ノルウェー・Drammen HospitalのJohn Munkhaugen氏らBETAMI-DANBLOCK Investigatorsは、左室駆出率(LVEF)が保持または軽度低下していた心筋梗塞後の患者において、β遮断薬の投与は非投与の場合と比較して、死亡または主要心血管イベント(MACE)のリスク低下に結びついたことを報告した。心筋梗塞後のβ遮断薬療法を支持するエビデンスは、現代の再灌流療法や2次予防戦略が導入される以前に確立されたものであり、研究グループは、「加えて、β遮断薬療法は狭心症症状の緩和、および心室性不整脈ならびに心不全の発症率の低下と関連している」として、類似するプロトコールが用いられていた心筋梗塞後のβ遮断薬療法に関する2つの試験(ノルウェー[BETAMI試験]とデンマーク[DANBLOCK試験])を統合評価した。NEJM誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。
β遮断薬療法適応あり患者を除外、長期β遮断薬療法vs.非β遮断薬療法を評価
2つの試験はいずれも非盲検無作為化エンドポイント評価者盲検にて行われ、被験者は、type 1心筋梗塞でLVEF≧40%、7日以内にインフォームド・コンセント(IC)を受けた患者(BETAMI試験)またはtype 1または2心筋梗塞でLVEF 40%超、14日以内にICを受けた患者(DANBLOCK試験)であった。両試験における主な除外基準は、心不全またはその他のβ遮断薬療法適応の診断を受けていたこと、ならびにβ遮断薬療法が禁忌であったこと。心筋梗塞前のβ遮断薬の投与は問われていなかった。
適格被験者は、1対1の割合で、イベント14日以内に長期β遮断薬療法群または非β遮断薬療法群に無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントは、全死因死亡またはMACE(再梗塞、予定外の冠動脈血行再建術、虚血性脳卒中、心不全、または悪性心室性不整脈)発生の複合であった。
追跡期間中央値3.5年後、主要エンドポイント発生は14.2%vs.16.3%で有意差
計5,574例が無作為化を受け主要解析に含まれた(β遮断薬療法群2,783例、非β遮断薬療法群2,791例)。
追跡期間中央値3.5年(四分位範囲:2.2~4.6)後、主要エンドポイントのイベント発生は、β遮断薬療法群394例(14.2%)、非β遮断薬療法群454例(16.3%)であった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.75~0.98、p=0.03)。
エンドポイントを個別にみると、全死因死亡はそれぞれ4.2%と4.4%であり、再梗塞は5.0%と6.7%であった(HR:0.73、95%CI:0.59~0.92)。また、予定外の冠動脈血行再建術は3.9%と3.9%、虚血性脳卒中は1.6%と1.3%、心不全は1.5%と1.9%、悪性心室性不整脈は0.5%と0.6%であった。
安全性アウトカムに関する明らかな差は、両群間でみられなかった。
著者は、「本試験は、副次エンドポイントを統計学的に評価するようデザインされていなかったが、β遮断薬群に割り付けられた患者において再梗塞の発生率が低かったようであった」と考察している。
(ケアネット)