Artemis欠損症に対するレンチウイルス形質導入細胞移植の効果/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/01/23

 

 新たにArtemis欠損重症複合免疫不全症(ART-SCID)と診断された乳児において、薬理学的に標的化した低曝露のブスルファンによる前処置後、レンチウイルス遺伝子で修正した自己CD34+細胞注入移植により、遺伝子が修正された機能的T細胞およびB細胞数の上昇に結び付いたことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校Benioff小児病院のMorton J. Cowan氏らにより報告された。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。

レンチウイルスベクターを導入した自己CD34+細胞を10例に注入

 ArtemisはDNA修復酵素で、T細胞およびB細胞レセプターの再構成に不可欠である。ART-SCIDは、ArtemisをコードするDCLRE1Cにおける変異に起因し、標準治療は同種造血幹細胞移植だが効果は限定的である。

 研究グループは、ART-SCIDと診断された乳児10例において、DCLRE1Cを含むレンチウイルスベクターを導入した自己CD34+細胞の注入移植に関する第I-II相臨床試験を行った。

追跡期間中央値31.2ヵ月、全10例の患者は健康

 レンチウイルス形質導入細胞移植時の年齢中央値は、生後2.7ヵ月(範囲:2.3~13.3)。移植後の追跡期間中央値は31.2ヵ月(範囲:10.0~48.9)であった。

 骨髄採取、ブスルファンの前処置、およびレンチウイルス形質導入CD34+細胞の注入後に、Grade3または4の有害事象が発生したが、これらは想定されたものであった。注入後42日時点で、全処置が事前規定の実行可能性の基準を満たしていた。

 遺伝子標識したT細胞は、全患者において注入後6~16週で検出された。6例のうち5例は、少なくとも24ヵ月間追跡され、中央値12ヵ月時点でT細胞の免疫再構築が認められた。T細胞レセプターβ鎖の多様性は6~12ヵ月までに正常化した。

 少なくとも24ヵ月間追跡された4例では、IgG注入の中止が可能となる十分なB細胞数、IgM濃度、IgM同種血球凝集反応抗体価が認められた。これら4例のうち3例は、正常な免疫反応を示し、残る1例には予防接種が開始された。

 ベクター挿入部位には、クローン増殖の証拠は認められなかった。1例の患者がサイトメガロウイルス感染症を呈し、ウイルス排除に十分なT細胞免疫を獲得するため、遺伝子修正細胞の注入は2回行われた。

 注入4~11ヵ月後に4例で自己免疫性溶血性貧血が発現したが、T細胞免疫の再構成後に回復した。

 本報告時点で、全10例の患者は健康である。

(ケアネット)