軽症喘息の小児において、ブデソニド・ホルモテロール配合薬による発作治療はサルブタモールと比較して、喘息発作の予防効果が有意に優れ、安全性プロファイルはほぼ同様であることが、ニュージーランド・Victoria University WellingtonのLee Hatter氏らCARE study teamによる第III相試験「CARE試験」の結果で示された。成人喘息の発作治療では、短時間作用型β2作動薬(SABA)に比べ吸入コルチコステロイド・ホルモテロール配合薬は喘息発作を有意に低減することが知られている。研究の成果は、Lancet誌2025年10月4日号で報告された。
5~15歳の無作為化対照比較試験
CARE試験は、研究者主導型の52週間の実践的な非盲検無作為化対照比較優越性試験(Health Research Council of New Zealandなどの助成を受けた)。2021年1月28日~2023年6月23日にニュージーランドの15の臨床試験施設で参加者の適格性を評価した。
年齢5~15歳、喘息と診断され、吸入SABA単剤による発作治療を受けている患児360例(平均年齢10歳[SD 2.9]、女児178例)を対象とした。
被験者を、吸入ブデソニド(50μg)・ホルモテロール(3μg)配合薬の2回吸入を頓用する群(179例)、またはサルブタモール(100μg)の2回吸入を頓用する群(181例)に無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、患児1例当たりの喘息発作の年間発症率であった。
重症喘息発作には差がない
患児1例当たりの喘息発作の年間発症率(主要アウトカム)は、サルブタモール群が0.41であったのに対し、ブデソニド・ホルモテロール群は0.23と有意に良好であった(喘息発作の相対的比率[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.35~0.86、p=0.012)。5~11歳(0.72[0.46~1.12])より12~15歳(0.06[0.01~0.43])、女児(0.94[0.52~1.68])より男児(0.30[0.15~0.58])で、ブデソニド・ホルモテロール群の治療効果が高かった。
また、少なくとも1回の喘息発作を発症した患児の割合は、サルブタモール群の32%(58例)に比べ、ブデソニド・ホルモテロール群は17%(30例)であり、有意に低かった(オッズ比[OR]:0.43、95%CI:0.24~0.75、p=0.0060)。
一方、患児1例当たりの重症喘息発作の年間発症率は両群間に有意な差がみられなかった(ブデソニド・ホルモテロール群0.11、サルブタモール群0.18、RR:0.60、95%CI:0.32~1.14、p=0.11)。
有害事象の発現頻度は同程度
少なくとも1件の有害事象が発現した患者の数は、ブデソニド・ホルモテロール群で162例(91%)、サルブタモール群で167例(92%)と両群間に差を認めなかった(OR:0.79、95%CI:0.35~1.79)。また、少なくとも1件の重篤な有害事象が発現した患者の数は、それぞれ5例(3%)および8例(4%)だった(0.62[0.17~2.24])。
成長速度(身長の平均群間差:-0.35cm、95%CI:-0.93~0.24、p=0.24)、喘息で授業が受けられなかった日数(RR:0.68、95%CI:0.44~1.04、p=0.075)、子供の喘息のケアで親が仕事をできなかった日数(RR:0.87、95%CI:0.49~1.56、p=0.64)は、いずれも両群間に差はなかった。
著者は、「これらの知見を先行研究のエビデンスと合わせると、現在SABA単剤による発作治療を受けている5~15歳の喘息患者は、吸入ブデソニド・ホルモテロール配合薬単剤に切り換えることで、より良好な喘息発作予防効果が得られると示唆される」とまとめている。
また、「年長児での高い治療効果は、年少児は吸入器の使用に支援を要したり、保護者が喘息の悪化を認識するのが遅れて治療開始が遅くなることで効果が低下する可能性があるが、年長児は独立して吸入器を使用できたためこの遅れがないという事実で説明が可能と考えられる」「男児での高い治療効果はこれまで報告がなく、喘息のアウトカムは思春期前の女児に比べ男児で不良であることから重要な観察結果となる可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)