9.11テロ現場の粉塵が前立腺がんリスクと関連か

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HealthDay News

9.11テロ現場の粉塵が前立腺がんリスクと関連かのイメージ

 2001年9月11日の米同時多発テロでは、世界貿易センター(WTC)ビルの倒壊で多量の有害な粉塵が周辺に巻き上がった。これまで倒壊現場で救助や復旧作業にあたった人では、粉塵を吸い込んだことによるさまざまな健康被害が報告されている。今回、米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のWilliam Oh氏らが、倒壊現場の粉塵曝露が前立腺がんの発症と関連するという研究結果を「Molecular Cancer Research」6月号に発表した。

 Oh氏らは、WTC倒壊現場に駆けつけた人々の間で多くの前立腺がん症例が確認されていることに着目。倒壊現場で有害物質を含んだ粉塵を吸い込んだことで、DNA損傷や細胞増殖、慢性炎症が引き起こされ、前立腺がんを発症する一因となったのではないかと考えた。

 そこで、Oh氏らは、まず、倒壊現場に最初に駆けつけた「ファーストレスポンダー(第一対応者)」で、後に前立腺がんに罹患した男性と、WTCの粉塵に曝露していない前立腺がんの男性から採取した前立腺がん組織を用いて遺伝子発現を比較した。次に、同氏らは、健康なラットを倒壊現場で採取した粉塵サンプルに曝露させた後にも同様の実験を行った。

 その結果、ファーストレスポンダーの男性とラットから採取した前立腺がん組織では、いずれも「ヘルパーT細胞(Th17)」と呼ばれる炎症性の細胞が増加していることが分かった。

 Oh氏らは、これまで前立腺がんの発症には「炎症」が重要な役割を担うと考えられてきたと指摘する。同氏はニュースリリースの中で、「数年前、WTC倒壊現場で粉塵に曝露した直後に、痛みと炎症を伴う前立腺炎の症状を訴える40歳代の男性を診察した」と当時を振り返っている。「彼は、数年後には悪性度の高い前立腺がんを発症した。当時、WTCの粉塵を吸い込んだことが前立腺がんの発症と関連があるのではと疑ったが、これらの関連は体系的に調べる必要があると考えた」と述べている。

 なお、これまでの研究で用いられたWTCの粉塵サンプルは、倒壊から3日後に発生した嵐の後に採取されたものが主だったが、「今回の研究では、倒壊当日に採取されたものを用いた点でもユニークだ」とOh氏らは付け加えている。

 Oh氏らは「WTCの粉塵への曝露とその後の前立腺がんの発症との関連を調べたのは今回が初めて」とした上で、「この研究結果から、9.11のファーストレスポンダーでは、WTCの粉塵に曝露した後に慢性的な炎症が引き起こされ、このような炎症が前立腺がんの一因となった可能性が示唆された」と結論づけている。ただし、同氏らは、今回の結果は、これらの因果関係を証明するものではないとも断っている。

 共同研究者の一人で、米マウントサイナイ・トランスレーショナル疫学研究所の所長を務めるEmanuela Taioli氏は、「WTC倒壊現場で作業にあたった人では全般的ながんの罹患リスクが高く、特に前立腺がんなど一部のリスクが高まっていることが示された。これらが関連する理由を突き止めることは、高齢化が進むファーストレスポンダーの男性の前立腺がんを予防するのに重要だ」と述べている。

[2019年6月24日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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