは、1970年のUGDP研究である。この研究では、スルホニル尿素類のトルブタミド(商品名:ラスチノン)はプラセボおよびインスリンに比較して死亡率、とくに心血管死が有意に高いことが示された。その後、同研究により、現在は用いられていないビグアナイド類のフェンホルミンについてもトルブタミドと類似の結果が示された。その後も、チアゾリジンジオン類のロシグリタゾンについて、心筋梗塞を増やす可能性が示唆されている。

工業型トランス脂肪酸使用禁止は、冠動脈疾患死を減らす有効手段!(解説:島田 俊夫 氏)-437

循環器疾患は、英国において最大の死亡原因であり、なかでも最も多いのが冠動脈疾患である。この背景を踏まえて英国・ランカスター大学のKirk Allen氏らは、疫学モデル(IMPACT-SEC model)を用いて、食品のトランス脂肪酸(TFA)使用禁止または削減が、健康や社会経済に与える影響と費用対効果について報告した(BMJ誌オンライン版2015年9月15日号掲載)。

CheckMate-057試験:肺がん化学療法の歴史を変えるニボルマブ(解説:倉原 優 氏)-434

悪性黒色腫を診療している方であればご存じであろう、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)。日本では2014年7月に発売されており、アメリカでは2015年3月に肺扁平上皮がんに対して保険適用が追加承認された。日本でも現在切除不能な進行・再発非小細胞肺がんに対する効能の追加承認を申請中である。

収縮不全患者の中枢性無呼吸にASVを漫然と長期使用することは有害である可能性(解説:原田 和昌 氏)-431

閉塞性無呼吸に対するCPAP治療は確立している。しかし、心不全患者におけるCSR-CSA(チェーンストークス-中枢性無呼吸)の治療には議論がある。夜間酸素療法は一部有効性が認められているが、予後改善は示されていない。また、CPAP治療にはノンレスポンダーが存在するため、CANPAP試験全体で予後改善効果は証明されなかったが、CSAが早期に改善する例の予後は改善した。CSR-CSAは予後不良と死亡に関連しているが、これはむしろ心不全の結果であり、心不全の治療が第一義的であると考えられる。

CHA2DS2-VAScスコアの応用って?~JAMA掲載に値するか~(解説:西垣 和彦 氏)-430

世の中には、あまた医学雑誌がある。その中でも最高峰に位置するのが、このJAMA(米国医師会雑誌)である。インパクトファクター(impact factor: IF)は、2014年には54.420と上昇し、臨床医学総合誌では第1位の座を堅持している。しかしながら、インパクトファクターは、自然科学・社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標であるが、あくまでWeb of Scienceに収録された、特定のジャーナルの「平均的な論文」の被引用回数にすぎない。JAMA誌の記事の採択率は、依頼した記事も依頼していない記事もまとめて、年間6,000本受け取るうちのおおよそ8%であり、最難関の雑誌であることは間違いない。しかし、しょせん米国医師会雑誌であり、専門性がない臨床医学総合誌であるので、読者層はおのずから幅広くなり、インパクトファクターが高くなることは必然である。最近、このJAMA誌において、その独自性と総合雑誌であるがゆえに、頭を抱えたくなるような論文が掲載される例が多々目に付く。この論文もその範囲にあるのかもしれない。

中高年高血圧症例では足関節上腕血圧比測定を考慮する必要はあるか?(解説:冨山 博史 氏)-429

本研究は、英国において1990年から2013年までプライマリケアで電子媒体に登録された、30~90歳の成人422万例の医療記録データを、前向き研究(平均観察期間7年)として解析した。前向き研究開始時に、末梢動脈疾患(PAD)非合併例は420万4,190例であり、PAD合併例は1万8,296例であった。前者では、経過中に4万4,239例(1.1%)でPADを発症し、収縮期血圧20mmHg上昇に伴い、PAD発症リスクは63%高まることが示された。

REACT試験:クローン病に対する早期複合免疫療法の有用性~集団無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-427

クローン病は原因不明で根治的治療が確立していない炎症性腸疾患であり、わが国では医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。しかし、抗TNF受容体拮抗薬の出現とともに、本疾患に対する薬物療法が大きく変わりつつある。欧米では、症状や炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF受容体拮抗薬と段階的にステップアップする従来型の薬物療法に対して、代謝拮抗薬と抗TNF-α受容体拮抗薬を早期から使用する早期複合免疫療法の有効性と安全性を比較検証する臨床研究が、盛んに行われている。