手術中の麻酔ケア引き継ぎ、術後アウトカムに影響なし/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/23

 

 18歳以上の成人患者に対する2時間以上の手術中に、複数医師間で術中麻酔ケアの引き継ぎを行っても、術後30日間の死亡や再入院、重度合併症の発生といった術後アウトカムには影響しないことが示された。ドイツ・ミュンスター大学病院のMelanie Meersch氏らが、1,817例を対象に行った並行群間比較無作為化試験の結果で、JAMA誌オンライン版2022年6月4日号で発表した。これまで大規模な観察試験において、術中麻酔ケアの引き継ぎは高い死亡率など有害アウトカムと関連することが報告されていた。

30日全死因死亡率、再入院率、重度術後合併症の複合アウトカムを比較

 研究グループは2019年6月~2021年6月にかけて、ドイツ12ヵ所の医療センターで試験(患者登録)を開始し、術中麻酔ケアの引き継ぎと術後アウトカムの関連を検証した(最終フォローアップは2021年7月31日)。適格被験者は、米国麻酔科学会身体状態分類(ASA-PS)3~4で、2時間以上の主要入院手術が予定されていた18歳以上の1,817例だった。

 被験者を無作為に2群に分け、一方の群は術中麻酔ケアの完全引き継ぎを行い(908例)、もう一方の群には引き継ぎを行わなかった(909例)。引き継ぎに関して、標準的プロトコルを実施した医療センターはなかった。

 主要アウトカムは、30日全死因死亡率、再入院率、重度術後合併症の複合とした。副次アウトカムは、主要アウトカムの各発生率、ICU滞在期間、入院期間などの19項目だった。

副次アウトカム19項目も両群で同等

 被験者1,817例のうち1,772例(98%)が試験を完了した。平均年齢は66(SD 12)歳、男性56%、ASA-PSが3の被験者が97%(1,717例)だった。麻酔時間の中央値は267分(四分位範囲[IQR]:206~351)、麻酔開始から最初の引き継ぎまでの所要時間中央値は、144分(IQR:105~213)だった。

 主要複合アウトカム発生率は、引き継ぎ群30.1%(891例中268例)、対照群32.5%(881例中284例)だった(絶対群間リスク差[RD]:-2.5%[95%信頼区間[CI]:-6.8~1.9]、オッズ比[OR]:0.89[95%CI:0.72~1.10]、p=0.27)。

 30日全死因死亡率は、2.1%(889例中19例)、3.4%(873例中30例)だった(絶対RD:-1.3%[95%CI:-2.8~0.2]、OR:0.61[95%CI:0.34~1.10]、p=0.11)。再入院率は、それぞれ13.0%(888例中115例)、15.6%(872例中136例)であり(-2.7%[-5.9~0.6]、0.80[0.61~1.05]、p=0.12)、重度術後合併症発生率は、それぞれ21.9%(890例中195例)、21.6%(874例中189例)だった(0.3%[-3.6~4.1]、1.02[0.81~1.28]、p=0.91)。

 事前に規定した副次アウトカム19項目については、すべて両群で有意な差は認められなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)