わずかな体重増加でも変形性膝関節症のリスクが上昇

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/11/10

 

 体重がある程度増加しただけでも、変形性膝関節症の悪化により手術が必要となるリスクが高まる場合があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。体重が5kg増加しただけで、人工膝関節置換術(TKR)が必要となるリスクが男女ともに大幅に増大したほか、膝の痛みやこわばりも増加し、全体的な生活の質(QOL)および膝を使う能力の低下が見られたという。モナシュ大学(オーストラリア)公衆衛生・予防医学部のAnita Wluka氏らによるこの研究結果は、国際肥満学会(ICO 2022、10月18〜22日、オーストラリア・メルボルン)で報告された。

 変形性膝関節症では、関節でクッションの役割を果たす軟骨が徐々にすり減って骨の先端が互いに擦れ合うようになることで、痛み、腫れ、こわばりが生じる。体重を10%以上落とすことで関節炎が改善することが明らかにされているが、重症化すると膝関節を人工関節に置き換える手術が必要となることがある。

 今回の研究では、体重増加と変形性膝関節症との関連を検討した20件の研究をレビュー。その結果、体重増加により、痛み、こわばり、機能性、QOL、臨床上およびX線で目視可能な損傷が有意に悪化することが明らかになった。Wluka氏は、「言い換えれば、変形性膝関節症は体重増加によって発症リスクも、進行が早まるリスクも高まるということだ」と述べている。

 また、計25万人以上を対象とした2件の大規模研究の結果を統合すると、5kgの体重増加により、TKRが必要となる確率が男女ともに有意に増加した(オッズ比は女性1.34、男性1.25)。Wluka氏は、「この結果は特に気にかかる。TKRは医療費が高額であり、5人に1人の患者は結果に満足せず術後も痛みが残る。痛みが続く患者は、再手術が必要となる可能性が高い。その場合、さらに費用がかかる上に痛みをコントロールできる確率は低くなる」と説明する。

 Wluka氏は、「変形性膝関節症のリスクのある人は、体重管理についてのカウンセリングを受ける方が良い」と助言する。「中年期の体重維持により変形性膝関節症の発症リスクを低減できるし、すでに発症している人では、痛みの悪化や機能喪失、高額な手術のリスクを低減できる。人は1歳年を取るごとに体重が約1kg増える傾向があるが、幸いなことに、体重増加は防ぐことができることも、これまでの研究で分かっている」と話す。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年10月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら