“ダイエット抵抗性”の人の減量の鍵は運動

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/20

 

 古くから、減量の基本は食事療法であり、それが最も重要とされてきた。しかし、それは全ての人に当てはまることなのだろうか?

 新たな研究から、食事療法を徹底しても体重が減りにくい、“ダイエット抵抗性”とも呼ぶべき人たちの存在が浮かび上がった。そのような人たちは、食事療法よりも運動療法優先の減量戦略が奏効する可能性が高いという。オタワ大学(カナダ)のMary-Ellen Harper氏らの研究によるもので、詳細は「eBioMedicine」に8月11日掲載された。論文の上席著者であるHarper氏は、「食事療法開始後、体重減少速度が遅い人たちは、そうでない人たちよりも運動に対する反応が優れていることが分かった。この研究結果が、減量戦略の個別化、特に食事療法への反応が良くない人へのアプローチに生かされることを期待している」と述べている。

 Harper氏によると、減量に苦労している人の筋肉細胞は、エネルギーを燃焼させるよりも、むしろ貯蓄するのに適している傾向があるという。また、米クリーブランド・クリニック肥満代謝研究所のDavid Creel氏によると、摂取エネルギー量を減らすことで代謝がより低下してしまう人も確かにいるとのことだ。「そのような人たちは、摂取エネルギー量低下に適応して、消費エネルギー量をより減らすように反応してしまう」と同氏は解説する。

 Harper氏らは、このような、減量にとっては不都合と言える適応を、運動によって変更可能か否かを検証した。研究対象は、オタワ病院で食事療法中心の減量プログラムに参加した5,000人以上の中から抽出された。この減量プログラムは、1日の摂取エネルギーが900kcalに統一されていたが、減量効果は人それぞれだった。

 プログラム参加後の最初の6週間の体重低下幅の五分位で5群に分類。その第1五分位群(体重低下幅の最も少ない下位20%)と第5五分位群(体重低下幅の最も多い上位20%)の中から、年齢、体重、BMIのマッチする各10人を選び(1組のペアのみ体重は不一致)、6週間の運動療法プログラムに参加してもらった。運動は週に3回実施され、有酸素運動と筋力トレーニングで構成されていた。運動療法期間中、食事はふだんどおりに食べてもらった。

 その結果、両群ともに有意な体重減少は見られなかったが、体脂肪量とウエスト周囲長はダイエット抵抗性群(食事療法による減量幅の第1五分位群)でのみ有意に低下していた。また、ダイエット抵抗性の人たちでは筋肉細胞の代謝が大幅に改善されたことが確認され、運動時だけでなく安静時でもより多くのエネルギーを消費するように変化していた。

 この研究報告について、米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のReshmi Srinath氏は、「介入期間がより長く設定されていれば、体重低下幅にも有意差が生じていたのではないか」とコメントしている。またHarper氏らは現在、より大きなサンプルサイズで追試すべく、参加者を募集中だ。

 Creel氏は、「Harper氏らの研究報告は、食事療法だけでは減量が困難な人には、運動が重要なポイントになる可能性を示している」と述べている。また、「食事療法に対して誰もが同じように反応するわけではないと理解することが大切ではないか。そのような理解が、ダイエットが成功せずに苦しんでいる人たちに対する誤解の解消につながると思う」と付け加えている。

[2022年8月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら