高齢者にとって命に関わる可能性のある骨折部位とは?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/10/31

 

 高齢者の骨折では、骨折部位が体の中心に近い場合や患者に基礎疾患がある場合に死亡率が高いことが、新たな研究で明らかにされた。この知見は、骨折後に特に集中的な治療を必要とする患者を医師が見極める上で役に立つ可能性がある。ガーヴァン医学研究所(オーストラリア)のJacqueline Center氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月10日掲載された。

 今回の研究は、1951年1月1日以前に出生し、2001年1月1日から2014年12月31日の間に脆弱性骨折を経験した50歳以上のデンマーク人30万7,870人を対象に、2016年12月31日まで追跡したもの。対照者のうち、男性は9万5,372人(31.0%)で、骨折時の平均年齢は72.3歳、女性は21万2,498人(69.0%)で骨折時の平均年齢は74.9歳だった。

 中央値で6.5年間の追跡期間中に、男性4万1,017人(43.0%)と女性8万1,727人(38.5%)が死亡した。対象者の半数近く(42.9%)が2つ以上の併存疾患を持っており、最も多いのは心血管疾患、次いで多いのはがんだった。潜在クラス分析から、骨折時点での多疾患併存(マルチモビディティ)の状態は、疾患が1つまたは何もない比較的健康な(低マルチモビディティ)グループ(男性60.5%、女性66.5%)、心血管疾患のグループ(男性23.7%、女性23.5%)、糖尿病のグループ(男性5.6%、女性5.0%)、がんのグループの4つに分類できた。男性ではさらに、肝疾患/炎症性疾患(5.1%)を加えた5つのグループに分類可能であった。

 各グループでの骨折部位と骨折後の死亡率との関連を検討したところ、身体の中心に近い部位(大腿骨近位部、大腿骨、骨盤、脊椎、肋骨、鎖骨、上腕骨、下腿)の骨折は、骨折後1年間の死亡率の上昇と関連することが明らかになった。超過死亡率が最も高かったのは、がんのグループに属する大腿骨近位部を骨折した男性での40.81%であった(低マルチモビディティグループの男性では19.89%)。これに対して、手や前腕など体の中心部から離れた部位を骨折した低マルチモビディティのグループの人では、実質的な死亡率の増加は認められなかった。このほか、疾患がない場合には糖尿病によるリスク上昇は認められなかったが、心臓、血管、腎臓の疾患を併発する糖尿病の場合には、死亡リスクが上昇することも分かった。

 研究論文の筆頭著者である同研究所のThach Tran氏は、「この研究は、骨折と患者の健康状態、具体的には基礎疾患が相互に関連していることを明らかにしたものであり、リスクのある患者を特定する優れた方法となる可能性がある」と述べている。そして、「この知見を基礎疾患に関連して発生するセンチネルイベント(警鐘事象)を含む多くの疾患に応用できる可能性があることも重要だ」と付け加えている。

 ただし、このような関連が認められる理由は不明だ。Center氏は、「骨と免疫系の相互作用によるものとも考えられる」と述べ、「骨折すると骨の代謝が亢進し、炎症性因子にも影響が及ぶ。基礎疾患があるとこのプロセスをうまくコントロールできず、骨折が基礎疾患を悪化させるのではないか」と説明している。研究グループは、次の段階として、他の疾患でもこのような分類ができ、予測ツールとして利用できるかを検討したいとしている。

[2022年10月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら