手術・TEER非適応の僧帽弁逆流症、経カテーテル僧帽弁置換術が有効/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/11/12

 

 米国・Mayo Clinic College of Medicine and ScienceのMayra E. Guerrero氏らENCIRCLE Trial Executive Committee and Study Investigatorsは、国際的なpivotal試験「ENCIRCLE試験」において、外科手術および経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)の適応とならない僧帽弁逆流症患者では、SAPIEN M3システム(Edwards Lifesciences製)を用いた新規の経皮・経中隔的なカテーテル僧帽弁置換術(TMVR)により、僧帽弁逆流が効果的に軽減し、合併症や死亡の割合も低下することを示した。Lancet誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。

6ヵ国の前向き単群試験

 ENCIRCLE試験は、6ヵ国(米国、カナダ、英国、オランダ、イスラエル、オーストラリア)の56施設で実施した前向き単群試験であり、2020年6月~2023年10月に、外科手術およびTEERが適応でない、症候性の中等度~重度、または重度の僧帽弁逆流症の成人(年齢18歳以上)患者を登録した(Edwards Lifesciencesの助成を受けた)。

 主要エンドポイントは、1年後の時点での実際に治療を受けた集団における全死因死亡と心不全による再入院の複合とし、事前に規定した性能目標値(45%)と比較した。

1年後の主要エンドポイント推定発生率は25.2%

 299例が、SAPIEN M3システムによるTMVRを受けた。年齢中央値は77.0歳(四分位範囲[IQR]:70.0~82.0)で、152例(51%)が男性、147例(49%)が女性と自己申告した。僧帽弁置換術のSociety of Thoracic Surgeonsの予測30日死亡リスクスコアの平均値は6.6%であり、213例(71%)がNYHA心機能分類IIIまたはIVで、左室駆出率中央値は49.5%(IQR:38.7~58.1)だった。

 追跡期間中央値は1.4年(IQR:1.0~2.1)であり、30日時の追跡データは283例(95%)で、1年時の追跡データは243例(81%)で得られた。手技に伴う死亡例、左室流出路閉塞による血行動態の悪化例、外科手術への転換例の報告はなかった。

 Kaplan-Meier法による1年後の主要エンドポイントの推定発生率は25.2%(95%信頼区間[CI]:20.6~30.6)であり、事前に規定した性能目標値である45%に比べ有意に良好であった(p<0.0001)。1年後の全死因死亡率は13.9%(95%CI:10.4~18.5)、心不全による再入院率は16.7%(12.8~21.6)だった。

NYHA心機能分類、QOLも改善

 NYHA心機能分類およびQOL(カンザスシティ心筋症質問票の全体の要約スコア[KCCQ-OS])は、30日後には有意な改善が得られ、この効果は1年後も持続していた。また、全例で、1年後に僧帽弁逆流症のクラスの改善が達成された。

 左室駆出率中央値は、ベースラインの49.5%から1年後には41.8%となった。1年後の心血管疾患による入院は38.5%であり、1年後の脳卒中の発生率は9.3%、後遺障害を伴う脳卒中の発生率は3.9%であった。

 著者は、「これらの知見は、外科手術およびTEERが適応とならない僧帽弁逆流症の治療選択肢として、SAPIEN M3システムを用いた経皮的TMVRの有用性を示すもの」「この新規の経皮的TMVRデバイスは、TEERと同等の手技の安全性を保ちつつ、僧帽弁逆流の持続的な改善効果を示した初めての治療法である」「この方法は、構造的な弁の劣化が生じた場合に再介入が可能であるため、僧帽弁逆流症の生涯管理において重要な役割を担うと期待される」としている。

(医学ライター 菅野 守)