セマグルチド、12~18歳でも優れた抗肥満効果/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/11/17

 

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドは、成人の肥満治療薬として欧米で承認を得ている。オーストリア・Paracelsus医科大学のDaniel Weghuber氏らは「STEP TEENS試験」において、肥満症の青少年(12~18歳未満)に対する本薬の有用性を検討し、セマグルチド+生活様式への介入は生活様式への介入単独と比較して、68週の時点でBMI値の有意な低下をもたらし5%以上の体重減少の達成割合を有意に増加させたが、消化器系の有害事象の頻度が高かったことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年11月2日号で報告された。

12~18歳の肥満、過体重の無作為化試験

 STEP TEENSは、8ヵ国37施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIIa相試験であり、2019年10月~2020年7月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Novo Nordiskの助成を受けた)。

 対象は、年齢12~18歳未満で、肥満(BMIが性・年齢別の成長曲線で95パーセンタイル以上)または少なくとも1つの体重関連の併存症を有する過体重(同85パーセンタイル以上)の青少年であった。

 被験者は、セマグルチド(2.4mg)またはプラセボを週1回、68週間皮下投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。全例が減量を目的とする生活様式への介入(栄養、運動)を受けた(両親または保護者を含む)。

 主要エンドポイントは、ベースラインから68週目までのBMIの変化率とされた。副次エンドポイントは、68週目までの5%以上の体重減少であった。

10%、15%、20%以上の体重減少も著明に改善

 201例(平均年齢 15.4歳、女性 62%)が無作為化の対象となり、このうち180例(90%)が試験を完遂した。セマグルチド群に134例、プラセボ群に67例が割り付けられた。1例(過体重)を除く全例が肥満だった。ベースラインの平均体重(109.9kg vs.102.6kg)、BMI値(37.7 vs.35.7)、ウエスト周囲長(111.9cm vs.107.3cm)が、セマグルチド群でわずかに高値であった。

 ベースラインから68週目までのBMIの平均変化量は、セマグルチド群が-16.1%と、プラセボ群の0.6%に比べ有意に良好であった(推定群間差:-16.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-20.3~-13.2、p<0.001)。

 68週の時点で、5%以上の体重減少の達成割合は、セマグルチド群が73%(95/131例)であったのに対し、プラセボ群は18%(11/62例)であり、セマグルチド群で有意に優れた(推定オッズ比[OR]:14.0、95%CI:6.3~31.0、p<0.001)。

 また、68週時の10%以上の体重減少(62% vs.8%)、15%以上の体重減少(53% vs.5%)、20%以上の体重減少(37% vs.3%)についても、セマグルチド群で達成割合が顕著に高かった。

 セマグルチド群で改善された心血管代謝リスク因子として、ウエスト周囲長(-12.7cm vs.-0.6cm、推定群間差:-12.1cm[95%CI:-15.6~-8.7])と糖化ヘモグロビン値(-0.4% vs.-0.1%、-0.3%[-0.3~-0.2])のほか、総コレステロール、LDLコレステロール、VLDLコレステロール、トリグリセライド、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が挙げられた。

 最も頻度の高い有害事象は消化器症状(主に吐き気、嘔吐、下痢)で、セマグルチド群のほうが高頻度(62% vs.42%)であったが、重症度は全般に軽症~中等症であり、発症期間中央値は吐き気、嘔吐、下痢とも2~3日と短かった。セマグルチド群の5例(4%)で急性胆嚢疾患が発現し、いずれも胆石症で、1例が胆嚢炎を併発した。重篤な有害事象は、セマグルチド群で11%(15/133例)にみられた。

 著者は、「セマグルチド群で観察された体重およびBMIの減少の程度は、先行研究で他のGLP-1受容体作動薬や肥満治療薬を投与された青少年よりも、実質的に大きかった」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 小川 大輔( おがわ だいすけ ) 氏

おかやま内科 糖尿病・健康長寿クリニック 院長

J-CLEAR会員