CLEAR!ジャーナル四天王|page:58

腎保護効果は見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~(解説:石上 友章 氏)-669

CKD診療のゴールは、腎保護と心血管保護の両立にある。CKD合併高血圧は、降圧による心血管イベントの抑制と、腎機能の低下の抑制を、同時に満たすことで、最善・最良の医療を提供したことになる。RA系阻害薬は、CKD合併高血圧の治療においても、ファーストラインの選択肢として位置付けられている。RA系阻害薬には、特異的な腎保護作用があると信じられていたことから、糖尿病性腎症の発症や進展にはより好ましい選択肢であるとされてきた。一方で、CKD合併高血圧症にRA系阻害薬を使用すると、血清クレアチニンが一過性に上昇することが知られており、本邦のガイドラインでは、以下のような一文が付け足してある。

短期の放射線療法+テモゾロミドは、高齢膠芽腫患者の生存を延長(解説:中川原 譲二 氏)-667

高齢者の膠芽腫は予後不良である。70歳以下の患者では、標準放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミドの追加により生存期間の延長が示されていた。一方、高齢患者にはより楽な短期の放射線療法が通常用いられているが、短期の放射線療法+テモゾロミド併用の有効性は不明であった。カナダ・オデットがんセンターのJames R Perry氏らは、65歳以上の初発膠芽腫患者を対象とした第III相無作為化試験によって、高齢の膠芽腫患者に対する短期の放射線療法+テモゾロミドは、放射線療法単独と比較して生存期間を延長させることを明らかにした(NEJM誌2017年3月16日号)。

PSA監視療法は手術、放射線治療よりも短期的にはQOLで優位(解説:榎本 裕 氏)-666

限局性前立腺がんの治療は大きく変化している。手術では、より侵襲の少ないロボット支援前立腺全摘除術(RARP)が普及している。放射線治療では、強度変調放射線照射(IMRT)によってより安全に高線量照射が可能になり、有害事象を増やすことなく治療成績が向上した。一方で、PSA監視療法(AS)は低リスク症例を中心に限局性前立腺がんの管理方法としての地位を確かなものにしている。

知ってますか?「derivation」と「validation」の意義と違い(解説:中川 義久 氏)-661

PCI術後には、ステント血栓症などの血栓性イベント予防のために抗血小板薬としてアスピリンとチエノピリジン系薬剤に代表される、ADP受容体P2Y12阻害薬の併用投与(Dual Anti-platelet Therapy:DAPT)が主流となっている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性がある。血栓性イベントリスクと出血リスクの両者のトレードオフで比較すべき問題である。DAPTを継続すべき期間については明確な指針はないが、全患者に画一的な期間を設定するよりも、リスク評価に基づいて患者層別化することにより個々の患者に至適DAPT期間を設定することが医療の質を高める。このような個別化医療は時代の潮流であり、患者層別化のための方法論も進化している。

リラグルチドの糖尿病発症予防効果は160週にわたって持続する(解説:住谷 哲 氏)-660

リラグルチドが、肥満合併前糖尿病患者の糖尿病への進展を56週にわたって抑制することはすでに報告されていた。本論文は、その試験の160週にわたる結果であり、56週でみられた糖尿病発症予防効果は、160週にわたって持続することが明らかとなった。肥満合併前糖尿病患者は年々増加しており、生活習慣への介入のみでは減量に難渋することが多い。わが国でもリラグルチドがこの目的で使用可能となれば朗報であろう。

やはりthe lower the betterだった(解説:興梠 貴英 氏)-659

これまでコレステロール低下療法のエビデンスにおいて、スタチンが数の上で圧倒的に多かった。しかもezetimibeは試験デザイン上の問題から、なかなかthe lower the betterを示すことができなかった。そのため、PCSK9の機能喪失変異に伴う心血管リスク低減という疫学的な知見や、PCSK9阻害薬の第II相試験の予備的な結果で心血管リスクが低減することが示唆されたということはあったものの、PCSK9阻害薬による実際の介入で心血管系エビデンスを減らすのかについては、きちんと実施された臨床試験の結果を待たなくてはならなかった。

若年糖尿病の合併症は1型よりも2型のほうが多い(解説:小川 大輔 氏)-658

世の中の関心は高齢者に向かっている。2017年1月、日本老年学会などが高齢者の定義を、現在の65歳以上から10歳引き上げて75歳以上に見直すよう提言した。また、3月12日から改正道路交通法がスタートし、75歳以上の高齢者が運転免許証を更新するときに認知機能検査が義務付けられ、認知症の恐れがあれば医師の診断が必要となった。

臨床的価値が見いだせない(解説:野間 重孝 氏)-657

FFRやiFRという技術がなぜ開発されたのかを、まず考えなければならないと思う。これらの技術は血行再建が必要な患者とそうでない患者を根拠をもって識別し、不必要なPCIが行われることを防止する、つまり根拠をもって施術中止(defer)を判断するために開発されたデバイスであると思う。なぜなら、その逆のケース、つまり血行再建が必要なのに術者の誤った判断により施術されなかったというケースは、実際には考え難いからだ。また、上述したようにこれらは中等度狭窄を対象として、施術の適応を決定するためのデバイスであるから、不安定狭心症や心筋梗塞のように、どのような原因にしろ、そこに虚血があることがすでにわかっている症例を対象とすることは本来あり得ない。

臨床試験の品質をCONSORT声明などできちんと見極めよう(解説:折笠 秀樹 氏)-656

2012年12月~2013年11月に出版された、RCT(ランダム化比較試験)1,122件を対象とした調査が行われた。臨床試験の事前登録は2005年頃から開始されたが、事前登録されたRCTは593件、事前登録されなかったRCTは529件とほぼ半々であった。事前登録の有無については、WHO ICTRP、EU CT、NIH、ISRCTNサイトで確認された。事前登録をしていない臨床試験では、不当にポジティブな(良い)結果を得ているのではないかと仮説を立てた。その傾向はみられたものの、それほど顕著ではなかった。

HER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブ投与は1年間が依然として標準である(解説:下井 辰徳 氏)-655

トラスツズマブは、増殖因子であるHER2をターゲットとしたモノクローナル抗体薬である。早期乳がん患者全体の15~20%を占めるとされるHER2陽性乳がん患者に対しては、周術期治療にトラスツズマブを追加することで無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに改善できることが、いくつものランダム化比較試験の結果で示されている。

硬膜下血腫例の約半数が抗血栓薬服用、高齢化社会では今後ますます増えることが予想される(解説:桑島 巖 氏)-652

硬膜下血腫は、しばしば認知症と誤診されたり、見逃した場合には死に至ることもある重要疾患である。本研究は、その硬膜下血腫の実に47.3%が抗血栓薬を服用していたという衝撃的な成績を示し、高齢化がいっそう進み、今後さらに急増していくことを示唆している点で重要な論文である。

研究レビューでは検索サイトを確かめ、抜け落ちた試験はないか注意しよう(解説:折笠 秀樹 氏)-651

研究レビュー(Systematic Review)をするとき、該当する臨床試験(RCT)を網羅的に検索することが求められる。その際に臨床試験レジストリをどの程度利用していたかについて、2014年6月~2015年1月に発表された研究レビュー論文223報で調査された。いわゆるコクランレビューは77報(35%)含まれていた。

活動性潰瘍性大腸炎への糞便移植療法―無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-650

 わが国で患者数16万人と推定されている潰瘍性大腸炎(UC)の治療に関しては、活動性UCの寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド製剤、免疫調節薬、抗TNF製剤、血球成分除去療法などが使用されているが、最近、「腸内フローラ」の調整を目的とした抗生物質療法や糞便移植療法に関する報告が散見されるようになっている。 糞便移植療法は、再発性のClostridium difficile感染症に対する有用性が確立されているが、今回、活動性UCに対する有効性と安全性を検証した臨床研究結果がLancet誌に掲載された。オーストラリアでの多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験(RCT)の結果、非血縁者複数の糞便移植を、最初は回腸末端から施行し、その後、週に5回、8週間の自己注入した糞便移植群の有効率(41例中11例:27%)がプラセボ群(40例中3例:8%)と比較して有意に高率であった。なお、“有効”とは内視鏡的活動性の低下および症状緩和に対するステロイドの依存率の低下であった。