肥満の有病率が高い都道府県は透析導入率が高い

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/11/25

 

 都道府県ごとの肥満の有病率が、透析導入率と有意な関連のあることが報告された。また女性に関しては、タンパク尿の有病率とも有意な関連があるという。新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学寄附講座の若杉三奈子氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に10月8日掲載された。

 肥満は慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)の重要なリスク因子の一つであり、また日本人は欧米人に比べて腎機能が低く、ESKDの罹患率が高いことが知られている。一方、日本国内の肥満の有病率には地域差があり、それがESKD罹患率の差となり透析導入率の差として現れている可能性が考えられる。ただし、これまでそのような視点での研究は行われていない。若杉氏らはこの点について、日本透析医学会のレジストリ、特定健診データ・医療費請求データなどを利用して検討した。なお、透析導入率には性差が存在するため、解析は性別に行った。

 解析の基礎データとなる2016~2017年の透析導入率は、男性1,000人年当たり0.42、女性0.18だった。また特定健診の対象である40~74歳での肥満(BMI25以上)の有病率は、男性33.7%、女性19.7%、タンパク尿(1+以上)の有病率は同順に5.0%、2.6%だった。

 各都道府県の人口構成の違いを調整した標準化透析導入比は、男性は0.72~1.24の範囲、女性は0.69~1.41の範囲に分布していて、全体的に男性の方が高いものの、男性と女性で強い相関があった(r=0.83)。同様に、肥満の有病率(r=0.87)や、タンパク尿の有病率(r=0.88)、および一般住民の標準化死亡比(r=0.74)も、男性と女性で強く相関していた(全てP<0.001)。

 次に、研究の主題である、各都道府県の肥満の有病率と標準化透析導入比との関連を見ると、男性では中程度の相関が認められ(r=0.46、P<0.001)、タンパク尿の有病率とも弱い有意な相関が確認された(r=0.30、P=0.04)。また、肥満の有病率(r=0.35、P=0.02)やタンパク尿の有病率(r=0.33、P=0.02)は、一般住民の標準化死亡比とも弱い有意な相関があった。

 女性については、各都道府県の肥満の有病率と標準化透析導入比との間に弱い相関があり(r=0.37、P=0.01)、タンパク尿の有病率とは中程度の相関が認められた(r=0.41、P=0.004)、また、肥満の有病率は標準化死亡比とも弱い有意な相関があった(r=0.33、P=0.03)。ただし男性と異なり、タンパク尿の有病率と一般住民の標準化死亡比との関連は非有意だった(r=0.005、P=0.97)。

 肥満の有病率とタンパク尿の有病率、および各都道府県の医師数に占める腎臓病専門医の割合を説明変数とする回帰分析の結果、男性では肥満の有病率のみが標準化透析導入比と有意な関連が認められ(β=0.42、P=0.004)、タンパク尿は有意な関連がなかった。一方、女性では肥満の有病率(β=0.39、P=0.004)とともに、タンパク尿の有病率(β=0.41、P=0.003)も標準化透析導入比と有意な関連が認められた。

 パス解析からも、男性の標準化透析導入比に有意に関連するのは肥満有病率のみであり(β=0.43、P<0.001)、女性では肥満有病率(β=0.40、P<0.001)とタンパク尿の有病率(β=0.33、P=0.01)が、それぞれ独立して標準化透析導入比に関連していることが示された。

 以上を基に著者らは、肥満の有病率が高い都道府県は標準化透析導入比が高いという有意な関連が明らかになった。これは、一般住民および医療専門職者に向けた、普通体重を維持することが腎臓を守るために重要であるという明確なメッセージとなり得る」と結論付けている。

[2022年11月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら