高リスク筋層非浸潤性膀胱がん、デュルバルマブ併用でDFS改善(POTOMAC)/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/11/11

 

 BCG未治療の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者において、BCG導入・維持療法+1年間のデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)の併用は標準治療であるBCG導入・維持療法単独と比較して、無病生存期間(DFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能であることが、ドイツ・Charite Universitatsmedizin BerlinのMaria De Santis氏らPOTOMAC Investigatorsが行った第III相試験「POTOMAC試験」の結果で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年11月8日号に掲載された。

3群を比較する国際的な無作為化試験

 POTOMAC試験は、日本を含む12ヵ国116施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2018年6月~2020年10月に参加者の適格性を評価した(AstraZenecaの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、高リスクのNMIBCと診断され、無作為化前の4ヵ月以内に経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、3年以内にBCG膀胱内注入療法を受けていない患者1,018例を登録した。高リスク腫瘍の判定は、欧州泌尿器科学会(EAU)の基準に準拠した。

 被験者を、デュルバルマブ(1,500mg、4週ごとに静脈内投与、13サイクル)+BCG導入(週1回、6週間)・維持(3、6、12、18、24ヵ月目に、週1回、3回)療法群(339例)、デュルバルマブ+BCG導入療法群(339例)、BCG導入・維持療法群(340例、比較群)に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、試験担当医師評価によるDFSとし、ITT集団においてデュルバルマブ+BCG導入・維持療法群と比較群を比較した。DFSは、無作為化から高リスク病変の初回再発または全死因死亡までの期間と定義した(再発前の試験薬の投与中止の有無、他のがん治療薬の投与の有無は問わない)。

全生存率には差がない

 追跡期間中央値60.7ヵ月(四分位範囲:51.5~66.5)の時点で、DFSのイベントは、比較群で98件(29%)発生したのに対し、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群では67件(20%)と有意に減少した(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.50~0.93、log-rank検定のp=0.015)。

 また、デュルバルマブ+BCG導入療法群で発生したDFSのイベントは105件(31%)で、比較群との間に有意差を認めなかった(HR:1.14、95%CI:0.86~1.50、p=0.35)。

 この間に、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群で41例(12%)、比較群で52例(15%)が死亡し、群間で全生存率に有意差はなかった(0.80、95%CI:0.53~1.20)。両群とも全生存期間中央値には未到達だった。

 EORTC QLQ-C30の総健康度/QOLスコアのベースラインからの補正後平均変化量は、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群が-7.6(SE 0.79、95%CI:-9.19~-6.07)、比較群は-4.9(0.78、-6.46~-3.41)であり、推定群間差は-2.7(95%CI:-4.85~-0.54)であった。

排尿障害が最も高頻度

 試験薬の投与を少なくとも1回受けた患者において、Grade3または4の治療関連有害事象は、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群で336例中71例(21%)、デュルバルマブ+BCG導入療法群で337例中52例(15%)、比較群で339例中13例(4%)に発現した。全群を通じて最も頻度の高い全Gradeの治療関連有害事象は排尿障害(それぞれ33%、18%、32%)であった。

 重篤な治療関連有害事象は13%、11%、4%に発現し、治療関連有害事象による死亡例は認めなかった。

 治療関連有害事象により試験薬の投与中止に至った患者は、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群で27%、デュルバルマブ+BCG導入療法群で16%、比較群で17%であった。BCGの投与中止に至ったあらゆる原因による有害事象は、それぞれ21%、7%、20%で報告された。

 また、免疫介在性有害事象は27%、34%、1%に発生し、ほとんどが軽度で、Grade3または4は8%、8%、<1%だった。

 著者は、「これらの結果は、PD-1/PD-L1経路の阻害とBCG膀胱内注入療法の併用が早期膀胱がんのアウトカムを改善するとの仮説を支持する」「デュルバルマブ+BCG導入療法とBCG導入・維持療法の間でDFSに有意差を認めなかったことは、BCG未治療の高リスクNMIBCの治療におけるBCG維持療法の重要性を強調するものである」「本試験の知見は、この患者集団における、デュルバルマブ1年投与とBCG導入・維持療法の併用の、新たな治療選択肢としての可能性を支持する」としている。

(医学ライター 菅野 守)