敗血症性ショックの初期治療に、毛細血管再充満時間(CRT)を目標とした個別化血行動態蘇生プロトコール(CRT-PHR)を用いることで、全死因死亡、バイタルサポート継続期間および入院期間の複合アウトカムが通常ケアより優れることが示された。チリ・Pontificia Universidad Catolica de ChileのGlenn Hernandez氏らが、北米・南米、欧州およびアジアの19ヵ国86施設で実施した無作為化試験「ANDROMEDA-SHOCK-2試験」の結果を報告した。敗血症性ショックに対する血行動態蘇生の最適な戦略は依然として明らかではないが、ANDROMEDA-SHOCK試験では、CRTを目標とした蘇生は乳酸値に基づく蘇生と比較し、臓器機能障害の回復が速く、蘇生輸液量が少なく、生存率が高いことが示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年10月29日号掲載の報告。
敗血症性ショック発症後4時間以内の患者が対象、CRT-PHRと通常ケアを比較
研究グループ(ANDROMEDA-SHOCK-2 Investigators:ANDROMEDA Research Network、Spanish Society of Anesthesiology、Reanimation and Pain Therapy[SEDAR]、Latin American Intensive Care Network[LIVEN])は、2022年3月~2025年4月に、敗血症性ショック発症後4時間以内(敗血症性ショックは、疑いまたは確定された感染症に加え、≧2.0mmol/Lの高乳酸血症、1,000mL以上の輸液負荷後も平均動脈圧65mmHg以上維持のためノルエピネフリンを必要とする状態と定義)の患者を、CRT-PHR群または通常ケア群に1対1の割合で無作為に割り付けた(最終追跡調査は2025年7月)。
CRT-PHR群では、6時間の試験期間中に、CRT正常化を目標とした循環動態蘇生、脈圧・拡張期血圧とベッドサイド心エコーによる心機能障害の同定とそれに続く特定介入、輸液蘇生前の輸液反応性評価、2種類の急性(1時間)血行動態試験による段階的および多層的な個別化蘇生を実施した。
通常ケア群では、各施設のプロトコールまたは国際ガイドラインに従って治療し、CRT測定はベースラインと6時間後のみ実施した。
主要アウトカムは、28日時点の全死因死亡、バイタルサポート(血管作動薬投与、人工換気、腎代替療法)の継続期間、および入院期間の階層的複合アウトカムとし、APACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)IIスコア中央値で層別化したwin ratioで解析した。
複合アウトカムに関してCRT-PHRは通常ケアと比較し優れる
1,501例が登録され、CRT-PHR群744例、通常ケア群757例に無作為化された。このうち、同意撤回などを除く1,467例が解析対象集団となった。平均年齢66歳、女性が43.3%であった。
階層的複合主要アウトカムについて、CRT-PHR群は13万1,131勝(48.9%)、通常ケア群は11万2,787勝(42.1%)、win ratioは1.16(95%信頼区間:1.02~1.33、p=0.04)であった。
個々のアウトカムにおける勝率は、CRT-PHR群vs.通常ケア群でそれぞれ、全死因死亡が19.1%vs.17.8%、バイタルサポート継続期間が26.4%vs.21.1%、入院期間が3.4%vs.3.2%であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)