糖尿病のある乳がん患者の生命予後が血糖管理で改善?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/08

 

 転移性乳がんを有する糖尿病患者では、血糖コントロールが不十分な場合、長期的な死亡リスクが高いというデータが報告された。逆に言うと、糖尿病のある転移性乳がん患者のうち、血糖コントロールが良好な患者は死亡リスクが低いことが示された。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のY.M. Melody Cheung氏らが、米国内分泌学会(ENDO 2022、6月11~14日、アトランタ)で発表した。

 Cheung氏によると、糖尿病患者ががんと診断された以降の血糖コントロールに関する研究は限られており、これまでに発表された数少ない研究も、主として進行がんではなく早期がんに焦点を当てているという。特に治療困難な転移性乳がん患者を対象に、血糖コントロールと予後との関連を検討したデータはなく、同氏らの研究が初めてとのことだ。

 Cheung氏らの研究は、転移性乳がんの患者488人を対象に行われた。その半数は糖尿病を有していた。糖尿病群と非糖尿病群とで、5年生存率は差がなかった。しかし、乳がん診断から8年以上生存した患者の10年生存率を見ると、非糖尿病群は87%であるのに対して糖尿病群は67%にとどまっていた。さらに糖尿病群を血糖コントロール良好な患者と不十分な患者に分けた場合、コントロール良好な患者の10年生存率は83%であるのに対して、コントロール不十分な患者は63%だった。

 この結果を基にCheung氏は、「転移性乳がんにもかかわらず比較的経過が良好な糖尿病患者において、血糖値のより積極的なコントロールが寿命延伸につながる可能性のあることを示唆している」と述べている。また、「われわれの研究結果は、糖尿病を有するがん患者の血糖管理目標の設定に際して、たとえ進行がんであっても、予測される予後を勘案し患者ごとに的確に調整すべきであることを示す、重要な知見と言える」と付け加えている。

 ただし同氏は、「糖尿病を有する転移性乳がん患者の血糖値を厳格にコントロールすることで、がんそのものの転帰を改善できるかどうかは、本研究では明らかにされていない」としている。その理由として、「がんがより進行している場合に、医師は厳格な血糖コントロールが患者に過度の負担を強いると判断し、あまり積極的な治療を行っていなかったケースもあり得るため」とのことだ。つまり、今回の研究で示された、血糖コントロールが不十分であることと患者の転帰が良くないことの関連は、「転移性乳がん患者の糖尿病をどの程度治療するかという、臨床医の考え方次第で変化する可能性もある」という。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年6月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら