「All of Us」プログラム、健康に関わる遺伝子情報を15万人以上の参加者に提供

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/01/17

 

 米国立衛生研究所(NIH)は12月13日に発表したニュースリリースで、NIHが進める大規模な遺伝子研究プログラム「All of Us Research Program」(以下、All of Usプログラム)の参加者のうち、すでに15万5,000人以上が自身の健康に関わるゲノム解析の結果を受け取っていることを報じた。この解析結果を見れば、自分が特定の疾患を発症するリスクが高いのかどうかが分かるという。

 All of Usプログラムは、個別化医療の研究開発を推し進めるために、米国の100万人以上の人から健康関連の情報を集めてデータベースを構築することを目的としている。All of Usプログラムのチーフエグゼクティブオフィサーを務めるJosh Denny氏は、「“知は力なり”というように、物事を深く知ることは大きな力となる。健康に関わるDNA情報をプログラム参加者に提供することで、われわれは研究のパラダイムを変えようとしている。つまり、われわれが科学的な発見を得るだけでなく、参加者も自分の健康維持に役立つ遺伝情報を得るという、双方向的な関係を築こうとしているのだ」と説明。同氏はさらに、「プログラム参加者と結ぶこのようなパートナーシップは、信用を築き、全ての人に有意義な洞察を提供するという、われわれが自身に課した責任を果たすためには不可欠だ」とNIHのニュースリリースで語っている。

 All of Usプログラムは、すでに人々に大きな影響を及ぼしている。AP通信によると、NIHの従業員であるRachele Peterson氏は、All of Usプログラムに参加したことで、自分にBRCA-2遺伝子の変異があり、乳がんや卵巣がんのリスクが高いことを知ることができたという。同氏は、「このことを知らないままでいたら、自分はどうなっていたのだろうかと考えるとぞっとする」と話す。

 最近、プロジェクトのチーフオブスタッフに就いたPeterson氏は、「知識があれば、責任を持って自分をケアできる」と話す。実際に同氏は、乳がんのスクリーニング頻度の増加や予防措置としての卵巣摘出などの選択肢について担当医と話し合う予定であるという。

 このプロジェクトはまた、医療の公平性の問題に取り組むことも目的としている。そのことを反映して、プロジェクト参加者の約80%は歴史的に医学研究で過小評価されてきたコミュニティに属する人々であり、また、50%近くは人種/民族的マイノリティに属する人々で構成されている。

 ゲノム解析により判明した遺伝的な祖先や形質に関する情報の参加者への通知は、2020年12月から開始された。今後も、毎月6,000人分の解析結果を提供していく予定だという。結果は、血液サンプルを提供し、ゲノム解析の結果の受け取りに同意した参加者に個別に提供される。その際に参加者は、健康に関わる情報についても受け取るかどうかを選択することができる。受け取ることを選んだ人には、数週間後に結果が知らされる。さらに、結果の解釈や今後の対応を患者やその家族、あるいは担当医と会って話し合う遺伝カウンセラーも用意されている。

 All of Usプログラムの遺伝性疾患リスクレポートには、特定のがん、心疾患、血液疾患など、深刻な健康状態に関わる59の遺伝子と変異体に関する情報が含まれている。All of Usプログラムの関係者は、約2〜3%の参加者が疾患の原因となる遺伝子変異の存在を知らせる結果を受け取ることになると予測している。そのような結果を受け取った参加者には、プログラムとは別枠で実施される無料の遺伝子検査を受けることも可能だ。さらに、希望すれば「薬とあなたのDNA」レポートを受け取ることもできる。これには、特定の薬剤の体内での処理に影響する7つの遺伝子に関する情報が含まれている。

 All of Usプログラムの最高エンゲージメント責任者であるKarriem Watson氏は、「参加者は自分の健康と医学研究の両方を気にかけている。われわれは、参加者が信頼できて、アクセスしやすく、参加者にとってインパクトの強い方法を用いて彼らと情報を共有することで、参加者のわれわれに対する信頼を尊重し、また、参加者が自分の健康についてより深く知るためのツールを提供したいと考えている」と話している。

[2022年12月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら