腎機能障害がCOVID-19重症化に独立して関連―国内多施設共同研究

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/07/25

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院時に腎機能障害を有することが、COVID-19重症化リスクと独立して有意に関連していることが国内の研究から明らかになった。横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター内科の佐藤亮佑氏、松澤泰志氏、同大学大学院医学研究科循環器・腎臓・高血圧内科学の田村功一氏らによる多施設共同研究の結果であり、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に6月3日掲載された。

 肺炎や尿路感染症などの感染症での入院時には、腎機能障害が予後に関連していることが既に知られている。ただしCOVID-19入院患者での腎機能と予後との関連は不明。松澤氏らはこの点について、国内8病院の入院患者のデータを遡及的に解析した。

 解析対象は、2020年2月5日から同年末までのCOVID-19入院患者のうち、解析に必要なデータの欠落がない500人(平均年齢51±19歳、男性61.2%)。推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2未満または尿蛋白1+以上を腎機能障害と定義すると、171人(34.2%)が該当した。重症化リスクは、院内死亡、体外式膜型人工肺(ECMO)や人工呼吸管理(侵襲的または非侵襲的)による治療、ICU入室で構成される複合エンドポイントの発生率で評価した。

 複合エンドポイント発生率は全体で12.0%であり、腎機能障害を有する群の方が有意に高かった(25.2対5.2%、P<0.0001)。エンドポイントを個別に見ても、院内死亡(12.3対1.2%)、人工呼吸管理(13.5対4.0%)、ICU入室(18.1対5.2%)は、腎機能障害を有する群の発生率が有意に高かった(いずれもP<0.0001)。ECMO施行の群間差は有意水準に至らなかった(2.9対0.9%、P=0.09)。

 eGFRで層別化して解析すると、腎機能が高度に低下しているほど複合エンドポイント発生率が高いことが分かった(eGFR60以上で8.3%、45~59は20.7%、45未満は32.6%、P<0.0001)。尿蛋白レベルで層別化した場合も結果は同様だった(尿蛋白陰性または±で6.9%、1+以上では29.3%、P<0.0001)。

 多変量ロジスティック回帰分析で、予後に影響を与え得る因子(年齢、性別、高血圧・糖尿病・脳血管疾患・心血管疾患・慢性閉塞性肺疾患の既往、免疫抑制状態、血清アルブミン、CRP)を調整後、入院時の腎機能障害がCOVID-19重症化に有意かつ独立して関連していることが明らかになった〔オッズ比(OR)2.35(95%信頼区間1.14~4.86)、P=0.02)〕。

 腎機能障害のほかには、年齢〔65歳以上でOR2.84(同1.33~6.05)、P=0.007〕、CRP〔1mg/dL当たりOR1.13(同1.06~1.20)、P=0.0001〕がそれぞれ重症化に有意に関連していた。一方、血清アルブミン〔1g/dL当たりOR0.34(同0.16~0.71)、P=0.004〕は有意な負の関連因子だった。

 著者らによると、本研究はCOVID-19入院患者の短期予後予測マーカーとしての腎機能障害の有用性を示した国内初の研究という。腎機能障害が交絡因子を調整後もCOVID-19重症化と関連していることが明らかになったことから、「COVID-19による入院時の腎機能障害は、重症化リスクの層別化に役立つと考えられる。併存疾患や検査所見にかかわりなく、腎機能障害のあるCOVID-19患者の治療には注意を要する。また、腎機能障害の早期発見と適切な治療戦略によって、COVID-19患者の予後改善につながる可能性がある」と述べている。

[2022年7月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら