麻酔専門医の同時管理手術が手術患者にリスクをもたらす可能性

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/08/22

 

 麻酔専門医が複数の手術を同時に受け持っていると、手術を受ける患者の死亡および合併症のリスクが増大する可能性のあることが、新たな研究で報告された。米ミシガン大学医学部麻酔学教授のSachin Kheterpal氏らが実施したこの研究結果は、「JAMA Surgery」に7月20日掲載された。

 1人の麻酔専門医が、各手術を担当する麻酔専門医の作業を監督しながら同時に複数の手術を管理するのは珍しいことではない。今回の研究では、2010年1月1日から2017年10月31日の間に18歳以上の成人患者(平均年齢55.7歳、女性55.1%)に実施された入院を要さない非心臓手術57万8,815件について分析を行った。Kheterpal氏らは、1人の患者の手術中に、担当の麻酔専門医が同時に管理した別の手術の平均件数を計算し、麻酔専門医が一度に1件(手術件数4万8,555件)、1件以上2件未満(同24万7,057件)、2件以上3件未満(同21万6,193件)、または3件以上4件未満(同6万7,010件)の手術を管理していた場合で、患者の転帰を比較した。

 全体で3万26件(5.19%)の手術後30日以内の死亡や、出血、感染症、および心臓、呼吸器、胃腸、泌尿器系に関わる術後合併症が生じていた。麻酔専門医が同時に監督した手術件数別に見た術後の死亡・合併症の発生率は、1件以上2件未満では5.06%であったが、3件以上4件未満では5.75%となり、前者に比べて後者で約14%増加していた。

 Kheterpal氏は、「複数の手術を同時に監督する麻酔専門医により管理される患者は、年間何百万人もいる」と指摘する。「われわれ麻酔専門医は長年、4つの手術室を同時に管理することは可能だが、安全だと思える状況に限って行うべきだと言ってきた」と同氏は述べ、「今回、麻酔専門医が同時に担当する手術が増えると、コスト削減や医療へのアクセスの面で得られる利点を打ち消すほどのマイナス面があるとの考えを裏づけるエビデンスが得られた」と説明している。

 その上でKheterpal氏は、「リスクの高い手術を受ける患者や医学的な問題を抱えた患者は、念のため麻酔チームに通常の麻酔管理プロセスについて尋ねる方が良いかもしれない」と助言している。

[2022年7月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら